26-3・片輪車~踏切の麻由
-駅西・利幕町-
‘仙木’の表札が貼られている一軒家の一室。机の中に隠されていたパンダのキーホルダーから闇が上がる。大好きな主人(好代)から引き離されて丸1日。センキチ(仙木聡)の‘好代に焦がれる心’に充てられて苛立ちを募らせていた。
〈好代ハ オマエ(センキチ)の物ジャナイ。
僕モ オマエ(センキチ)の物ジャナイ。
僕ハ 好代ノ物ダ!好代ハ 僕ノ物ダ!〉
キーホルダーから発せられる邪気が、仙木邸の空に上がって雲のように広がる。近所の空き地に転がっていた‘壊れて捨てられボロボロになったリヤカー’が反応をして、上空の闇の雲が吸い込まれていく。
―優麗高―
「んぁっ!?・・・・・・・・・何かぃるっ!!」
「どうしたの?紅葉ちゃん!?」
キーホルダー捜索中の紅葉が、妖怪の発生を感知する。
「ちょっと遠い・・・駅裏の利幕町っ!行かなきゃっ!」
「あっ!紅葉ちゃんっ!」
紅葉は、キーホルダー探しを中断して、階段を駆け下り、学校から飛び出し、自転車に跨がって利幕町に突っ走っていった。
「ま、待ってよぉ!」
真奈は紅葉を追い掛けて駐輪場まで来たが、自転車のロックを外している間に、紅葉は先に行ってしまった。正門から出て、周囲を見廻すが、既に紅葉の姿は何処にも無い。
「・・・えっと、利幕町って言ってたっけ。」
真奈が利幕町に向かって自転車を走らせようとしたら、麻由が寄ってきた。弓道場に居た麻由も、妖怪の発生を感知したのだ。
「真奈さん、紅葉は?」
「先に行っちゃった!」
「そうですか、早いですね。私も向かいます。」
「なら、一緒に行きましょう!」
「え?真奈さんも?」
「うん!私だって愉怪な仲間達の一員だからね。」
真奈は自転車に乗り、麻由は駆け足で、利幕町に向かう。
―利幕町の空地―
片方だけ車輪の残った壊れたリヤカーが闇に包まれて、恨めしそうな顔の女が乗った炎を纏ったリヤカー=妖怪【片輪車(かたわぐるま)】に変化をした!
「好代ハ僕ノ物ダ~」
好代を求めて、片車輪のリヤカーが動き出す!
―穂登華町付近(麻由のマンションの近所)―
「実体化したっ!?・・・片輪車だっ!!」
立ち漕ぎで自転車を突っ走らせていた紅葉が感知!こっちの方向に向かっている!被害が出る前に食い止めたい!紅葉がポケットの中のYスマホに妖気を送ると、自転車が☆マシン綺羅綺羅☆(モトコンポ)に変化!時速60キロに急加速をして踏切を突っ切り、利幕町に突入!途端に警報音が鳴って、遮断機が下り始める。
※無免許運転にはならないけど、スピード違反になる。
なお、自転車のままでも妖気ブーストで同じ速度は出せるけど、
「バイクだから速い」的な紅葉の気持ちの問題。
ちなみに、ゲンジは時速100キロで走れるので、ダッシュの方が速い。
ただし、法定速度を超えれば、モトコンポでも自転車でもダッシュでも、
全てスピード違反になる。
「いたっ!」
幹線道路正面に片輪車を発見!紅葉は、☆マシン綺羅綺羅☆をカーブさせて住宅街の路地に飛び込み、人目が無いのを確認してゲンジに変身!再び幹線道路に飛び出して、片輪車の前の立ち塞がった!
-踏切の東側-
警報が鳴って遮断機が下り、車やバイクが並び、歩行者や自転車が待機している。その中に、麻由と真奈の姿があった。文架駅は各駅停車が急行の待ち合わせする駅なので、夕方のラッシュ時は『開かずの踏切』になってしまう。
「タイミングが悪かったね。」
「この時間は、ちょっと長いんですよね。」
「あっ!来たよ。」
走ってきたのは貨物列車だった。何両も繋がった電車が通過をしたが、ポールは下がりっぱなし。次の電車が通過。しかし、まだ、相変わらず警報が鳴りっぱでポールが上がらない。
西の空を見上げる麻由。利幕町付近の上空に、闇の雲が浮かんでいる。あの雲の下に片輪車の気配を感じるのだが、到着まで‘あと少し’が遠い。麻由と真奈はイライラしながら踏切が開くのを待つ。
-利幕町-
ゲンジが、Yスマホに指を滑らせて『くま』『合体』と書き込んで、川熊を召喚!ゲンジと重なって、基本の姿は変わらないが、手足だけが一廻り太くなって茶色い毛で覆われ、手には鋭い爪も生えて、頭にクマ耳が出現!パワーに特化した【ゲンジ・くまフォーム(以下、クマゲンジ)】に変身!
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
甲高いゲンジの声が、若干低音に変化!クマゲンジが、片輪車の強烈な体当たりを真っ向から受け止める!衝突時に僅かに押されて地面に爪痕が残ったが、そこでストップ!踏ん張って堪えながら、片手でブン殴った!堪らず離れる片輪車!
