第41話 お前に決めた!

「フォルスト辺境伯。」


「なんだ?コーウェル神父。」


「辺境伯は、アベルを、このまま囲い続けるおつもりか?」


「それな……。多分、無理だわ。」


「でしょうな。」


2人して、大きな溜め息をつく。


「なぜ無理なんでしょうか?」


アントワネリーが聞く。


「お前ら。既に話してるだろう?精霊と会ったことを。」


レイジの言葉に、アベル以外の全員が頷く。


「でも、酒に酔った勢いの、与太話としか受け取ってもらえませんでしたよ。」


ビートの言葉に頷く。


「信憑性の問題じゃないんだわ。【そう言う話】が出た。


その時点で、噂ってのは広がって行くんだ。


だろ、神父様。」


「ええ、大なり小なり、噂は噂を呼び。広がって行きます。


伝達速度の、早い遅いの違いはあるかもしれませんがね。」


「数日なのか。数週間なのか。数年後なのかは特定はできないが。


絶対に、アベルに。もしくは関係者に辿り着きやがる。


俺の予想は、早くて3ヵ月ってみてるが。


神父さんの予想は?」


「私も、それくらいかと。遅くても半年以内には接触があるでしょうね。」


「俺も同じ予想だ。 って事でだ。


アベル。 国王に会いに行くぞ。」


「え?」


驚きの言葉しか出ないアベル。


「フォルスト辺境伯。


いきなり国王に謁見は難しいのでは?」


コーウェル神父が言うと。


「流石に、何の前触れも無くは無理だな。


俺に考えがある。


確か、絨毯には4人乗れるんだな?」


「え。あ、はい。」


「別荘から、1時間ほどだと……。


王都までは1日。山を越えて、途中で1泊して……。


2日在れば余裕で着けるな。


トマス!」


「はい。ここに。」


「手紙を書く。早馬を用意しろ。」


「畏まりました。」


「手紙が届くのに。約10日として……。」


ブツブツと呟きながら、頭の中で計算するレイジ。


「30日後だな。


アベル。30日後に王都に向かう準備をしておけ。」


「え?」


「依頼だ。拒否するなら命令に切り替える。良いな。


これから先、平和に暮らしていくなら絶対に付き添え。


それと、コーウェル神父にも同行して貰う。


後1人は……。」


レイジの言葉に、全員が目を逸らす。


そりゃそうだろう。誰が好き好んで、貴族の頂点の国王になど会いたいと思う物か。


「精霊様に会った方が良いでしょうな。」


コーウェル神父の一言。


「よし。ビート。お前に決めた。」


レイジの一言で、ビートが泣きそうな表情に為っていた。


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