雪の中で鳴り響く鈴の音

みみっく

第1話 仲良しな幼馴染の女の子

 リオは、寒すぎて布団から出られないでい た。鼻もひんやりと冷たくて、顔まですっぽり 布団にくるまった。

 外では楽しそうに鳴く、鳥の声が聞こえてくる。


「寒すぎる〜。雪降ってるよね、この寒さ……」


 この地域は、秋の気候と冬の気候を行ったり来たりしている。こんな寒い場所に住んでるに も関わらず、リオは寒いのが苦手だった。


 早く支度をしなきゃ…… 学校に遅れちゃう。


 毎朝、友達のミユカちゃんが学校へ登校するのに迎えに来てくれている。


 寒さを我慢して布団から出ると、部屋の中でも息が白く広がった。


「わぁ…… 息が白い…… やっぱりダメ……」


 布団に再び潜り込み、体を縮こまらせてた。


 外には、この寒さの中で待っているミユカちゃんがいるはず。


 早く起きないと、風邪をひいてしまう...... そう思って意を決して布団から出た。


「寒い〜」


 冷たい床に足を下ろして、素早く着替えようとクローゼットを開いた。眠たさも寒さによって消えていく。


 毎日のことで手慣れた手つきで、制服に腕を通した。

 ボタンをかけながら、階段を降りていく。コートとマフラーを身につけて、家族に声をかけ て外に出た。


「ミユカちゃん、お待たせ! 寒すぎる〜!」


 寒さのあまり、手に温かい息をかけた。


「ホントだよ〜もぉ。待たせ過ぎじゃないの?」


 ユミカちゃんが、私の頬を両手で触るとヒンヤリとした手で一気に目が覚めて全身に鳥肌が立った。


「ひゃぁっ。冷たいっ! やめて~」

「誰のせいよぉー。リオのほっぺ、あったか~い……」


 ユミカちゃんが嬉しそうな表情で触ってきた。うぅ~ん…… 冷たいけど我慢しなきゃだよね…… 私のせいだし。


「もう良いでしょ? ねぇ…… ユミカちゃん…… 冷たいよぉー」

「もうちょっとだけ……」


 今度は…… 私のほっぺをぷにぷにと触りだした。


「何してるのー? 遊んでない?」

「だって…… リオのほっぺ、柔らかくて気持ち良いから」

「もぉ。それ遊んでるよねぇ……」

「遊んでるのかな? わかんないけど気持ち良いし温かい……」


 もぉ…… ユミカちゃんここ玄関前だよ…… 友達や近所の人に見られちゃうじゃないの。


 リオは、辺りをキョロキョロ見て確認をする。足跡のない辺り一面の銀世界が広がっていた。


(ふぅ〜、誰も居なくてよかったぁ)


 リオは、安堵のため息を漏らした。


「おっはよ〜! いつもさながら、仲良しだねえ」


 そう思っている矢先に、クラスメイトの子に挨拶をされてしまった。確認した時に居なかっ たはずなのに、声をかけられて飛び跳ねるよう に驚いた。


(さっきまでいなかったじゃん!)


 見られていたことの恥ずかしさで、思わず頬を染める。


 ユミカちゃんは、そんなリオの顔を見てイタズラを企む笑みを浮かべた。

 近くにいると、ユミカちゃんに何されるか分からないと思い距離を取る。


「あっ! リオ逃げたっ!待ってよーっ! 逃さないからねー」


 そう言うとユミカちゃんが、後ろから抱きしめてきた。もぉ…… 人が見てるのにお構いなし何だからぁ。


「リオちゃん捕まえたっ♪」


 ユミカちゃんが、甘えた表情と声を出して甘えてきたので……恥ずかしくなった。


「ユミカちゃん…… 人が見てるよっ」

「うふふ…… そんな事、気にしてるのぉ?」

「気にするでしょ……」

「仲良しにしか見られないでしょ? 気にしすぎじゃないかなぁ」


 ユミカちゃんは、周りを気にする様子はなく私を抱きしめたまま頬を赤くして嬉しそうな表情をしていた。もぉ…… いつもはシッカリした子なのに甘えてくるとデレデレしちゃって周りを気にしないんだよねぇ……。


「こういうのはさぁ…… 二人だけの時にしよ? ね?」


ユミカちゃんに小声で伝えた。


「だから気にしすぎだってー」


(気にしすぎじゃなくて、ユミカちゃんが気にしなかさすぎなのに!)



 こんなことを言い合っていると学校に本当に遅刻をしてしまうので、心の中で言うだけに留めた。口には出さないけど、私の気持ちには気づいて欲しくて、頬をぷくりと膨らませた。



 ユミカちゃんは、そんな私を見て笑っている。絶対分かってくれていない笑い方だ。リオは顔をぷいっとそらして、学校のある方へ足を進めた。ケラケラと笑っているユミカちゃんに、声をかけた。


 「早く行かないと、遅刻しちゃうよ!」


 

 「ごめん、ごめーん!」


 歩き出したリオのそばに、明るい足音を響かせて駆け寄った。


 リオは、寒くて手をスリスリと合わせている。そんなリオの手を隣から両手で包み込んだ。先ほどまでの冷たい手ではなくて、リオの頬で温まった手だった。


「手を繋いでいく? そうしたら、温かいと思うよ〜」


 “繋いでいく?” と聞いてきた割に、もうすでに手は繋がれている。でも、繋いでない手よりも温かいのでこのままでも…… と少し思ってしまう。


 学校の方向へ向かっているだけあって、同じ制服を着た子達が歩いている。その子達を見て、やっぱり見られるのは恥ずかしいと感じはじめた。


「や、やっぱり! 恥ずかしいよ!」


 学校に着くと友達の目もあるのでユミカちゃんも手を離したと思ったら腕を組んで嬉しそうに引っ張られて教室に向かった。

 グイグイと引っ張られて、教室へ向かう。


「ほらっ、早くっ早くっ!」


 教室に腕を組みながら入りお互いの席にカバンを置くと、直ぐにユミカちゃんが笑顔で近くに寄ってきた。


「忘れ物ない? リオ忘れっぽいからなー」


 そう言いつつ隣の席に座ってきた。まぁ…… 私は実際に忘れ物が多いし言い返せないなぁ。


「多分ないと思う…… なにかあったっけ?」

「えーとー今日は、調理実習あるよ? エプロン持ってきた?」

「え? あ…… 忘れた……」

「んふふふ…… そういうと思ってリオの分も持ってきたよ」


 優しい! ステキ! ユミカちゃん最高っ! 思わずユミカちゃんを抱きしめると、頬を赤くさせて慌てた様子になった。普段は、私から抱きしめる事は殆んど無い。


「ありがとっ♪ ユミカちゃん助かるよー」

「え、あ…… うん。良いって…… その… くっつき過ぎじゃないかなぁ……」

「え? いつもユミカちゃんが抱きしめてるのと同じだけど? 照れてるのー?」


 抱きしめていると、ユミカちゃんがモジモジして恥ずかしそうに逃れようとしてきた。


「そんな事ないし…… えっと…… 授業始まるし」

「まだ10分も残ってるよ? うふふ…… 逃さないよぉ♪」


 私がふざけて言うとユミカちゃんが、嬉しそうに振り向いて目が合うと恥ずかしそうに目を逸らした。え? なに? その…… 反応、可愛いドキってしちゃった。


「……今日は、抱きしめなくて良いの?」

「リオが恥ずかしいって言うでしょ! それに抱きしめられてるし十分だよ」


 え? なによこの反応は? 今までに無い反応だよね?


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