私は今日も誰かに抱かれている

櫻井

第1話 今日も私は誰かの彼女

「えーうけるー今日の親父一発五万だったー」

「えーいいなぁー私なんてイチゴしかくれなかったー」

「えーそんなのやるだけ無駄だよー」

「でもー今日引けなかったらトシに会いにいけないもん」

「えーあんたこないだトシと喧嘩したって言ってなかった?」

「いやーしたけど、担当が一番だよ」

こんな会話が毎日聞こえてくる歌舞伎町、欲望と金の渦巻いた町

このような会話をしているのは女性だけではない、男性軍も同じだ。

「あの女の子、10万使ったのに落とせなかった」

「あの子ならアフターいってくれると思ったのに」

「なんであの女に金使ったのにやれねーんだよ」

このような会話がどこかしこから聞こえてくる、今日も誰かが誰かを狙っている。

そんな歌舞伎町に伝説の女がいた、一条奈美は生きる伝説と言われていた、初回で行ったホストでは一撃1000万を使うのは当たり前、だがアフターや指名で行くことはまずなかった。奈美は初回で多額の金額を使うことに快感を覚えていたし、初回でお金を使われてホストは売れていくという都市伝説までできていた。

歌舞伎町に一条奈美をしるものは不特定多数いるがその女の素性をしるものはごくわずかだった。

一条奈美を昔から知るものはあの子がこんな子になるとは思ってなかったと口をそろえる。


12年前大久保公園

奈美は一人で立ちんぼしていた、容姿も他人よりいいとも言えず下の下だった。当時の売りの相場は三万前後だったが奈美は15000円で売りをしていた、周りの御あんなの子は白い目で見られていたが奈美は気にしなかった。

奈美は当時指名していた担当に貢ぐのに必死でそのようなことを考えることはできなった、奈美は担当のエースで担当からは期待されていたし、奈美は期待されることがうれしかった、今までこんな人から期待されたことは一度もなく育った奈美は担当からの期待に応えようと奮闘した。安かろうが病気を移されようが奈美からしたら今日雨が降るってことことなみに日常だった。

「奈美ちゃん今日も立ってるの??」と声をかけてくるのは麻美、麻美を立ちんぼをしている一人だったが麻美はほかの立ちんぼからは嫌われていた、麻美は昔お客さんを殺したことがあると噂をたてられていたが奈美は麻美のことがすきだった。

奈美は麻美から殺しの話をされたことがある、奈美はそれを聞いて仕方なかったんだなぁとしか思わなかった、そんな噂を流すのは低俗だなと思っていた、その話を聞かされてから麻美との距離が近くなった、こんなところで立ちんぼしている女の子で闇をかかえていない女の子なんていないとおもっていた。

奈美は仕事終わりに毎日担当のいる店へ通っていた、担当は他に被りもいないモブホスだったが奈美からしたら居心地がよかった。

「来月のタワー大丈夫そう?」と担当はきく、最近はそんなはなしばっかだが奈美は頑張ろうとしていた、イベントが終われば担当は自分のものになるという考えがあった、担当も「イベントでタワーしたら俺はホストやめるから一緒になろう」と言ってくれていた。「今日は一時間でもいいかな?」と奈美が言うと担当は頷いて伝票内勤に頼んだ、奈美はお金を支払い店を後にした。

最近担当に不信感を得ていた、奈美は担当をつけようと思っていた、奈美だけと言っていた担当はもういないような気がした、確かにイベント後一緒になるとは言ってくれているけど、奈美には不信感しかなかった。

二日前の午後、担当がほかの女性とホテルに入るのを見てしまったが担当にそのことを言える度胸はなかった、多分あの子は姫ではない、奈美が帰るときによく見るガールズバーの客引きの女の子によく似ていてその子を店で見たことはなかった。

奈美は近くの喫茶店で客にラインをかえしながら時間をつぶすことにした、明日の客を確保するのも仕事だと奈美は考えていた。

25:00 担当の店の明かりは消え26:00に担当は店を出て行ったが店付近には女の影はなかったが奈美は信用できなかった。

担当は例のガルバのことアヤカフェの前で待ち合わせをして繁華街に消えていった、奈美は許せなかった。誰のために毎日知らない男に抱かれてるのかわからなくなった、好きでもない男に抱かれそのお金を担当に使う、はじめはそれで存在価値を得ていたが今の奈美にはわからなかった。

午前五時、担当と女は居酒屋をでて自宅に戻ろうとしていた。

「ゆうき、その子誰?」と奈美は声をかけたが担当は少し困った顔をした、一緒にいた女は「おはようございます」と頭を下げたが奈美はその余裕さに頭にきた。

鞄から100円均一でかった包丁を取り出すと、女の表情が暗くなるとともに担当は「何をする気だ」と後退りする、奈美は覚悟を決めていた、この人をころしてしまおうと、私を愛してくれないこの人を殺そう、私のそばにいてくれれば幸せにするのにという思いで担当に包丁を向け走り担当の胸を刺した。

「こんなに私はあなたのことがすきなのに」と言いながら二か所刺した、辺りは血の海になり、女は倒れこんだ。奈美の周りには野次馬ができ、動画を撮ったり警察に連絡する者たちにかこまれたが奈美は高揚感にかられていた、これで私のものになったという実感がわいた。誰にも渡さない、私の担当。

奈美は駆け付けた警察官に逮捕されたが手錠を掛けれた彼女は笑顔だった。

彼女はそのころネットのオモチャにされるとも思っていなかっただろう、だが奈美は今の高揚感に浮かれていた。

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