先輩と僕の甘々配信練習

しんしん

第1話 部屋に呼ばれた

(ガチャっという玄関が開く音)


「あれ? どうしたの? 突然ウチに遊びに来るなんて?」


「あー! 怒った顔しないでよお。冗談に決まってるじゃん。バイトお疲れ様。そして私は講義お疲れ様。自分で自分を褒めちゃう。難しくて大変だったんだよー。――って話ずれちゃったね。今日はいきなり呼びつけちゃってごめんねえ。来てくれてありがとう。どうぞ上がって」


(二人の足音)


「LINEで伝えたけど、夜ごはん食べてないよね? さっきピザ買ってきたから一緒に食べようぞー。チーズたっぷり。トロトロでおいしいよー」


(座る)


「ピザ言ったらコーラだよね。一緒にふとっちょになろう!」


(炭酸が抜け、コップにコーラが注がれる)


「え、配信の練習はいつやるのかって? もうここからスタートみたいなものだよ。ピザを食べるのだってVチューバーの立派な仕事らしいからね。先週なりたいと思ってから色々調べたのだ。私口下手だからいっぱい練習しないときっと喋れないしね。外見のモデルは―――もうちょっと慣れてから考えるのじゃ」


「もぐもぐ」


「キャラが固まってないって言わないで。一応イメージはあるの。ケモミミでね、ちっちゃくて、とって可愛い系! 私にないもの詰め合わせ」


「じゅうぶん可愛いって……。よく照れずにそんなこと言えるね。お姉さんをからかかうのはよしなさい。いい? 君は私より一つ年下なの。いくら大学生には年齢は関係ないって言っても、学年では私が3年生、君は2年生。少しはわきまえて欲しいものだよ」


「モグモグモグモグモグ。ごくん」


「あははっ! 普通に食べてるだけだこれ。 あはっ!」


「どうしよう。とりあえずを感想言ってみようかな。トマトがいっぱい乗っていて、サクサクして、おいしいので、コーラがとても進みます」


「つまらないコメントって言わないでって?! もっと具体的に何が美味しいか伝わるようにってかあ。むずかしいんだよ。えーっと……サクサクサクサクサクとってもとろーり、とろーり、トマトいーーーーっぱい!!! ベーコンかわいい」


(だんだん近づいてくる)


「(ねっとりとした咀嚼)とっーてもおいしいよ。すっごくトロトロ」


(ガタンというテーブルに何かをぶつける音)


「あああああああああ! コーラがああああああああああああ」


(激しい物音)


「ぎ、ぎりぎりだった。 こんな反射神経を酷使したのは、二日前に無理矢理やらされたバレーボール以来だよ。まさかコーラが私に逆らってくると思わなかったね。もっと褒めてあげるべきだったかもしれないよ」


「えっちな感じは反則だって? 別に君の近くで食べてただけですけど? ちょっとー。中学生じゃないんだからあ。ふふふっ(不敵な笑み)」


「とにかく、食べるので遊ぶのは良くないね。最近は炎上しやすいって言うし、そもそも食べ物ネタは少し飽きられてるかもしれないし。やっぱり定番なゲーム実況で練習するべきだと思うのね。君もそう思うよね。ねっ! ねっ!」 ねっ!」


「よーし、さすが君だね。やっぱりゲーム実況の練習が絶対必要だと思うよね。あたしが求めていた答えをありがとう。後でな・ん・で・も聞いてあげるね」


「ではゲーム実況を始めようと思うんだけど、残念ながら私はあまりゲームをやらないから君に教えて欲しかったりする。どうぞよろしくお願いいたします。」

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