第82話:決着

 巨大な爆発が発生し、辺り一面に火の海が広がっていった後……。


「ぐ、ぐぁっ……ぐ、ぐるじ……い、いぎが……できな……!」


 爆発と爆炎によってズタボロとなったアンネリーゼが地面をのたうち回っていた。全身に酷い傷を負っただけでなく、臓器にも爆炎によって大ダメージを負っているようだ。


「「ぐ、ぐぎゃ……ぐぐぎゃあ……あ……」」


 そして巣穴にいた数多くの魔物達も今の巨大爆発によってほぼ全てが倒されてしまった。生き残ってる魔物はもう手で数えられるくらいしか存在していない。


 つまりそれ程までに恐ろしい巨大爆発が起きたという事だ。まさに死屍累々といった様相を呈している。


 そしてそんな巨大爆発を引き起こした張本人はというと……。


「……はは、辛そうだなぁ……アンネリーゼ?」

「……ぐ……あ……え……?」


 そんな巨大爆発を引き起こした張本人の俺は立ったまま不敵に笑いながらアンネリーゼにそう言っていった。


「……って……え……? な、なん……で……? い、きてる……の……よ……?」


 するとアンネリーゼは俺の立っている姿を見て驚愕とした表情を浮かべてきた。まぁでもそんな顔をするのも当たり前だよな。


「はは、そりゃあ魔族のお前が耐えられない爆発と爆炎を人間の俺が耐えられるなんておかしいよな。でも俺さぁ……ガキの頃からずっとクソ親父から爆発魔術やら業火魔術やらを身体に浴び続けて生きてきたんだよ。だからさ……こんなチンケな爆発や爆炎如き……全然痛くねぇんだよ!」

「なっ……!? そ、そんな馬鹿な話があるかよ……脆弱な人間如きが……こんな威力の爆発に耐える事が出来るなんて……ば、化物……じゃんか……」

「あはは。そりゃどうも。化物のテメェに化物呼ばわりされるなんて光栄だよ」


 アンネリーゼの言葉を聞いて俺は笑いながらそう返事を返していった。


 もちろん俺だってこんな大きな爆発と爆炎をモロに食らってピンピンとしてるわけではない。ちゃんとダメージは入っている。


 でも俺はクソ親父に十年以上毎日のように火属性の魔術を身体に叩きつけられて育ってきた事で、俺の火属性の耐性だけは異常に高い事になっているんだ。


 そして火属性だけ異常な耐性を持ってたからこそ出来たのが今回の作戦だったというわけだ。今まで味わってきた地獄の魔術訓練がこんな所で役立つとは思わなかったな。


「はは、だけどアンネリーゼも至近距離で爆発を受けたのにちゃんと生き残ってるのは凄いよな。それにペットの魔物達も生き残りがいるのも凄いな。まぁ生き残ってる魔物はほんの少しだけのようだけど……って、あれ?」

「グ、グルル……グ、グギャア……」

「グギャ……グギャアア……」

「グ、グギャ……グギャギャ……」


 俺はそう言いながら巣穴の中を見渡していってみると、何故か生き残っていた魔物達が一斉にうめき声を上げながら俺達の方に近づいてきた。いや、これは俺達というよりもこれは……。


「あぁ、なるほど。そういう事か」

「う……あ……? な、に……よ……?」

「あぁ。そういえばここにいる魔物達ってさ……人間の女を使って大量に繁殖をさせてたんだよな?」

「えっ……? な、んで……アンタがそのことを……知ってるのよ……?」

「はは、まぁ別に俺がそんな事を知っててもいいじゃん。という事はつまりさ……ここにいる魔物達は皆オスって事だよな? 人間の女を利用して魔物を繁殖させてたんだからそうなるよな?」


 俺は笑みを浮かべながらアンネリーゼにそう聞いていった。


「そ、れは……まぁ……ア、ンタの……いう通りだけど……」

「あぁ、やっぱりそうか。それじゃあこれは豆知識なんだけどさ、動物の本能として、死にかけてるオスってのは種を残そうとする習性があるんだってさ。だからここにいる生き残った魔物達は今必死になって自分達の種を残そうとしてるんだ。それでさ……今ここにいる孕ませる事が出来る“メス”ってさ……お前だけだよな?」

「え……? あ、そ、そんな……それじゃあ……あの子達がこっちに来てるのって……?」

「あぁ、そうだよ。死にかけのアイツらは子孫を残すためにも……お前の事を全力で孕ませようとしに向かって来てるって事だよ」

「そ、んな……!?」


 俺がそう言うとアンネリーゼはガタガタと震えだしていった。そんなにも酷く怯えてる理由を俺はバッドエンドを見たから知っている。


 この巣穴にいる魔物達は人間の女を利用して繁殖をしているんだ。そして繁殖用の女達に逃げられないようにするためにも、ここにいる魔物達は女達に種付けをしながらも常に身体の自由を奪う弱体魔術デバフを女達にずっとかけ続けていくんだ。


 だからこの巣穴に住んでる魔物達は皆そういう弱体魔術デバフを覚えているという事だ。そしてそのデバフを駆使して女達の身体の自由を奪ってひたすら繁殖行動を行うんだ。


 そして今目の前のアンネリーゼはまだ息はあるけど、それでもボロボロの身体だ。動く事すらままならない。体力も魔力もすっからかんの状態だと言っても過言ではない。


 そんなボロボロの状況では幾ら魔族とはいっても魔物達からの弱体魔術を防げる道理など何一つない。つまりこれからアンネリーゼは一生身体の自由を奪われて死ぬまで一生ペットの魔物達の孕み袋にされる事になるという事だ。


 そしてそれこそはまさに……俺がゲーム本編で見たバッドエンドと同じ顛末だ。


「い、いやだよ……こんなのに……身体の自由を奪われて……一生犯され続ける事になるなんて……い、いやだ……お、お願い……助けてよ……」

「おいおい、ゲロカスの俺にお願いしてくるなんてどうしたよ? 何だよ? 人間の女達を孕み袋に使ってたクセに自分は孕み袋になんてなりたくないって事か?」

「あ、当たり前でしょ……こ、このまま一生孕み袋なんて……い、嫌だって……だ、だから……お願いします……ど、どうか……私を……助けてください……何でもしますから……」

「はは、そんなの嫌に決まってんだろ。ま、お前も大ダメージは負ってるわけだけど、それでも魔族だしまだまだ死ぬ事はないだろ? だからさ……はは、死ぬまで一生そこでペット達の孕み袋にされてろよ。それじゃあな、転移魔術ワープ・オン

「えっ……い、いや……待っ――」


―― ビュン……


 俺は青ざめてるアンネリーゼの話を完全に無視してそのまま転移の指輪を使ってカルシュ村へと戻っていった。その後のアンネリーゼがどうなったかなんてどうでもいいさ。

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