第64話:アンネリーゼと遭遇しかけてから数か月後

 アンネリーゼと遭遇しかけてから数ヶ月が経った頃。


「んー、今日も気持ちの良い朝だなぁ」


 俺はオルガ村にある我が家のリビングで朝ごはんを食べながらそう呟いていった。何とも優雅な朝の時間を過ごしていっていた。


 アンネリーゼと遭遇しかけてから数ヶ月間は経ったけど、その間にこの周辺で大きな事件とかは何も起きていなかった。まぁ隣の領地ではあれから軍人が在中するようになったりはしたけどさ。


 という事で現状はゲームの史実通り、俺が滞在しているこのウルスラ領は魔族に襲われたりする事もなくとても平和な日々を過ごせていた。やっぱりこの領地に引越して来て正解だったな。


 でも俺はゲームの内容を知ってるからといっても楽観的に毎日ノンビリと過ごしていた訳ではない。ちゃんと今まで通り鍛錬は続けてるし、周辺のモンスター退治も行っている。


 それにモンスター退治をしているおかげで回復薬の素材もどんどんと集まってきているので、また金稼ぎも順調に再開する事が出来ていた。


「全財産を燃やされて追放された時はどうなる事かと思ったけど……ま、何とかなるもんだな」


 もちろんここまで戻ってこれたのは俺の事をずっと支えてきてくれたステラのおかげでもある。そろそろちゃんとステラへの恩返しもしていかないとな。


「ふぅ……さてと。それじゃあ今日も朝ごはんを食べ終えたら鍛錬を行って、その後はモンスター退治の依頼でもこなしていくとするかな」


 という事で俺は朝ごはんを食べながら今日のやる事もしっかりと予定を立てていった。まぁそんな事を言っておいて毎日同じ予定しか立ててないんだけどさ。


 本当は家の庭先にある畑を耕したりとか、近くの海辺に出かけて釣りをしたりとかしたいんだけど……でも今の俺はまだまだ金欠状態だからな……。


 だから今後スローライフな人生を送るためにも、これからしばらくの間は頑張ってモンスター退治をしながら薬を量産して金を稼いでいこう!


「それにしても最近はモンスターを討伐する速度がより一層早くなってきたよな。はは、これはまだまだ俺は成長していってるって証拠だな」


 俺はうんうんと頷きながらそう呟いていった。


 まぁ今のはちょっと冗談ぽく言ったんだけど……でももう流石に俺も自覚している。今の俺はかなり人間離れをした強さを持っているという事に。


 だってそこら辺の岩盤なら簡単に砕く事が出来るし、木々だって簡単に薙ぎ払えてしまう。体力だって全然疲れ知らずだし……はっきり言って人間離れをしてるんじゃないかっていう程のステータスを得ていた。


「ま、多分これは俺にゲームのボスキャラ補正が入っているって事なのかな。はは、やっぱりこれが俺にとっての唯一のチート能力だったって事になるんだな」


 俺は笑いながらそんな事を言っていった。まぁもちろんボスキャラ補正が入ってるなんて予測を鵜吞みにするつもりは決してない。


 俺はこれからももしもの時に備えてしっかりと鍛錬を続けていこうと思う。


―― バタンっ


「ふぁあ……ふぅ。おはよー、セラス君」

「うん? って、あぁ。はい、おはようございます。ステラさん」


 そんな事を考えていると、ステラが欠伸をしながら自室からリビングへとやって来た。


 もちろんステラは今は寝起きなので寝間着の恰好だった。布面積の小さな寝間着なので若干えっちぃ雰囲気も感じる。そして綺麗な素足が出ていてとても艶めかしい。


「ん? どうしたのセラス君?」

「え? あぁ、いや、何でもないです!」


 そんな感じでステラの艶めかしい素足をじっと眺めていたら、ステラはキョトンとした顔で俺の事を見つめてきた。


 なので俺は慌てて何でもないと言って誤魔化していった。


「? まぁ何でもないのなら別に良いんだけど」

「はい、何でもないから気にしないで大丈夫です。あ、そうだ。ステラさんも朝ごはん食べますか? 食べるようなら今すぐに用意しますよ」

「あっ、うん! 食べる食べる! それじゃあお願いしても良いかな?」

「はい、わかりました」


 という事で俺は気を取り直して急いでステラの朝ごはんを作っていく事にした。

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