26-1・ヌリカベに惨敗~好代の依頼~冨久海跳登場

-夜・郷関町-


 巨大な壁の妖怪=ヌリカベが出現!薄暗い道路に立って、走行中のドライバー達を驚かせる!


「待てぇい!悪徳妖怪!」


 ヌリカベが振り向いた先!図書館の屋根の上に6人の戦士が立っている!中央左側に桃の戦士・ゲンジ(紅葉)!中央右側に黄の戦士・セラフ(麻由)!左翼側に青の戦士・マスクドジャンヌと熊谷真奈が並び、右翼側に緑の戦士・HAバルミィと白の戦士・ネメシス(美穂)が並ぶ!


「ヒロインジャーピンク・ゲンジ!」 

「ヒロインジャーグリーン・バルミィ」 

「ヒロインジャーブルー・ジャンヌ!」 

「え~と、ヒロインジャーホワイト・ネメシス!」 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「私の名乗りは一番最後だから、麻由ちゃん、早く名乗って!」

「ヒ、ヒロインジャーイエロー・・・・セラフ。」 

「ヒロインジャーマスター・マナ!・・・我ら!」

「優麗戦隊・ヒロインズ!!・・・とぉうっっ!!」×5(麻由のみ無言)


 ゲンジ、セラフ、バルミィ、ジャンヌ、ネメシスがジャンプ&宙返りで屋根から飛び降りて地面に着地!もちろん、真奈だけは、飛び降りたら死ぬので屋根の上。ゲンジ&ネメシス&バルミィ&ジャンヌがヌリカベに対して構える!しかし、露骨に不満げなセラフがゲンジに詰め寄る。


「ヒロインジャーってなんですか!?

 優麗戦隊なんて名乗ったら、優麗高の関係者とバレてしまいます!」

「んぁっ?今、ソレを言われても・・・。」

「だいたい、妖怪は倒すべきものではなく、依り代を救済するべきものです!

 私達が、正義のヒーローを気取るのは間違えています!

 ヌリカベの依り代を探しましょう!」

「まぁ・・・そぅなんだけど・・・。」


 ゲンジとセラフが話をしてる間に、ヌリカベを見失ってしまう!


「ばるっ!?何処に行ったばるっ!」 「ちぃっ!逃げやがったか!」 

「・・・えっ!?」 「上っ!!?」 「各個散開っ!」


 いつの間にか真上に飛び上がっていたヌリカベが降ってきた!ネメシス&バル&ジャンヌは慌てて回避!


「ふんぎゃぁぁっっっっっ!!!」 

「ひぃぃぃっっっっっ!!!」  

ぷちぃっっ!!

「・・・・・・・あっ!」×3


 口論中だった為に逃げ遅れたゲンジとセラフがヌリカベに押し潰された!押し潰すことで満足をしたヌリカベが嬉しそうな大笑いをして闇に姿を変えて消え、アスファルトにメリ込んだゲンジとセラフだけが残される。

 ジャンヌは、図書館の屋根上に取り残された真奈を迎えに行って、バルミィが、ゲンジとセラフを地面から引っ張り出してやる。ネメシスは、遠い目をして、マスクの下で冷めた笑みを浮かべた。揃って変身解除。


「これから反省会・・・と言いたいところだけど、

 今日はもう、時間が遅いから明日だな。」


 連絡を受けた文架警察のザックトレーラーもやってきたが、ヌリカベには逃げられた後なので意味が無い。優麗戦隊ヒロインズの戦いは、初陣(泥田坊戦)に続いて、惨敗で終わった。




―冬休みが明けの放課後・2年A組―


 ジャンヌ&バルミィも交えて、昨日の反省会が行われる。


「敗戦の戦犯は麻由で決定だな!」 

「麻由ちゃん、名乗った後で文句を言うのは無しだよ。」

「名乗るテンポを乱すのも考え物だぞ、マユユ!」

「ぅんぅん、マユ、ノリが悪いぞ~!」

「否定はできませんが、そもそも、名乗る必要はあったのでしょうか?

