第24話 妖精と仲良くなりました

あれから、1時間以上かけて。中層の奥まで辿り着こうとする所まで来た。


さすがに、これ以上はベースキャンプに戻る時間を考えると、引き返すのが妥当だと言う距離だ。


「そろそろ、引き返すか?」


「そうだな。安全性を考慮するなら。」


ベルンの言葉に、ビートも賛同する。


「まだ、明日1日は探索できる。


最悪、クエスト失敗でも仕方がない。


エルダートレント何て、そうそう出会えるわけでもないし。」


ビートが言う。


「そうですね。依頼内容も、クエスト失敗でもペナルティーは無しと書かれていましたし。」


ヒルトが言う。


意見も、一致したし。 今日の所は、ベースキャンプに戻る事になった。



 * * * *



ベースキャンプに戻ると、アベルは早速晩御飯の支度にとりかかる。


適当な石で作った焼き場に網を載せて。 キノコ類を焼く。


ちゃんと、マジックポーチで持ってきた、食用のキノコだけを焼いているので大丈夫。


野山で取れるキノコなんて、鑑定スキルを持っているか。余程の知識が無いと危なくて仕方がない。


卵を溶いて、炊きあがった御飯に混ぜ合わせてフライパンで炒める。


塩と胡椒を入れて、最後に醤油で味を調える。


焼いたキノコにも、醤油を掛けると。


醤油の焦げる良い匂いが、暴力的なまでに鼻腔をくすぐる。


「その、ショウユだっけ? 食欲をそそられるなぁ~。」


「ほんと。 匂いだけで、お腹の虫が鳴っちゃうよ。」


「東方大陸の調味料です。 東方大陸では、一般的な調味料らしいですよ。」


ベルンと、シャノンの言葉に答えるアベル。


「こっちでは、売ってないのか?」


「これ、ルナとエリスが錬金で作ったんですよ。」


(深夜テンションの入った状態でとは言わない。)


「どんだけ、万能なんだよ。錬金術って。」


ベルンが言うと。


「言うほど万能でもありませんよ。


色々、作ってますけど。 失敗してる方が多いですので。


成功しても、微妙過ぎるのが多いのも問題の一つですね。


どうぞ。出来上がりました。


味噌汁は、苦手でしたら。 普通のスープもありますので言ってくださいね。」


「「「「食材に感謝を。 いただきます。」」」」


焼いたキノコを皿に乗せて、少し離れた場所の岩の上に置くアベル。


「アベル?」


シャノンが、アベルの行動に問うと。


「森の中から着いて来てましたので。」


一瞬考えるシャノンだが。何の事だか判らないが、害意は無いとの事なので食事に専念する。


岩の上に置かれた皿の場所には、いつの間にか、手の平サイズの小さな妖精たちが集まって焼けたキノコを食べていた。


「これ!おいしい!」


「うん!おいしい!」


「もっと欲しい!」


妖精たちが騒ぎ出す。


3人とも、見た目も声質も、全く一緒。


違うのは被っている帽子の色だけ。


「お代わりを出そうか?」


大きくなり過ぎない程度の声で、アベルが妖精たちに問う。


「「「ほしい!」」」


「そっちに持って行こうか? それとも、こっちに来るかい?」


「どうする?」


「行く?」


「嫌な感じはしない。」


3人の妖精たちは、何やら相談をしていたが。


3人で、皿を持って、アベルの横に飛んでいく。


「お皿を持ってきてくれて有難うね。


はい。お代わりのキノコ。と焼き御飯だよ。


良かったら食べてね。」


にこりと笑顔で言うアベル。


「有り難う。」


「美味しい!」


「美味しい!」


「ずるい!ぼくも!」


ハグハグと小さな手を動かして、焼き御飯とキノコを頬張る妖精たち。


その姿を見て、ビート達4人も頬を緩ませていた。


「いつから気づいてた?」


「昼食の時のサンドイッチを食べた頃からです。


ずっと、凝視されてたので、視線に気が付きました。


専門職ほどではないけど、斥候スカウトスキルは持ってますので。」


「成る程な。それで、魔物モンスターとの遭遇率が高かったのか。」


ビートの言葉に、視線を外すアベル。


「別に攻めてはいない。が。一言くらいは欲しかったがな。」


「明日からは、そうします。」


そう言いながら、別の皿に水を入れて、妖精たちの方に差し出す。


妖精たちは、水を手ですくい口に入れて行く。


「ありがとう!」


「おいしかった!」


「ごちそうさま!」


妖精たちが礼を述べる。


「どう致しまして。 満足した?」


「うん!」


「君たちに、聞きたいことが或るんだけど。いいかな?」


「いいよぉ~。」


「妖精の粉ってのを探しているんだけど。知ってるかい?」


三人は顔を合わせると、アベル達から少し離れてゴニョゴニョ話し出す。


暫くして戻ってくる妖精たち。


「妖精の粉。知ってるよ。」


「出来たら、少し分けてくれると嬉しいんだけど。ダメかな?」


「条件がある!」


「僕に、出来る事なら。」


「お兄さんについていく!」


「着いて行く!」


「美味しいもの、もっと沢山食べたい!」


「そう。じゃあ、自己紹介だね。


僕の名前はアベル。 君たちの名前は?」


「ミト!」


赤の帽子の妖精が言う。


「コト!」


青の帽子の妖精。


「リト!」


黄の帽子の妖精。


「ミト。コト。リト。だね。 宜しくね。」


人差し指を差し出して言うアベル。


「「「アベル!よろしく~!」」」


三人の妖精たちが、差し出されたアベルの人差し指を握り返しながら言う。

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