第89話:薬草の苗を大量に持ってくる

 という事でそんな怒涛の一日が過ぎて二日後の朝。


 今日の俺は大きなリュックを背負いながら孤児院へとやって来た。


「あ、お兄ちゃんだ! こんにちは!」

「こんにちは! お兄ちゃんー!」

「こんにちは。今日も元気だねカレン。それにクルスも元気いっぱいだな」


 孤児院にやって来ると、庭先で遊んでたカレン達が俺の方に駆け寄ってきて元気よく挨拶をしてきてくれた。


 一昨日はカレンの協力のおかげで孤児院の子供達と沢山喋ったり遊んだりする事が出来たので、俺は子供達とすぐに仲良くなる事が出来た。


 もちろんまだ全員とは完全には打ち解けられてはいないので、これからも毎日孤児院に来て子供達と沢山遊んでいこうと思う。


「うん、今日も元気いっぱいだよ! って、あれ? お兄ちゃんのその大きなリュックは何なのかな?」

「凄く大きな鞄だね! 何が入ってるの??」

「これは後でのお楽しみだよ。後でわかると思うからそれまで楽しみにしててくれ」

「楽しい物が入ってるって事!? うん、わかった!」

「それじゃあ楽しみにしてるよ!」

「お兄ちゃんこんにちはー! 今日も遊ぼう遊ぼう! 一緒にサッカーしよう!」

「おっ、こんにちは。イツカ。もちろん良いよ。だけどその前にアーシャと話したい事があるから、ちょっとだけ待っててくれるか?」

「うん、わかった! それじゃあアーシャお姉ちゃんとの話が終わるまでに、僕達は庭の草むしりしてるね!」

「あ、私もやるー!」

「僕も僕もー!」

「それは助かるよ! ありがとう皆。それじゃあ俺はアーシャと話してくるから、また後でね」

「うん!」

「またね!」


 という事で俺は子供達と別れて孤児院の建物の中へと入った。そしてそのまますぐにアーシャのいる院長室へと向かった。


―― コンコン……


『はい?』

「俺だよ。セラスだよ」

『あ、セラス君! 入って大丈夫だよ!』

「あぁ。ありがとう。それじゃあ……」


―― ガチャ……


「お邪魔するよ。アーシャ」

「うん、いらっしゃい。セラス君。って、わわ! 大きな荷物だね? 何が入ってるのかな?」

「あぁ、まぁ後で教えるよ。それにしても……アーシャの目の下のクマがまた大きくなってないか? ちゃんと眠れてるのか?」


 アーシャの事を見ると目の下のクマがまた大きくなっている気がした。流石にアーシャの事も心配になってくるな。


「う、うん。ちょっとだけ寝不足にはなってるかな。最近は魔物がどんどんと増えてるから……だからここ最近は孤児院の仕事が終わった後で教会に行って祈りを捧げたりしてるんだ。だから最近は深夜まで仕事が立て込んでてね……」

「そうか。それは大変だな。俺が手伝える事があるなら何でもやるからいつでも言ってくれて良いからね?」

「うん。そう言ってくれてありがとう。というか毎日孤児院に来て子供達と遊んでくれてるだけでも十分助かってるよ。いつも本当にありがとう。セラス君」

「いやいや。これくらい全然大丈夫だよ。俺も毎日楽しく遊んでるしさ。それにしても孤児院で暮らしてる子供達は皆元気で明るくて良い子達ばかりだよね」

「うん。両親を亡くして悲しがらないように、院長先生が皆の事を愛情持って育ててきてくれたからね。だから皆明るく元気に育ってくれてるんだよ」

「そっか。アーシャ達の話を聞いてると院長先生は本当に凄く優しい人格者だったんだろうね。早く院長先生が元気になるように祈ってるよ」

「うん。ありがとうセラス君。本当に早く元気になって欲しいな……」


 アーシャは暗い表情になりながらそう呟いていった。俺としては未来の事がわかっているので、何とも言えない気持ちになったんだけど……それでも俺は院長先生が無事に帰ってこられるよう祈る事にした。


「……あ、そうだ。それで? セラス君が担いでるその鞄には何が入ってるのかな?」

「あぁ。そうだった。この二日間で荒れ放題だった庭もだいぶ手直しが出来たから、そろそろ薬草を植えてみようと思うんだ。という事で……はい、これ。薬草の苗だよ」

「わわっ! こんなに沢山の苗を持ってきてくれたの!? も、もしかしてこれって……セラス君が森の中に入って採取してくれたのかな?」

「あぁ、そうだよ」


 俺は昨日の夜に森の中に入って薬草の苗をひたすらに採取してきたんだ。この大量の苗を庭の土に植えていけば後は勝手に育っていくはずだ。


「ほ、本当に!? こ、こんなにも沢山の苗を探すなんて凄く大変だったでしょ? う、うぅ……セラス君には感謝してもしきれないよ……」

「いやいや。そんなの全然気にしないで大丈夫だよ。という事でこの薬草の苗を後で孤児院の庭に植えていっても良いかな?」

「うん、もちろんだよ! それじゃあ後で皆で集まって薬草の苗を植えて行こうね!」

「あぁ、わかった。それと今日はもう一つお土産があるんだ。えっと……はい、これ」


―― ドサッ!


「え……って、こ、これって!? ワ、ワイバーンのお肉じゃないの!? こ、こんな高級食材をどうしたの??」

「昨日の夜に森の中で薬草の苗を探してたら急にワイバーンが襲ってきたんだ。だからそれを返り討ちにして手に入れた肉だよ。ワイバーンの肉は栄養がたっぷりあるし、子供達にも良いんじゃないかと思ってお土産に持ってきたんだ」


 俺がアーシャに差し出したのはお土産とはワイバーンの肉だった。栄養がとても豊富で非常に美味しいと言われている高級食材の一種だ。アルフォンス領に居た頃はクソ親父が毎日食べてた気がするな。


「え……って、えぇっ!? ワイバーンって強い飛竜種モンスターだし、ここ最近はモンスターが凶暴化してるって話も聞いてるよ!? そ、それなのにセラス君は凶暴化したワイバーンを倒しちゃうだなんて……やっぱりセラス君って凄い男の子なんだね!」

「はは、そうだね。まぁ意外かもしれないけど実は俺って結構強い冒険者なんだ。そんな訳で今日はせっかくだからこのワイバーンの肉を使って子供達に晩御飯を振舞いたいって思ってるんだ。という事で今日の晩御飯は俺が作っても良いかな?」

「えっ? セラス君が子供達のために料理を? そ、それはもちろん良いけど……でもセラス君って料理も出来るの?」

「うん。一人暮らしもそこそこ長かったから料理はそれなりに得意だよ。だから皆のためにも凄く美味しいご飯を作ってあげるよ」

「なるほど。うん、それは凄く嬉しい話だよ! それじゃあ是非ともセラス君の手料理を子供達に振舞ってあげて欲しいな! きっと子供達も喜んでくれるはずだよ!」

「うん。わかった。でも俺の手料理を振舞う相手は子供達だけじゃなくて、アーシャもちゃんと入ってるからね?」

「え? わ、私も?」

「そうだよ。俺は子供達のためだけじゃなくて、アーシャのためにも美味しい料理を作ってあげたいって思ってるんだからさ。だからアーシャも今日の晩御飯を楽しみにしててよ?」

「あ……う、うん。ありがとうセラス君。ふふ、すっごく嬉しい。それじゃあ楽しみにしてるね」


 俺がそう言うとアーシャは少し顔を赤くしながらも嬉しそうに笑みを浮かべていってくれた。

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