ウチの義妹のウラオモテ

みずはる

Chapter1-冷たい?義妹-

(玄関のドアが開いた後、スリッパで廊下を歩く音が聞こえてくる)

エプロン姿の妹――小春が冷たい表情で登場。




「――兄さん、お帰りなさい」




感情の読めない瞳で兄――隼へと問い掛ける。


「いつもよりも帰って来るのが遅かったですね?」


「ん?今日はなんだか疲れた顔をしていませんか?それに」


(隼の顔や胸に顔を近付けていき、至近距離で匂いを嗅いでいく)

上目遣いで隼を見た後、少し眉を顰める。


「……いつもよりも汗臭いですよ?」


(隼に肩を押されて、距離を離される)

突然の隼の行動に驚いた声が出る。



「わっ!と、と」



不機嫌な表情で隼へとジト目。


「……急になにをするんですか?」


「はぁ?なんですかそれ。もしかして」


隼の耳元へと顔を近付け、小悪魔的に呟く。




「――照れてるんですか?兄妹なのに」




再び隼に距離を取られ、そのことに少し傷付く様子をみせる。


「そんな過敏に反応されると、ショックを受けてしまいますね……」


(隼の発言に何かを思い出したように、軽く手をポンと叩く)


「あ、そうでした」


「もうすぐ料理が出来るので、兄さんは先ずお風呂に入ってきてください。今のままだと臭いので」


「はい、今からです。拒否は認めませんよ?」


嫌そうな隼の様子に、少し圧が強くなる。


「なにをそんなに渋っているんですか?」


「え、帰ってきたばかりだから少しゆっくりしたい?……なるほど」


(隼の前へと移動)

隼を説得するように真っ直ぐ見詰める。


「兄さんの気持ちはわかります。お風呂は面倒なところもありますし、手間に感じることも仕方ないでしょう」


「ですが、命の洗濯といえるのもまたお風呂です」


「今の疲れて汗だくになっている兄さんには、お風呂でゆっくり疲れを癒やし、汚れを落とした後、私のご飯を食べて元気になってもらいたい――そんな妹心がわかりませんか?」


申し訳なさそうに頭を横に振って謝る隼の姿に、満足げに頷く小春。


「はい、よろしい。では、お風呂に入ってきてください。私はその間に料理を――」


(疲れたように廊下を歩いて行く隼)

小春は後ろから声をかける。


「あ、兄さん。上着は私が預かります」


「はい、確かに。兄さん、今日もご苦労様でした」


「ん?何をそんなに驚いた顔を?」


隼の発言に驚き、照れ混じりの表情に変わる小春。


「まるで新婚さんみたい――って、何を言っているんですか!さっさと行ってください!!」


(足早にお風呂へ向かう隼。その後、ドアが閉まる音が聞こえる)

後ろ姿を見送った後、小春からは嬉しそうな声が漏れる。






「全く……兄さんったら、私のことを新妻みたいだなんて……もうもうっ♥」






預かった隼の上着に顔を埋めて幸せそうな声。


「あぁあ、の匂い♥」


「男臭い匂いのはずなのに、お兄ちゃんの香りだと思うと愛しくなってしまいますね。それにさっきまで着てたからほんのり温もりが残ってて、それも良きです♥」


「こんなのいつまでも包まれていたいって思ってしまいます♥」


上着から顔を離して、心配そうな声色になる。


「……ですが、少し心配ですね」


「最近のお兄ちゃんは、何故かこれまで以上にバイトを入れています。別に欲しい物があるとかは言っていなかったと思いますが……というか、言っていたら私が知らないはずありませんし」


「何か事情があるのでしょうか?もしや……女?」


ハイライトの消えた瞳で圧を感じさせる声が出る。


「……その可能性はないと思いたいですが、今後は注意深く観察する必要がありそうですね」


再び上着に顔を埋める。


「何はともあれ、今はお兄ちゃんのために夕飯の準備を終わらせましょう……、です♥」

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