言葉無くとも

ぐらたんのすけ

言葉無くとも

彼に思いを伝える事が出来なかったのを、今でも正しい選択だったのか思い悩む。

ずっと好きだった。なんで好きだったのかはもう大分昔の事で、忘れてしまった。

でもあの日の胸の熱さだけはいつまでも鮮明に心に残っていた。


好きですと、その4文字だけ言えばよかった。

でもいざ目の前に立つと言葉が出なくて、無性に時間だけが過ぎていって、焦りと恥ずかしさと申し訳無さでぐちゃぐちゃになって。

そして結局静寂だけが残った。


彼は生まれつき喋ることが出来なかった。

だからなのだろうか、彼は人の感情を汲み取るのが上手かったと思う。

何も言わない私を横目に見ながら、彼は一心に折り紙を折っていた。

そうして完成した物を優しく私に渡してくれたのだ。

ハートの折り紙。少し不格好だけど、愛情が籠っていると一目でわかった。

それを見て私は彼の言いたい事が全て理解できた。

言葉という道具など介さなくても、私の心はこんなにも揺れる。

ありがとう、嬉しいよ。貴方の事が大好きです。

そんな私の気持ちの全てが伝わった気がして、思わず目を彼から背けてしまった。

けれどきっとそれで良かったのだ。

まるで告白を終えた後のように、私達は暫くの間共に時を過ごした。

それが全部私の身勝手な思い過ごしであったならそれでもいい。都合の良い解釈だと馬鹿にすればいい。


今も隣に彼が居てくれるなら。

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言葉無くとも ぐらたんのすけ @guraaaaaaaa

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