【完結】ヴォイドリーパーズ:隠れた戦争の支配者
湊 マチ
第1話 異世界への招かれざる客
目の前が白く染まった瞬間、体がふわりと宙に浮く感覚がした。気づけば、俺は見知らぬ場所に立っていた。
「ここは……どこだ?」
声を上げてみたが、返事はない。周りを見渡すと、広がっているのは緑豊かな森と澄んだ青空。まるで絵に描いたような美しい風景が広がっている。しかし、何かが違う。鳥のさえずりや風の音が耳に届くはずなのに、それがない。無音の世界に立っているかのようだった。
「おいおい、何だこれ?夢か?」
額に手を当ててみるが、頭痛もなければ、記憶が曖昧なわけでもない。確かにさっきまで教室にいたはずだ。次の瞬間、地面が揺れるような感覚があり、足元が少しずつ崩れていく。
「何だよ、これ……」
足元が消え、俺は再び意識を失った。
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目を開けると、今度は大きな木々に囲まれていた。体を起こすと、目の前には一人の女性が立っていた。銀色の髪が風に揺れ、冷たい目がこちらを見つめている。
「ようやく目を覚ましたか。異世界の来訪者よ。」
彼女は、冷淡な口調でそう言った。
「異世界……って?」
「そうだ、ここはお前が知っている世界とは異なる場所、リグレアだ。お前はここに、ある目的を持って召喚された。」
「召喚?俺が?」
俺は頭を抱えた。意味がわからない。何がどうなっているのか、何も理解できない。
「どうして俺が……」
「その答えは、自分で見つけるんだな。」
彼女は一歩近づき、俺の目をじっと見つめた。
「お前の名は?」
「羽瀬川健吾……ただの高校生だ。」
「ただの、ね……」彼女は微かに笑った。「その目には隠されたものを見抜く力が宿っている。お前が召喚されたのは、それが理由だ。」
「隠されたものを見抜く力?そんな力、俺は……」
自分の手を見つめるが、普通の手だ。何も特別なことは感じられない。
「これから先、その力を使うことになるだろう。だが、今はまだ覚醒していない。お前が真実を求める時、その力は目覚める。」
「……真実?」
「そうだ。リグレアの裏には、隠された戦争が進行している。表向きは平和だが、その平和は仮初めのものに過ぎない。お前がここにいるのは、その真実を暴き、リグレアを救うためだ。」
俺は言葉を失った。何も知らない俺が、この異世界を救う?そんな馬鹿げた話があるのか?しかし、彼女の目は真剣そのもので、冗談を言っているわけではないことは明らかだった。
「お前には選択肢がある。ここで逃げるか、それとも真実を求めて戦うか……決めるのはお前だ。」
彼女の言葉に、俺は迷いながらも頷いた。
「逃げるつもりはない……けど、何をすればいいのかもわからない。」
「そのうちわかるさ。だが、まずは自分の力を信じろ。お前にはそれができる。」
彼女がそう言い終わると、彼女の背後から不穏な気配が感じられた。突然、影のような存在が姿を現し、彼女を取り囲む。
「まずは、これが最初の試練だな。」
彼女は冷静に言い放ち、俺の方を振り返った。
「羽瀬川健吾、ここからが本番だ。」
俺は自分の手を握りしめ、決意を新たにした。この異世界で何が待っているのか、それを知るために、俺は戦うしかないのだ。
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