ダンジョン攻略配信が流行っている世界で空気を読まずにエロトラップばかり仕掛けている奴がいるんだが
カラスバ
第1話
状況を整理するとしよう。
現在、転生したばかりの俺は暗い洞窟の中にいる。
……洞窟、というか俺を転生させた女神の言葉を借りるのならば『ダンジョン』だろうか。
俺が転生した世界は現代社会なのだが、何故がダンジョンとそれを攻略する者がいる。
そしてそれらはスキルと呼ばれる女神の祝福によって支えられており、そのスキルというのは主に一部の女性だけが発現するようになっている。
攻略者はスキルによって命が守られており、死んでも復活するので、そのため攻略のハードルは極めて低いらしい。
恐ろしい話である。
という訳で、ダンジョンだ。
俺はそれの運営として、このダンジョンを守り切らなくてはならない。
より正確に言うと、死にたくないので攻略者達に自分がいるボスエリアを踏ませる訳にはいかない。
現在、俺が持っている武装は銃一丁のみ。
しかもこれ、俺を転生させた女神曰く『冒険者に酷い目に遭わされる前にこれで自害してね☆』用らしいから扱いに困る。
威力は文字通り女神からの折り紙付きなのだが……
「うーん……」
そして後もう少しで封鎖が解除されるこのダンジョンの初期設定を考えていた訳だったが、とりあえず俺も最初はデストラップを仕掛けてみようかと思っていた。
しかし、すぐに「こりゃ駄目だ」と思うようになった。
何故かというと、デストラップってかなりコスパが悪いからだ。
何故かそれらを用意するためのポイントは高く、さらに言うと彼女らは復活するのでジリ貧である。
そう言う訳で、それなら最初はコスパを重視して普通に冒険者を痛めつけるだけで良いかなと逆に思う事にした。
それを前提とするとはいえ、出来る事は少ない。
まず、開拓出来るエリアが限られている。
ダンジョン経営は正しくゲームのそれみたいになっていて、敵を倒す事によって手に入るダンジョンポイントを消費してダンジョンを拓いたり、あるいはトラップを仕掛けたりモンスターを召喚したりする。
そして現在俺が持っている初期ポイントは『100』。
これは最低限ダンジョンを広げ、そこにスライムを適当に散らす事ぐらいしか出来ないほどの少なさだった。
ちなみにモンスターは攻略者が現れると同時に指定の位置にスポーンし、決められた挙動を取るようになっている。
攻略者がいなくなると同時に再び消える。
そしてまた現れると同じく指定の位置からスポーンする、それを繰り返す。
まあ、ボスである俺が死んだらダンジョンもそのまま消え去るのだが。
さて、どうするか。
攻略者を最低限のコストで対処するためには。
最初は初見殺しのトラップでも良いかもしれない。
そうして最初のウェーブを突破する事によりポイントを獲得し、それで得たポイントでダンジョンを拡張する、そうする事が出来るのだから。
『100』ポイントで出来る事。
先ほども言った通り最低限のエリア、具体的に言うと一つのフロアを作るのが精いっぱいで、更に言うとモンスターもスライムを設置するのが限界だ。
さて、どうする……?
「――いや、いっその事それでも良いのか?」
■
千葉県某所。
文字通りダンジョンから持ち帰って来る事が出来るアイテムによって──転生者である彼が知るそれより栄えている県である。
女神の加護、スキルを得た攻略者達は今日も今日とてダンジョンに潜ってモンスターを倒し、そしてアイテムを獲得する。
ある者はそれを自らの物とし、ある者はそれを換金する事によって莫大な資金を手にする。
ダンジョンからは文字通りの意味であらゆるものを得る事が出来、それ故人々はダンジョンを『ドリームホール』と呼ぶ事すらあった。
……当然、中には殺されて死ぬ者もいるが、復活するしそもそも最近では攻略法がたくさん編み出されているのでほぼ安全にダンジョンを行き来する事が出来ている。
当たり前の事を当たり前にこなせば、攻略者は敗北する事などないのだから。
――1人の冒険者の話をしよう。
その冒険者の名前は──安直だがA子としよう。
片手剣を操る冒険者。
A級クラスの称号を持ち、そしてもうじきS級ランクの冒険者になるとも噂されていた。
そんな彼女の冒険者としてのスタイルはソロ。
彼女曰く『一人の方が身軽で気楽だから』なのだそうだ。
そしてその言葉は実際、彼女の称号が証明していた。
……そんなA子も攻略者協会に所属する者として果たす義務がある。
ダンジョンの破壊だ。
ダンジョンの攻略ではない。
ボスを倒す事により、ダンジョンを崩壊させるのが今日の彼女の仕事だ。
ダンジョンは人々に利益をもたらしているが、しかし数が増えると処理が追い付かず、そして溢れたモンスターがダンジョンから出てきてしまう事がある。
それを阻止するために、こうしてベテランの攻略者がダンジョンを崩壊させるのだ。
「いってらっしゃいませ」
そう言う訳で、受付嬢からそのように見送られ、A子はそのダンジョンへとやってきたのだ。
まだ名も付けられていない出来立てほやほやのダンジョン。
規模は小さく、これならば普通に攻略出来るなと考えながら彼女はカメラ……配信用ドローンカメラを取り出す。
この世界における一つの娯楽。
……危険性の少ないダンジョン攻略の様を映像として配信する者。
そう、彼女もまたダンジョン攻略を配信する──通称、トラベラーだった。
「はい、みんな。今日はいつもと違って攻略じゃなくて破壊。増えすぎないようにダンジョンコアを壊す事が目的だよ〜」
ブンブンと剣を振り回しつつ笑顔を振り撒く姿はまさに熟練そのもの。
そのように配信スマイルをしつつ、そもそもダンジョンそのものが出来立てのものだったから──そう、油断していたのかもしれない。
「え、きゃあ!?」
いきなり、頭上から降ってきたスライム。
それは彼女が知るそれよりもどこかさらさらしていて液体のようで、だからこそ上手く掴む事が出来なかった。
更に、恐ろしい事が起こる。
じゅう、という音。
最初、何の後だろうと思っていた彼女は、しかしすぐに何が起こったのかを理解した。
なんか、服が溶けてた。
「ひ──」
みるみるうちに素っ裸になる彼女。
いろいろなところが丸見えになり、状況が状況だが顔を真っ赤にするA子。
……流石は熟練と言うべきか、その前にすぐ判断を下し配信カメラをオフにしていたが、しかしそれが命取りになった。
「も、もが」
口の中に、スライム。
呼吸が出来なくなる。
しばらくもがいていた彼女だったがその動きは次第に小さくなっていき──
『センシティブな内容が検知されたため、このアーカイブは削除されました』
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