第61話 レイジ、我が家に帰ってきました

「開通!」


エリスの声が響き渡る。


「「「おおおおおおおおお!」」」


ドワーフ達が歓喜の声を上げる。


「マジで開通させやがった……。」


呆れるレイジ。


「あ~!空気が美味しい!」


エリスが声を大にして言う。


山脈超えのトンネル。長さは実に13キロにも及ぶ。


そりゃ、空気の流れも滞り、新鮮な空気が美味しくも感じるだろう。


「こりゃ、こっち側にも宿場町か村を起こさないとな。」


周囲を見ながら言うレイジ。


「周囲を切り開いて、魔物モンスター除けの結界構成。


防御壁の構築に、仮の寝床に、警備の人選に、街道の立案……。


くっ、胃が痛くなってくるぜ。」


そう言いながらも、その表情は何処か嬉しそうだった。


それもそうだろう。


なにせ、今までは王都までの片道15日掛かるのが。


トンネルの開通によって、5~6日に短縮できるのだから。


と。その時、レイジに閃きが走った。


アベルが飛翔の絨毯に乗ってトンネルを利用すれば、王都とシグルートの街を往復するのに半日掛からないのでは?


(良し。こき使ってやろう。)


レイジのアベルへの意趣返しは、この7日後に見事に砕かれる事に為るとは誰も思ってはいなかった。



 * * *



シグルートの街に戻ってきたレイジ達は、街に入ってスグに魔道街灯の恩恵を受ける事に為る。


シグルートの街に着いたのは、既に夕刻を過ぎた頃だった。


いつもなら薄暗いシグルートの街中は、魔道街灯の照らす明かりで、かなり見通しも良くなっており。


視界の不自由なく、フォルクス邸に辿り着いた。


「父上!」


「お父様。」


「アナタ。」


「「「お帰りなさい!」」」


タイガ、セツナ、ユキナの3人が、門の前でレイジを出迎える。


「ただいま。」


タイガの頭を撫でながら言うレイジ。


「アナタ。戻って早々ですが、やる事が山積みですよ。」


ニッコリと笑顔で言うユキナだが、全然笑っている気がしない。


「判ってる。判っているが、今夜だけは休ませてくれ。」


辟易へきえきとした表情で言うレイジ。


レイジの気苦労は、まだ終わってはいない。


むしろ、これからが本番だ。


 * * *


頑張れレイジパパ! 胃に穴が空く、その日まで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る