第15話:普段の素行が自分の運命を決める。

ロクデナシ和樹が自分と陽介の間に、邪魔に入って面倒くさいことに

なりはしないかと檸檬は心配した。


その不安は当たらずとも遠からずだった。


面倒くさいもので、女性は一度でもロクデナシ和樹みたいなクズ男に

目をつけられるとなかなか縁がきれない。

それもこれも過去において檸檬の普段の素行がもたらした汚点のひとつ

なんだろう。

そう言うクズ男と関わらないよう前を向いて正しい道を歩まないと人間は

油断するとすぐに落ちていく。

一度落ちはじめると、なかなか這い上がれないもの、そうして行くうちに

気づかないうちの自分も汚れて闇を模索する・・・それが世の常。


だから檸檬が陽介の出した「まともな彼女募集」に魔が差して応募したのは

正解だったのかもしれない。

要するに檸檬は陽介というまともな男に這い上がれたのだ。


ロクデナシ和樹は、それからしばらくは現れなかったが、でも陽介と檸檬が

夕食に出かけたレストランに、いきなり現れた。


よほど暇なのか檸檬の後をずっとつけていたんだろう。


ロクデナシ和樹の魂胆は見え見えだった。

金には不自由しない陽介を彼に持った檸檬を介して、あわよくば金を

せびり倒そうと企んでいた。

どこまでも姑息でロクデナシ男だった。


だから陽介と自分の間にロクデナシ和樹に入ってこられることは檸檬には

一番、迷惑、やっかいなことだった。

下手すると陽介との関係にも水を差すことになりまけない。


ロクデナシ和樹は食事をとってる陽介と檸檬のテーブルにずけずけとやって

きて言った。


「どうも〜お邪魔します〜」


「うそ・・・和樹・・・こんなところまで」


「檸檬の新しい彼氏が見てみたくてさ・・・」


「檸檬・・・もしかして、この彼がロクデナシ男?」


「ロクデナシ男?」


「そう・・・ごめんね陽介・・・こんなのヤダよ」


「大丈夫、気にしないよ・・・」

「今、檸檬があなたのことを和樹って呼びましたけど、和樹さん」

「どうです、一緒に食事・・・」


「気取りやがって・・・あんた、どうせ親のスネがじってるだけの

 ボンクラ息子なんだろ?」


「ボンクラ息子だと?」


陽介は手の持っていたフォークとナイフをテーブルに置いた。

ボンクラ息子、そのセリフは陽介が一番嫌いな言葉だった。


「檸檬・・・この彼、帰ってもらっていいかな?」


「もちろんだよ・・・もう私には関係ないもん」


「あんた・・・ここで騒ぐと他のお客さんの迷惑になるから表に出よう 」


「嫌だね・・・」


「行こう」

「それとも無理やり外に引っ張り出されたいか?」


陽介の毅然とした態度にロクデナシ和樹は、たじろいだ。


「わ〜ったよ・・・出りゃいいんだろ」


「陽介・・・」


「心配いらないから・・・」


「どうしよう・・・陽介〜」


陽介とロクデナシ和樹がレストランの外に出ていこうとしたので

檸檬も、ふたりの動向が気にかかってあとを追って行った。


「陽介・・・ほんとにごめんね」


「ちゃんと決着つけるから・・・二度とあいつが檸檬に付きまとわない

ように・・・」


つづく。

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