 一体、何の為に?」

「ばるるっっ!ボクも、そこは疑問だったばる!

 敵を目の前にして、戦いの方針で口論をするのは問題外ばるが・・・。」

「優麗戦隊ヒロインズとかヒロインジャーって何なんだよ?

 ・・・つい、雰囲気の呑まれて、

 あたしもヒロインジャーホワイトって言っちゃったけどさ。」

「むぅっ?ミポリンは、我がマスターの提案が不満か?」

「私とジャンヌさんと紅葉ちゃんで考えたんだけど、変ですか?

 生徒会の私兵戦隊・推理研究会レンジャーの方が良いですかね?」

「そう言う問題じゃなくて、

 順番に名乗る暇があったら、サッサと戦った方が良いばる。」


 表向きは推理研究会。裏の顔は文架市の平和を守る優麗戦隊ヒロインズ。それが彼女達だ!


「別に率先して平和を守ってるつもりは無い!

 それと、優麗戦隊ヒロインズはなんてネーミングは嫌だ!」


 推理研究会の部員は、現時点で、紅葉&美穂&麻由&真奈の4人と、外部メンバーのバルミィとジャンヌ。本日中に【推理研究会→愉怪な仲間達部】に名称の変更希望を提出して、次の生徒会の議案になる。・・・と言いたいところだが、優麗高部活動規則で、参加する生徒が2~4人まではサークル、5人以上で部として認められる。学校外のバルミィとジャンヌは必須人数には認められないので、部活規則を変えない限りは、部には認められないだろう。


「ん~~~~・・・あと1人、メンバーは欲しいなぁ~~。」

「亜美ちゃんに頼んでみる?」

「ソレゎマズいよぉ~!アミゎ、ァタシ達が変身すること知らないんだしっ!」

「まだ、知られていないと言い張るばるか?」

「D組に、1年くらい前に、紅葉に負けた男が居ただろ?

 なんてヤツだっけ?ソイツを誘えば良いんじゃね?」

「リョータのこと?」

「部活動規則を変えるのは難しいですが、

 【推理研究会】を【愉怪な仲間達】に変更するくらいなら比較的容易です。

 大会に参加するわけではないので、

 サークルのままでも問題無いのではありませんか?」

「私としては、サークルより部の方が、イメージが良くて良いんだよな~。

 部の方が予算が付きやすいですよね?」

「へぇ~!予算が付くんだ?

 ならさ、部に昇格させて、予算で、あたしの原チャ買ってくれ!」

「んぁっっ!?ミホばっかりズルいっ!ならァタシのバイクも買ってっ!」

「オメーは免許持ってねーだろ!」

「免許の所有以前に、部費で私物は購入できません。」

「野球部とかは遠征用のバス持ってんじゃん。」

「あれは私物ではなく部の所有物ですし、

 部費ではなく後援会の寄付金で購入した物です。

 推理研究会に後援会なんて有りませんよ。」

「推理研究会は、生徒会長の私兵なんだろ?生徒会の金で何とかしろよ。」

「生徒会の予算で私物を購入するなんて、尚更、ダメですよ。」

「だったら、オマエ(麻由)が後援会を作って、

 オマエ(麻由)の小遣いで何とかしろよ。」

「無茶、言わないでください!」

「ちぇっ!ケチっ!」

「美穂さんの思考が、いい加減すぎるんです!」


 今日の美穂発案の反省会の内容は、「敗因の相談」ではなく、「優麗戦隊ヒロインズは嫌だ」って事だった。賛成3(紅葉&真奈&ジャンヌ)、反対3(美穂&麻由&バル)、部長の美穂の強権により、「優麗戦隊ヒロインズ」は禁止になる。