「くらぇ~~~っ!!くまパ~~~~~~~~ンチっ!!!!」
両手を振り回しながら前進してパンチの連打!ネーミングセンスは悪いが、威力は凄い!ヒットするたびに片輪車の妖気が削ぎ取られて弱っていく!しかし・・・
「オオオオオオオオオオ スキヨ~~~~~~!!!」
「うへぇっ?ヨーカイにコクられたっ!?」
ゲンジが愛の告白を受けて(?)怯んでる隙に、上空の闇が片輪車に降り注いて、受けたダメージを回復してしまった!依り代に隠った念が、それほど強いのだ!
ダメージが回復した片輪車は、「勝ち目が無い」と判断して逃げ出した。
「待てぇ~~~!!!」
クマゲンジがと追いかけるが、パワーに秀でてる代償で足が遅い。「スポーツやってる小中学生の方が速いんじゃね?」ってくらいに遅い為、たちまちに離されてしまう。住宅街に逃げ込んでいく片輪車。
「んぁっ!ムカ付くっ!!」
ゲンジは、くまフォームを解除して乗ってきた自転車に跨がり、☆マシン綺羅綺羅☆(モトコンポ)に変化させて、猛スピードで片輪車を追い掛ける!
「オオオオオオオオオオ スキヨ~~~~~~~~~~~~!!」
「コクりながら逃げるとか、意味わかんねっ!!」
ゲンジと下っ端妖怪では、スペックが違いすぎる!ゲンジの妖力を糧にして、正規のモトコンポでは有り得ないスピードで走る☆マシン綺羅綺羅☆(モトコンポ)が、片輪車との距離を縮める!
「ばるっ!」
そこへ、文架警察署への通報を聞いて飛んで来たバルミィが到着して、片輪車とゲンジの追い駆けっこを発見!片輪車の進行方向の先を見ると、直線と左折に別れる丁字路がある。このようなケースでは、コースを選べる逃げる側が圧倒的に有利。
片輪車は急ブレーキを掛けて左折して、スピードを出しすぎたゲンジは、対応が出来ずに直進して、慌てて方向転換をして戻った時には見失っている・・・。バルミィの脳内に、そんな‘お決まり’なイメージが浮かぶ。
「だったら‘お決まり’のコースを塞ぐばるっ!」
バルミィは、急降下をして、丁字路の左折側を通せんぼした!予想的中!左折をする為に減速の準備をしていた片輪車は、悔しそうに呻き声を上げて、仕方なく直進をする!
その間にも、ゲンジが駆る☆綺羅綺羅☆が追い上げ、追い付いて片輪車と並走!ハンドルから片手を離し、既に召喚してあったハリセンを握りしめるゲンジ!片輪車を追い抜いた瞬間に、☆綺羅綺羅☆を放棄して、九字護身法を唱えながら片輪車に飛び移った!
「りん・びょぅ・とぅ・しゃ・かぃ・ぢん・れっ・ざぃ・ぜんっ!!
ぢゃ気たいさぁ~~~~んっっ!!」
ゲンジのハリセンアタックが、片輪車にクリティカルヒット!片輪車の悲鳴が上がり、邪気が四散して、妖怪の姿が消滅をして元のリヤカーに戻った!だが、妖怪を祓っただけなので、加速をしたリヤカーは止まらない!
「んぎゃぁぁっっ!」
片輪車に飛び移った後のことを考えていなかったゲンジは、悲鳴を上げながら、リヤカーごとブロック塀に激突!古びたリヤカーは粉々に大破する!
「相変わらず、タラズばるねぇ~。」
戦況を見守っていたバルミィが寄ってきて、リアカーの残骸まみれのゲンジに向かって、苦笑しながら手を差し出す。変身しているので、壁にぶつかった程度ではダメージは無いが、後先考えない行動は、実に紅葉(ゲンジ)らしい。ゲンジは、バルミィの手を掴んで「よっこらしょ」と起き上がる。
「お疲ればる!紅葉1人で倒しちゃったばるね!」
「んっ!バルミィのナイスアシストのおかげで助かったよっ!・・・でも。」
「ばるっ!?」
確かに、いつもなら、これで終わりだ。ゲンジは、「これで終わり」のつもりで、後先考えずに、妖力を温存させずに戦って片輪車を倒した。しかし、ゲンジは違和感を感じている。片輪車は四散して、リヤカーには残存思念は残っていないのに、周囲を覆っている闇は晴れていない。
「どうしたばる、紅葉?終わったんだよね?」
「んんっ!ワカンナイ。でも、なんだろ。この、今までと違う感じ。」
―文架駅北側踏切―
真奈と一緒に足止めされている麻由も、異常を感じていた。ゲンジが片輪車を倒したのは感知している。しかし、周辺を覆っている片輪車の妖気は晴れていない。
「どうしたの、麻由ちゃん?」
「妖怪が発生します。」
「え?紅葉ちゃんが戦っているのとは別の妖怪?」
「同じ妖怪です。同じ妖怪の別個体と言うべきでしょうか?」
「たくさん居るって事?」
「・・・おそらく。」
妖気は、北の方から感じられる。麻由は、踏切待ちを止めて、北に向かって駆け出し、真奈は首を傾げながら付いていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます