第42話 輪になって踊ろう
重いような、軽いような、轟音。
同時に、崖下のトンネルから鮮やかな朱色の炎が噴き出し、魔法の防護壁の側面を
「……おっけ! 粉々や!」
轟音から一呼吸
――その間に、千色たちは走り、飛ぶ。
龍郎が、吐き出す炎の勢いも使って天高くから落とし、粉々に破壊したE組タンクの元へ。
『
テレーパのテレパシー魔法越しに叫んでいるのは、陽気な
音鳴の言う通り、龍郎の炎が熱したコートを温度変化魔法でほどよい温度に戻したのは、C組の
ちゃんちゃらちゃんちゃん、ぴんぴろりん。ぽこぽこぽこぽん、ぽぽん、ぽぽん。
――不意にコートに陽気な音楽がかかり、熱で
千色が、上げた両手の隙間に青い空を見上げると、黒いドラゴンもくるりくるりと舞いながら、空を泳いでいる。
いい天気。
綺麗なドラゴン。
楽しい音楽。
ああ、なんて素敵な盆踊り――。
「みんなーっ! やられてんでーっ!」
C組生徒たちが作った大きな輪の上で、箒に乗った本間弥音が叫んでいる。
しかし、誰もそれを邪魔だなどとは思わない。
なんてったって今日は、楽しい楽しい盆踊り――。
「散歩クン! いっくらテンション上がったからって、勝手に魔法かけたらメっ! って
その瞬間、ふっと音楽が
耳が痛いほどの静寂の後、千色たちC組生徒は揃って頭を抱える。
――また、やられた。
陽気で、乙盗にも負けない変人である音鳴散歩の得意魔法は、
音効果魔法は、何もないところから
適切に使えば強力な魔法であるはずなのだが、乙盗にも負けない自由人である彼は、時折こうして勝手に周囲の人間の精神を操り、数多くの問題を発生させるのである。
「みんな、恥ずかしがることないで! 上手な盆踊りやったわ!」
一人、散歩の魔法をかけられている事実に気付いていた本間弥音はにかにか笑いつつ、移動魔法で、その辺に転がしてあったC組生徒たちの箒を持ち主の足元に転がしている。
――そう。落ち込んでいる暇はない。
千色は、本間に転がしてもらった自分の箒を握り、走って地面を蹴ると同時に、サドルに
「ご苦労様」
耳元で聞こえた低い声に――否、より物理的な事象によって、千色は箒から転がり落ちる。
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