「チェ~・・・ザンネン。カッコイイ名前と思ったのになぁ~。」

「美穂さんが反対なら仕方ないですね。

 早速だけど、依頼が来ているよ。」


 メンバーが真奈しかいなかった頃の推理研究会は、何でも屋と化して、紛失したジャージ探しだの、校内に迷い込んだネコ捕獲だの、優麗高のどうでもいい事件の依頼が舞い込んでいた。2ヶ月前くらいには、「盗難された父親のバイクを取り戻す」なんて、学校と関係の無い事件まで扱った。

 辟易した真奈は、推理研究会を生徒会の管轄に入れて、生徒会経由で事件の依頼を受けるように考えたのだが、冬休み中に決めたことなので、まだ生徒会の議案には成っていない。


「誰から、どんなイライなのぉ?」

「2年E組の半田好代(はんだ すきよ)ちゃんからの、依頼だよ。」

「んぁっ!鞄にパンダちゃんの大きいキーホルダー付けてる子だょね?」

「うん、そう。

 その‘大事にしていたパンダのキーホルダー’が無くなったから、

 探して欲しいんだって。」

「それゎ悲しいねぇ。

 よぉしっ!詳しいことを半田さんに聞いて、早速、捜してあげよう!」

「うんっ!そうだねっ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×4


 乗り気なのは、紅葉と真奈のみ。美穂&麻由&バルミィ&ジャンヌは、冷めた目で2人を眺めている。


「さてと・・・帰るかな。」

「私は、帰宅して、日本語について勉強せねばなりません。」

「んへぇ?ミホとジャンヌゎ帰っちゃうのぉ?」

「私は、これから生徒会の会議がありますので・・・。」

「ばるるっ!ボクは雛子のところに行って、新装備の開発を手伝うばるっ!」

「えっ?麻由ちゃんとバルちゃんも手伝ってくれないの?」

「申し訳ありませんが、

 【推理研究会→愉怪な仲間達】の議案を通さなければ成りません。」

「パンダのキーホルダーくらい、真奈と紅葉だけで大丈夫だろう!任せたぞ!」


 紅葉と真奈は不満そうにしているが、美穂&麻由&バルミィ&ジャンヌは、ゾロゾロと教室から出て行ってしまった。内心では真奈も「キーホルダー探しなんてバカバカしい」と思っているので、呼び止めにくい。


「みんな行っちゃったね。紅葉ちゃん、どうしよう?」

「全くもうっ!ミホもマユもバルミィもジャンヌも冷たいんだからっ!

 仕方ないっ!ァタシ達だけで捜そうっ!」

「うん!」




―生徒会室―


 本来であれば、冬休み前に「2学期の反省会」と「今後の方針」を打合せを終わらせるのだが、今年度はグラウンドが荒れた事件(リベンジャー戦)で、冬休みが前倒しされてしまったので、休み明けの活動になった。

 今期の生徒会役員と、前期生徒会役員のうちの参加可能な者が集まり、麻由の主導で会議が始まる。


「先ずは、2学期の反省点ですが、どうでしょうか?」

「ふむ、校舎の火災など、不測の事態に良く対応して、概ね良好だったな。

 ただ、一点、反省すべき点を上げるなら、優麗祭の無許可ライブくらいか。」


 議案に対して、最初に発言をしたのは、3年生で前生徒会副会長の冨久海跳(ふく かいと)だった。この会議は、ただの反省会ではなく、前生徒会役員が、新生徒会の運営を採点して、改善点をアドバイスする目的もある。


「一歩間違えれば、僕等の世代の汚点になるところだったからね。

 来年の優麗祭の為にも、何故、あんな無法が発生したのか、

 時期文化祭実行委員長が決まり次第、キチンと対策を打ち合わせなきゃだね。」


 続けて、麻由と同じ2Aで、風紀委員長の若干メタボな風木護(ふうき まもる)が発言をする。風木は、生徒会役員ではないが‘来年度の優麗高の顔’の1人なので、特別に呼ばれている。


