第53話 500年前の真実

悪魔デーモン


それは、捕食した生物に擬態する。


姿形は勿論の事。捕食した生物の記憶まで完全に複製コピーする。


故に、見分けるのは不可能に近い。


500年前の魔国での出来事に、悪魔デーモン達が大きく関わっていた。


当時の魔王を含む、多くの重鎮たちは、既に悪魔デーモン達に捕食されており。


既に国家の中枢は悪魔デーモン達の手によって瓦解していた。


この時に為って、北方大陸の精霊たちも悪魔デーモンの存在に気が付いたのだが、時すでに遅く。


上位悪魔デーモン達の手によって、光の精霊、闇の精霊が悪魔デーモン側によって、存在自体を消滅させられてしまっていた。


存在自体を消されてしまうと、流石の精霊でも復活は難しく。


次の世代の精霊が産まれるまで、長い年月を掛けないといけない。


悪魔デーモン達が何処から湧き出て来るのか。


北方大陸の北側の領土だった。


湧き出る場所を特定した時には、既に悪魔デーモン達は、外の大陸に向けて進出をしようとしていた。


慌てた精霊たちは、水、風、土の精霊たちで、北方大陸を囲い込む結界を張る。


結果、結界を張り巡らせる時の弊害で、魔国の領土の10分の2近くを消滅させてしまうが。


結界を張る前に逃した悪魔デーモンの数は少数に出来た。


結界を張る時に、風、水、土の精霊は、その力を使い果たしてしまい。


永い眠りに着いている。500年を経た今でも。


残された火と樹の精霊で世界樹を作り。北方大陸全土を守護する。


その際に、光と闇の精霊の後継を産まれ易くするために、自身の力を少しづつだが分け与えていた。


その結果。本来なら、まだ産まれない筈の光と闇の精霊たちが産まれた。


アベルの中に居る、光と闇の精霊だ。


 * * *


大まかに、魔国での出来事を説明する魔王ディハルト。


「ディハルト殿。聞いても良いか?」


「どうぞ。」


悪魔デーモンとは何なんだ?」


「未だ推測の域を出ないが。其れで良いなら。」


「教えてくれ。」


「異界からの侵略者。と言った所だな。」


「異界?」


「此処とは違う世界。 いや、違う星と言うべきかな。」


「星?夜空に浮かぶ星の事か?」


「ちょっと違うな。」


そう言って、顎に手を当てて悩むディハルト。


「マジックポーチ。って在るでしょ。」


助け舟を出したのは、エルフのメル。


「マジックポーチは、実際以上の質量の物を収納可能なのは知れ渡っているよね。


なら、その収納されるのは何処なのか?


この世界とは違う空間。異空間ってのが存在する。と言うのが学者たちの間ではしたたかに広がっているの。


でも、それを証明する術がない。


何故なら、誰もマジックポーチの中に入れないから。


入った人が居ないから、マジックポーチの中が、どうなっているのかは不明。


で、今いる空間とは、別の空間が存在する。


それが、学者たちの推論。


そして、その異空間には先があって。


別の世界と繋がっている。かも知れない。


もしくは、存在する。かも知れない。


悪魔デーモン達は、その別の世界から来ているのかも。知れない。


と、言うのが学者たちの推論。」


「結局の所は、謎だらけと言う訳さ。」


メルの言葉に、ディハルトが付け足す。


「なんせ、下級と中級の悪魔デーモンどもは、擬態はするけど。


上級悪魔デーモンからの命令しか聞きやしない。


擬態中の間は、周囲に溶け込んでいるから怪しむ事も出来やしない。


全くもって、厄介極まりない連中だよ。」


「しかし、先ほどメル殿は、ジーナに擬態していた悪魔デーモンを見破っていたように見えたが?」


フォーレンハイト王が訊ねる。


「あ~、それは私の職業ジョブスキルの御蔭です。」


「差し支えなければ教えて貰っても?」


「う~ん……。まあ、直接戦闘向きじゃないから良いかな。


私の職業ジョブスキルは【真眼】。


全ての嘘と、虚偽を見抜けます。」


「嘘と虚偽?」


「はい。偽りの姿、偽りの情報。


だから、擬態している悪魔デーモン達を見る事が出来るんです。」

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