第41話 ドラゴンの弱点
千色たちは、相手チームのタンクを盗んで大量の泥水を運ぶ龍郎に、生徒たちを近付けないよう尽力する。
――これは、龍郎が、人間を攻撃したがらないからだ。
龍郎は、魔法や、魔法で飛ばされた石などに攻撃されても、その羽毛や鱗、炎によって身を守ることができるし、タンクの破壊を試みる魔法だって、
しかし、生身の人間が目の前に来ると、龍郎は反射的に衝突を
マデスリングではもちろん、必要以上の力を使って相手を傷付ければ反則となるが、龍郎の技量であれば、
――龍郎のことだから、人間とそれ以外の動物を差別しているとは思えない。とすると、動物になれる者ばかりの家庭で育ったために、普通の人間との距離感が掴めていないのか――。
分からないが、これまでに行った練習試合における失点の原因の一つは、龍郎が人間に対して強く出られなかったことなのである。だからこそ、現在はこうして、クラスメイトたちが龍郎の苦手をカバーする
『
千色の反対側、龍郎の右後ろでE組生徒たちに眠気を与え、箒のコントロールを失わせていた
龍郎は、視界の端に、ふらふらと自分の方へ向かってくる小柄な男子生徒の姿を捉えると、用意もなしに巨体を横二回転させて
――もちろん、
「何やってんだよ龍! ビッショビショなんだけど!」
千色はしっかり本気で突っ込みつつ、自分のすぐ
鉄の服の重みと硬さに動きを封じられ、ゆらりゆらりと落下していくE組生徒を横目に、千色は、龍郎が、掴んでいたE組のタンクからC組のタンクに泥水を注ぎ入れているのを見守る。
こぼれたのは――半分ほどか。
『バッチリだ龍郎! みんな、次いくぞ!』
テレパシー魔法越しの
「はいはーい! みんな、こっちねー!」
「こら、もぞもぞすんじゃないよ。死にたいのかい」
「んふふふ。ベルトコンベアーに乗せられた可燃ごみみたい。あ、ごみ出しの日を一か月間
先に地上に降りていた
千色も、まだ動けるE組生徒たちの体操服を鉄に変身させながら、人の流れに乗って防護壁の下へと潜り込む。――この作戦のこの段階では、コートにいる全員を、コートの片側、崖の陰に隠したうえ、防護壁で守られた状態にしたいのだ。
「本間ちゃん!」
防護壁の下が、眠気、重み、高熱、記憶喪失、その他魔法の効果で
「人数確認よろしく!」
「任しとき! ……うん、龍郎君以外、全員おるで!」
真実発露魔法によって、一瞬で正確に人数確認を行った本間弥音が、両腕で大きなマル
「じゃ、
被布賀が指示を出すと同時に、全身に痛そうなおできをこさえたE組生徒(運悪く
千色たちも周囲に注意し、まだ動ける者たちを制圧していく。
その間に我内が、宙に浮いていた巨大な防護壁魔法の屋根に、扉のない垂直の壁を設ける。
「封鎖完了!」
我内の声に、被布賀は頷くと、背後の崖に向かって――テレパシー魔法を通して「龍郎! ぶちかませ!」と叫ぶ。
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