「た、確かに・・・その通りですね。」

「まぁ、その点は、生徒会長が、不穏分子と親密にしているみたいなので、

 去年の連中は、もう勝手なことはしないだろうけど、問題は模倣犯の出現だね。」


 風木の発言に対して、冨久海跳が、「フッ」と微笑みを浮かべ、気障ったらしく前髪を整えて銀縁メガネを「クイ」っと上げて、組んでた長い足を戻し、優雅な仕草と涼しい表情で麻由に流し目をして、再び発言をする。


「僕は、不穏分子を全面的に否定をする必要は無いと思っている。」

「えっ?冨久さんは、無許可ライブを容認するのですか?」

「いや、もちろん‘無許可’は反対だ。

 だが、同時に、多少の暴走は、今を謳歌する僕等の特権だと思っている。

 優麗高の皆にとって‘充実した優麗祭’である為には、

 何もかもを‘教科書通り’にする必要は無いのだろう。

 不穏分子が窮屈に感じて勝手なことをせず、且つ、優麗高の伝統を守れる範囲で、

 生真面目すぎず、遊びすぎない、ちょうど良い落とし処を見付けるべだな。」

「真面目すぎず、遊びすぎない・・・ですか。難しいですね。」

「あのライブは、無許可だったから‘腫れ物’扱いだが、

 生徒会が公認をしていれば、

 優高生と宇宙人との友好記念ライブになる可能性もあった。

 運営側のスタンスで変化したって事さ。

 ‘彼女達を気に入らない’と考えて独断で握り潰そうとするのではなく、

 運営全員で協議をして、メリットとデメリットを考えるべきだな。」


 ゲリラライブを独断で握り潰そうとして失敗した麻由は、自分が遠回しにダメ出しをされていると気付いて、僅かに俯いてしまう。当時、紅葉達を目の敵にしていた事は、誰にも告げていない。しかし、麻由の思惑は、冨久海跳にはバレていたようだ。

 3年A組(理系特進クラス)で、成績優秀、スポーツ万能、イケメンで人望も高い冨久海跳。彼が理路整然と発言をすると、麻由ですら納得をさせられてしまう。


「やや手厳しい意見をしてしまったが、

 これは、直に卒業をする僕から、君たち来年度の3年生に、

 より魅力ある優麗高になる為の、手向けのアドバイスにさせてもらうよ。

 既に問題点はハッキリしているんだ。

 来年度の為、葛城や風木なら出来るだろう?」

「・・・は、はい」 「頑張ります」


 続いて、今後の方針についての打合せなのだが、3学期は、球技大会が有るくらいなので、校内イベントだらけの2学期に比べると、協議することも少ない。


「あ、あの・・・1つ、私からの議案があるのですが、

 推理研究会を、愉怪な仲間達という名称に変えて、

 依頼は生徒会経由にしたいのですが、どうでしょうか?」

「推理研究会って、以前、生徒会の私兵って言われてたサークルのことだね。」

「名称については、特に問題は無いだろうが、変更の目的は?」

「部員達の希望です。

 今のサークル名のままでは雑務ばかりを押し付けられるので、

 イメージを変えて、且つ、生徒会管轄にすることで、

 意義のあるサークルにしたいそうです。」

「部員は、確か1人しか居なかったよね?」

「私も含めて、現在、4人になりました。」

「葛城さんまで参加をしていると、

 生徒会の私兵どころか、生徒会長の私物化をしそうだね。」


 推理研究会が生徒会の私兵と揶揄されていることについては、生徒会メンバーも快く思っていない。麻由が困惑をすると、再び、冨久海跳が口を挟む。


「僕はそうは思わない。葛城なら大丈夫だろう。

 それに、生徒会の管轄になるなら、役員全員で、シッカリと管理すれば良い。

 優高生なら、そのくらいは容易だろう。

 生徒会としては異論無しで良いのではないか?」


 【愉怪な仲間達】についても、海跳が助け船を出してくれたので、アッサリと承認をされる。




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