第52話 動く時代

風の精霊ジンの結界が解かれて、フォーレンハイト王がつたに絡め取られている貴族たちの処遇を言い渡す。


兵士たちに連行されて、貴族たちが謁見の間から連れ出される。


これで、終わった筈なのだが、アベルの危険察知が解かれていない。


アベル、ジン、ドライアドが、確認するように部屋の中を見渡す。


「如何なさいましたかな?」


玉座に座りなおしたフォーレンハイトが聞く。


『空気の淀みが消えていない……。』


「空気の淀み?」


ジンの言葉を聞いて、アベルが訊ねるが。


『どうやら、さっきの奴らは、オマケと言う訳か。』


『本命が残っておるようじゃの。』


アベルの言葉を無視して警戒度を上げていく。


部屋の中の空気が張り詰める。


ジンとドライアドの殺意にも近い気に当てられて、へたり込んでしまう貴族も居る。


フォーレンハイト王ですら何も言えぬまま、緊張に手を握りしめ周囲を見渡している。


瞬間。空間にヒビが入る。


『転移魔法!?』


『転移魔法!? 違う!精霊が干渉しておる!ジン!』


ドライアドの言葉と同時に、ジンが部屋全体に防護結界を張り巡らせる。


更に、部屋の中に居る貴族たちにも防護結界を掛けようとした時。


パキンッ!


「見つけたっ! そこっ!」


ヒビ割れた空間が音を立てて崩れ。その中から、女性の声と共に矢が王妃に向かって放たれていた。


矢は、フォーレンハイト王の横に佇む王妃の額に命中。


「ジーナ!」


フォーレンハイト王が王妃の名を叫ぶ。


「落ち着け! そいつは王妃じゃない!」


空間の中から、更に男性が出てくる。


頭に聳え立つ立派な角が2本。背中には蝙蝠を思わせる翼。


王妃の身体が、痙攣したかと思うと、王妃の身体は、まるでスライムのように黒い液体と為って床に残る。


「そいつらは悪魔デーモンだ。」


男性の魔族が言う。


「ならジーナは? 王妃は?」


フォーレンハイト王が声を震わせながら聞く。


悪魔デーモンは食った者の姿を模写する。残念だが……。」


『貴様は、魔族の王かえ?』


「これは、樹の精霊ドライアド様。


私は、今代の魔王。名をディハルト・フォンブラウンと申します。」


膝を着いて礼を取る魔王。


「突然の乱入の許しを。私はエルフ族。族長が娘メルと言います。」


同じく膝を着いて礼を取るメル。


その時、魔王ディハルトの服の中から、光と闇の球体が、ジンとドライアドの方に向かって飛んでいく。


『光と闇の精霊かえ。どうした?』


『おいおい。産まれたばかりかよ。』


光精霊はジンの額に、闇の精霊はドライアドの額に。


産まれたての精霊は、力も小さく言葉も話せない。


変わりに、こうして接触する事で、伝えたい事を直接伝える事が可能になる。


時間にすれば僅かに数秒。


『成る程のう。500年前に、起こった事柄に。そのような事情があったとわの。』


『魔王ディハルト。当代の精霊たちに代わって謝罪を述べよう。


済まなかった。魔族の王よ。』


精霊2人が、魔王ディハルトに向かって頭を下げる。


「いえ。その件に関しては、誰が悪いと言う事は御座いません。


全ては悪魔デーモン達の策略に乗せられてしまった故の悲劇。


討つべきは悪魔デーモン。」


『その悪魔デーモン達が、北方大陸以外の大陸で新たな火種を起こそうとしているとな?』


「はい。我が領土の悪魔デーモンたちは、この500年の間に全て討ち滅ぼしました。


精霊たちが、命を懸けて作った結界の御蔭で、悪魔デーモン達も外の大陸に逃げる事が出来なかった故にです。


こちらも、多大な犠牲をこうむってしまいましたが。」


『人族の王!フォーレンハイト!』


「はっ!」


『どうやら、人族だけの問題では無くなってしまった。


我ら精霊も協力する故に、そなたらも力を貸せ。


事の重大さは、この大陸だけでは済まぬぞ。


全ての大陸に関わる事だ。


詳しい詳細は、そこな魔族の王ディハルトに聞くと言い。


我らも、精霊達を探し出して協力を求む。


魔王ディハルト。後は任せるが良いか?』


「はっ!精霊の加護に誓って!」


魔王ディハルトの言葉を聞き終えると、ジンとドライアドの姿は消えて居なくなった。


小さな球体。闇と光の精霊は、ふよふよとアベルの方に近づいてくる。


アベルの周囲をクルクル回ると。


アベルの右手の甲の紋章に吸い込まれるように消えていった。


「どうやら、精霊たちの宿り木に選ばれたようだな。」


魔王ディハルトがアベルに向かって言う。


「宿り木?」


「産まれたばかりの精霊の力は小さい。


少しでも、成長しようと。


樹の精霊と、風の精霊の加護を受けた、お主の中で成長を促そうとしているのだろう。」


「良いのか?魔王様も、加護持ち何だろう?」


「同じ加護持ちでも、俺の場合は仮契約だ。 お主は本契約。


あと、魔王様っての辞めてくれ。ディハルトだ。」


そう言って、右手を差し出してくるディハルト。


「アベル。宜しくな。 ディハルト。」


差し出された手を握り返すアベル。


「ディハルト。 そろそろ人族の王様が痺れを切らしそうだよ。」


メルが、フォーレンハイト王を見ながら言う。


「そうだな。人族の王よ。話の場を設けて貰えぬか。


この大陸に。いや、この星に、何が起ころうとしているのか。


その話をしよう。」



 * * *


そして、物語が動き出す。


亜人族。魔族。人族。


そして精霊。


全大陸を巻き込んだ物語が。



 * * *


さて、ここ迄が、言うなればプロローグ的な流れ。


ようやく序盤が終わった所かな。


そして、作者から読者の皆様に感謝 <(_ _)>


まさか、ここまで回覧数が伸びると思っていなくて(汗)


恐らく、一番焦っているのは間違いなく作者本人です orz


書き溜めも、ここまでしか。


あと、コメントくださぁ~い(笑)


コメント見るのと返すのが楽しみなので^^


【作者は読者のコメントを待っている】うん。なんか良い感じのタイトルが出来たな(笑)


おそらく、全てのクリエイターさんに通じるものだと思います


<(_ _)>


では、この先の展開も、お楽しみください^^b

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る