第46話 王の首はスライムの核以下
樹の精霊ドライアドの言葉に、玉座に腰かけていた王が立ち上がり。
階段を下りて、アベル達の方に向かって歩を進める。
側に控えていた人物が、何かを言いかけて、一緒に着いて行こうとするが。
王は、その人物を手で制して止める。
ドライアドに口を塞がれ、身体を拘束されている貴族たちの顔見ながら。
アベル迄、残り5メートルと言った所で歩を止める。
そして、片膝を着いて精霊たちを見るが頭は下げない。
王の目は、まっすぐにドライアドを見ている。
「初めまして。精霊様方。
私は、中央大陸の西と北の領地、シュツルグを統治している人族の王。
名を、アーレス・シュツルグ・フォーレンハイト。
して。何を、そんなに怒っていらっしゃるのか?
ドライアド様の行動から察するに。
何やら、私どもの臣下が、良からぬ事を画策していたのは想像できますが。」
『ふん。フォーレンハイトと言ったな。
ふむ。確かに貴様からは悪意は感じられぬな。』
そう言って、ドライアドは拘束している貴族たちの服やポケットの中に
などの品を
『これらの品に、フォーレンハイトよ。覚えは?』
「隷属の腕輪に、隷属の首輪。
瓶の方は……。魅了の薬ですか?
宝石の類は……。封印関連の
『良かったな。人族の王様よぉ。
これが、アベルを殺そうとする物や。
俺たちを、傷けれる
扉を開く前に、この王都は消し飛んでいたぞ。』
「左様ですな。して、詫びとして、私の首でも差し出せば怒りの溜飲を下げてくださいますかな?」
『なんじゃ。人族と言うのは、ゴブリンの首を貰って喜ぶ習慣でもあるのかえ?
まだ、スライムの核を貰った方が脱臭効果があるだけ使えるわ。』
王の首。ゴブリンの首と同格扱いされた上に、スライムの核にも劣るらしい。
『人の王よ。確か、貴族と言うのは、市井に落とされるのを嫌う傾向が在ったな。』
風の精霊ジンが問う。
「はい。高位の貴族程、市井に落とされるのは、死よりも屈辱かと思われます。」
『良し。それでいこう。爵位剥奪の上に、辺境伯領にて、最前の僻地の開拓。
罪状対象は、妻および夫。そして子供くらいで許してやるか。ドライアド。良いか?』
『相変わらず甘いよの主は。』
『お前が加減を知らないだけだろう。』
『後は、こ奴らよのう。』
そう言って、封印石だけを持っていた貴族たちを目の前に連れてくる。
数は3人。
『こいつと、こいつはダメだな。色が濁りきっているし、風も寄り付かない。』
ジンが言うと、ドライアドは言われた2名を遠ざける。
『で。お前さんは、どう言った理由で封印石を?』
「えっと……。出来れば、内密に話をしたいのですが。」
ジンは、ドライアドと目配せすると。
そして、自分たちの周囲に、風を使って遮音結界を張る。
『中の声は聞こえない。これで良いか。』
遮音結界の中には、フォーレンハイト王。レイジ辺境伯。貴族の青年。
そして、アベルの4人だけが残された。
「有難う御座います。」
拘束から解放されて、膝を着いて礼を取る貴族の青年。
『して、何を話す?』
「はい。実は……。」
そう言って、語りだす、この貴族の名前は、マクレイド子爵家嫡男。
スレイン・マクレイド。
スレインの話では、精霊は時折に自分で封印を頼む事が在ると言う事。
その時の為に、用意するのが封印石。
封印する期間は、精霊が自分で決める事が出来るらしく。
数年から数百年単位。
何故、任意で封印されるのか。
それは、精霊が人と関わり過ぎて、精霊自身が穢れを身に纏い着いたのを落とすためだと言われている。
『ほう。良く調べたな。』
「私としても、半信半疑でしたので。確信は在りませんでした。」
『人族の王フォーレンハイト。』
唐突に、ジンがフォーレンハイト王の名前を呼ぶ。
「はっ。」
『こいつ。 スレインをレイジの所に寄越せ。』
「マクレイド子爵家嫡男。スレイン・マクレイド。
精霊様は、お前を御所望だが、お主に反論は?」
「御座いません。」
「なら、マクレイン子爵家には、後ほど正式に通達を出しておこう。」
「はっ。」
「これで宜しいかな?」
『うむ。そうだな。代償を払わぬとな。
アベル。何か良い案を言ってみろ。』
「俺がですか?」
『そうだ。被害が届かなかっただけで。お前も、被害者に為り得たかもしれん。』
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