第22話 進化種と戦闘しました

「ミスリルシルクスパイダー。が5匹か。」


ビートが小声で言う。


妖精の森の中域に入って30分。


「珍しですね。スパイダー系の魔物モンスターが群れているなんて。」


アベルが言う。


★ミスリルシルクスパイダー:蜘蛛系魔物モンスター

 シルクスパイダーの上位種。体長は1メートル前後。

糸の強度は高いが、本体の強度は、せいぜいが鉄の硬度くらいで、完全に名前負けしている。



「餌が豊富? いや……。上位種が居るのか?」


「いや。もっと質の悪いのが居た。」


そう言って、ヒルトが奥の方を指さす。


「ちょ。アラクネだよ。」


危うく、声量を上げそうになったが、何とか押し殺してシャノンが言う。


★アラクネ:蜘蛛系魔物モンスター進化種★

 下半身は蜘蛛の姿で、上半身は女性の姿をした魔物モンスター

体長:3メートル前後。体高:2メートル前後。

 アラクネの糸は、鋼鉄並みに硬く、粘着質も高い。

糸は火属性効果の付いた武器で切るか、火属性魔法で焼くしか対処法が一般的。(水属性で凍らせて割る事も可能。)



「ちっ。上位種どころか、進化種かよ。どうする?」


「う~む……。」


「提案が。」


撤退か。交戦か。考えるビートにアベルが言う。


「交戦するなら。ベルンに火炎剣を貸します。


それと、右側のミスリルシルクスパイダー2匹は、俺が責任もって仕留めて見せます。」


そう言って、火炎剣をベルンに渡して、マジックポーチから弓を取り出すアベル。


「弓も使えるのか?」


「はい。」


「それも、ルナの錬金でか?」


「はい。」


「効果は?」


「聞きたいですか?」


「驚いて声が出そうなんで終わってからで……。」


アベルと、ベルンの会話を聞いてて、他の3人は呆れかえる。


「左2匹は。燃えカスにしちゃうけど。」


シャノンが言うと。


「勿体ないけど。安全の方が大事ですから。」


「残りの1体は、俺が相手するが。


ベルン。 アラクネ相手に行けそうか?」


「加勢に来るまでは持たせて見せるさ。」


倒してやると言わない辺りは、さすがは熟練の剣士ソードマン


自分の実力と、相手の力量を見誤っては居ない。


「OKだ。


カウントを取るぞ。 ゼロで突っ込む。


5。」 


シャノンが魔法の詠唱に入る。


「4。」


アベルが、弓を構えて、弦に矢をあてがい引いて狙いを定める。



3。 2。 1。


ゼロッ!」


爆炎フレア!」


「シッ!」


合図と同時に、シャノンの魔法と、アベルの矢が放たれ。


ビートとベルンが突っ込んでいく。


アベルの矢は、光の軌跡を残しながら、ミスリルシルクスパイダーの眼球部分から頭を貫き、木に縫い付けて息の根を止める。


シャノンの上級魔法も、ミスリルシルクスパイダー2匹を巻き込みながら灰燼へと帰す。


更に、アベルは矢を放つと同時に、矢筒から矢を抜き取り、弦にあてがい続けざまに矢を放つ。


これまた奇麗に、ミスリルシルクスパイダーの眼球を貫いて頭部に突き刺さり絶命させる。


ビートの方も、上手い具合に、ミスリルシルクスパイダーをアラクネの方から引き離して止めを刺した所だ。



* 視点:ベルン *


(ぐぉっ!)


アベルから、火炎剣を借りたベルン。


完全に、甘く見過ぎていた。


アラクネの強さではない。


火炎剣の付与効果をだ。


牽制で振った剣筋が、アラクネの前足を軽く切断して。


突っ込んだ、自身の勢いが良すぎて、一気にアラクネの背後に。


振り返り様に、剣を振りながら攻撃したら。


後ろ足2本と、糸を排出する部分を切断。


自身のスキル身体能力上昇に加えて。


火炎剣の付与効果。筋力上昇20%と、速度上昇8%。


魔物モンスター特攻効果と、火炎属性の付与。


危うく、武器の性能に振り回される寸前だった。


(ヤバすぎだろっ!)


内心で愚痴るも、ベルンの表情はニヤけていた。


「GYAIIIIII!!」


アラクネが吠えながら、ベルンの方に頭部を向けながら、残った前足で攻撃をする。


ベルンは、アラクネの攻撃を剣で受け止める。


つもりだったのだが。切れ味が良すぎて、アラクネの前足を切断。


その隙を逃さずに。


五月雨さみだれっ!」


剣士ソードマンの連撃スキルを叩きこむ。


スキル発動で、技後硬直が発生するが。 その威力は絶大。


「GYA……。」


断末魔の声すら上げる事も出来ずに、アラクネの頭部が、小間切れになって地に落ちて行く。


戦闘開始から、僅かに90秒。


終わってみれば圧勝も良い所だった。

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