第84話 思い出す非常識

「あっ!開いたっ!」


エリスは開いたスキルブックの中から、最近まで見かけなかったレシピを見つける。


「盲点だったわ……。」


今まで散々錬金してきたのだが、一向に人工触媒体ホムンクルスのレシピも、賢者の石学習機能媒体のレシピにも掠りもしなかった。


試行し過ぎて迷走してしまい。


そこに加えて寝不足も相まって、訳の分からないテンションに為ってっしまい。


火炎石と氷結石。


上級研磨剤に中和剤虹。


太陽草と月光草。


そこにオリハルコン鉱石と、産廃肥料と言う訳の判らない組み合わせを虚空錬金してみた。


すると。あら不思議。


賢者の石学習機能媒体とはいかないが。


ゲッター鉱石と言う原石が出来上がってしまった。


しかも、このゲッター鉱石が出来上がった事で、賢者の石学習機能媒体のレシピの1つが埋まった。


そして、レシピが埋まった事で。


どうして出来上がったかを理解する事が出来た。


「いやぁ~。まさか、作成条件が相反する物を3つ同時に合成って……。普通は思い着かないわよ……。」


火炎石と氷結石。炎と氷の相反属性。


研磨剤と中和剤。 固形物と液体。


太陽草と月光草。太陽の光で育つ物と、月の光で育つ物。


オリハルコン鉱石と産廃肥料。高級原石とゴミ。


いや、まぁ。色々と突っ込みたい気持ちは在る。


が。そこはグッと我慢する。


「こりゃ、根本から考え方を変えないといけないかも。」


今までは、いかにして役に立つ物同士を組み合わせるかを試行錯誤してきたが。


今回のように、役に立ちそうにないものまで錬金素材に為ってくると。


もう、全ての固定概念を捨て去って考えないといけない。


改めて、錬金術師アルケミストの奥深さを学びなおすエリスだった。


「あ……。」


最たる非常識が、近くに在り過ぎて。最近では見慣れ過ぎて当たり前になっていた事象を思い出す。


ルナの釜式錬金術。


非常識の塊である錬金術式。


「いやぁ~。慣れって怖いわね。」


と言いながらも。鼻歌交じりにスキルブックを考察するのだった。



*ゲッター鉱石  品質:最上級*


見る角度によって、色が変わる不思議な石。


どの角度から見ても、また見る人が違っても。同じ色に見える事は無いと言われている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る