第65話:ステラが王都に出張に出かける事に

 という事でそれからすぐにステラの朝ごはんを用意してテーブルに並べていった。そしてそのまま俺はステラと一緒にノンビリと朝ごはんを食べていった。


「もぐもぐ……って、あ、そうだ。そういえば明日から私さ、数週間ほど王都に出張する事になってるんだ」

「え、そうなんですか? でも何だか急ですね? 何かあったんですか?」

「うん、実はここ最近、世界各地で凶暴化した魔物がどんどんと発生してきてるらしいんだ。それでこれからは冒険者ギルドと軍隊がすぐ連携を取れるようにするために、一旦王都で大規模な集会を開く事になったんだ。それでほら、ウルスラ領のギルド職員で若い人って私しかいないからさ、だからこのウルスラ領のギルドを代表して私が王都に出張する事になったんだよ」


 朝ごはんを食べながらステラはそんな事を俺に教えてきてくれた。


「なるほど、そうだったんですね。というかいつの間にか世界各地でそんな大変な事になってたんですか? それにしてはウルスラ領は物凄く平和ですけど」

「うん、この領地にはまだ凶暴化した魔物は全然発生してないけど、でもこれからこの領地にも凶暴化した魔物が沢山出てくるかもしれないからね。だからその時はセラス君。冒険者として魔物退治をお願いね?」

「はい、それはもちろんです!」

「うんうん、良い返事だね」


 という事で俺はステラのその言葉にしっかりと頷きながら大きな声で返事をしていった。まぁでも……。


(ま、でもこのウルスラ領は魔族に狙われる事なんてないから大丈夫なんだけどさ)


 だけどそれを知ってるのはゲーム知識がある俺だけだ。だからこのウルスラ領にも凶暴化した魔物がやって来る可能性があるって俺以外の皆はそう思うはずだよな。


 でもこのウルスラ領にいる冒険者は手で数えられる程度の少人数しかいないんだ。


 という事はつまり、この世界が物凄く大変な事になってきたとしても……俺は冒険者としてこのウルスラ領を守るためにこの周辺から出る事は出来ないという事だ。


 それはつまり逆に言いかえると、俺はどんなに世界が大変になろうともウルスラ領からは出なくて済むという事だ。


(ふふ、着々と俺の予定通りに動いてきてるなー)


 俺は心の中でそんな風に笑っていった。


 だって俺の最終目標はスローライフな生活を送るという事なんだ。だからこれからも世界の大混乱に巻き込まれないようにこの村でノンビリと生活していってやるんだ。


「……って、あれ? でもそれにしては王都の滞在日数が長くないですか? もしかして結構大がかりな会議が開かれるんですか?」

「あぁ、うん。全国各地の冒険者ギルドの代表が集まる会議だからかなり大規模だね。でもその会議だけじゃなくて……せっかく王都に行くなら久しぶりに家族のお墓参りでもしてこようかなって思ってね。久々に家族の皆に報告したい話も沢山あるし、数日くらいは王都に滞在しようと思ってるんだ」

「あぁ、なるほど。そういう事ですか」


 ステラはちょっと陰りのある笑みを浮かべながらそう言ってきた。


 実はステラはアルフォンス領出身ではなく元々は王都で生まれ育った女の子だったんだ。


 だけどステラが王都で暮らしてた幼少の頃にステラの家族は魔物に襲われてしまったらしく、ステラ以外の家族は全員その魔物に殺されてしまったらしいんだ。


 まぁその王都に住んでた頃のステラの詳しい話は聞いた事はないんだけど……でもその後色々とあってステラは一人でアルフォンス領にやってきたらしい。


 そしてその後はアルフォンス領にある小さな村の裏路地でひっそりと一人で生活していたんだけど、最終的にダグラスに拾われて冒険者として育てられていったという過去を持っているんだ。


 という事でステラのご家族の墓はアルフォンス領ではなく王都にあるんだ。おそらく以前に王様と一緒に向かったあの大きな墓地の事だろうな。


「はい、わかりました。それじゃあご家族と楽しいひと時を過ごしてきてくださいね。ウルスラ領の平和は俺がちゃんと守っておきますので」

「うんうん、ありがとう。それじゃあちゃんと天国の皆にセラス君の事も沢山紹介しておくからね」

「はは、ありがとうございます。それじゃあせっかくだし俺の事は凄く良い好青年だって言っておいてくださいね?」

「うん、もちろん。ついでに私はセラス君の未来の第四だか第五夫人になってますって報告もしておいてあげるね!」

「い、いや、そういう風に報告されちゃうと……天国にいるお父さんから滅茶苦茶に切れられそうで怖そうなんですけど……」

「あはは、大丈夫だよー。お父さんすっごく優しい人だったからね。という事でその間の留守番は頼んだよ!」

「はい、わかりました!」


 という事で俺はステラにそう言っていった。そしてそれからも俺はステラと一緒に楽しく話しながら朝御飯を食べていった。

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