第58話:オルガ村に戻りながら独り言を呟いていく

 翌日の朝。


「それではウルスラ領のオルガ村に戻ります。何かあったらまたオルガ村のギルドマスターを尋ねてください」

「あぁ、わかった。今回は迅速な対応を感謝するよ。それじゃあ気を付けて」

「はい、それでは失礼します」


 そう言って俺はこの村を出て行った。そしてそのまま我が家があるオルガ村を目指して歩いて帰っていく事にした。


「ふぅ、早めに依頼が終わって良かったな。それに早い段階でこの世界の情勢について知る事が出来て本当に良かったな」


 物凄く気楽な感じで引き受けた調査依頼でアンネリーゼを見つけるとは思わなかったけど、でもこれで魔族との戦争が近いという事もちゃんと実感する事が出来た。


「魔王やら魔族やらが表舞台に出て来て色々と大変な世の中になっていきそうだし、フランツさんや軍の人達もこれから仕事が沢山増えていって大変そうだな……ま、俺の分まで皆頑張って欲しいな」


 俺はノンビリと帰り道を歩きながら、そんな他人事のような感じで呑気に呟いていった。


 だって俺はこの世界を救いたいとかそういう高尚な事なんて一切考えてないし、魔族と対峙するつもりも一切無いからな。


 もちろん中二病を拗らせてた学生の頃に異世界転生してたら、俺は「世界を救うために魔王を倒すぞ!」みたいな事を言って今からアガスティアに向かってたかもしれない。


 でも俺はもう中二病だった学生じゃねぇし。俺は何処にでもいるただのアラサーの社畜なんだよ。


 だから俺の目的はずっと変わらずノンビリとしたスローライフをして過ごすという事だけだ。ポーション薬を作ってお金を稼いでそれから一生悠々自適にノンビリとスローライフを楽しむという俺の人生プランがあるんだ。


「それなのに魔王とか魔族とかそう言うの話に巻き込まれるのだけは絶対に嫌だからな」


 そもそも俺は平和に生きたいからゲーム本編で一度も戦争に巻き込まれる事の無かったウルスラ領をスローライフ地として選んだわけなんだしさ。


 それなのにアンネリーゼとかの魔族がまたこの周辺地域にやってきたら流石に怒るわ。「話が違うじゃん!」って言ってめっちゃブチギレるわ。


「だから魔族は皆こんなド田舎な領地に絶対に襲いに来るんじゃねぇぞ。本編の史実通り王都とか栄えてる場所でドンパチと戦争しろよな」


 俺はソードファンタジアのゲーム知識を全て覚えてるからと言っても、このゲーム知識を世界平和のために使う気なんて一切ない。そもそも世界を平和にするのは主人公がやるべき事だからな。


 だから俺は魔族に害をなすつもりなんて一切ないから、魔族も俺には関わらないでくれよな。お互いに不可侵を守っていこうじゃないか。俺はスローライフだけさせてくれればそれで全然良いからさ。


「ま、でも……俺の周りに魔族が現れて何か一つでも被害を出してきたら……そしたらその魔族は絶対に潰すけどな」


 特にアンネリーゼとか一度でも戦った事のあるボスキャラは全員ちゃんと全て覚えている。全て覚えているという事はもちろんソイツらの弱点も全て覚えているという事だ。


 だから万が一にアンネリーゼなどのボスキャラがウルスラ領に襲来した時のために、ちゃんと返り討ちに出来るように今の内にたっぷりと事前準備をしておこう。


 そして魔族を返り討ちにするための事前準備というのは……。


「いやー、それにしても転生してすぐに調合レベルをカンストまで伸ばしておいて本当に良かったよな」


 残念ながら俺には魔力が無いので魔術は一つも使えないけど、でも幸いな事に調合レベルはカンストしている。


 そして調合で作れるアイテムというのは……実はポーションやエリクサーなどの回復薬だけじゃないんだ。


 調合で作れるアイテムには対魔物・魔族用の麻痺薬や睡眠薬、毒薬などの戦闘補助アイテムも豊富に揃っているんだ。


 という事はつまり今の俺はそんな魔物や魔族への特攻アイテムも余裕で作れるという事なんだ。


「それらを駆使すれば、まぁ魔族のボスキャラが相手でもちゃんと戦えるだろうな」


 俺はソードファンタジアのゲーム知識を思い出しながらそんな事を言っていった。


 だけど慢心だけは絶対に駄目だ。慢心をしたら不幸な目に遭う事は確実だからな。ステラとも命を大事にするって約束したし、慢心だけは絶対にしないようにしよう。


 だからこれからも鍛錬は毎日しっかりと続けていこう。鍛えたステータスは絶対に裏切らないからな。魔術が使えなくてもレベルを上げて物理で殴れば全部解決できるだろ。


 それともしものためにエリクサーをまた一本だけ作っておこう。そうなるとまたレア素材集めをしなきゃいけなくなるな。あ、それじゃあ討伐用の片手剣と盾も早めに買い直さなきゃだな!


「うーん、そうなると……あはは! よしっ、それじゃあこれからもやらなきゃいけない事が沢山ありそうだな!」


 俺は笑いながらそんな事を言っていった。やっぱり俺は生粋のゲーマーなんだよな。レベリングに素材集めにアイテム作成とか……やる事が沢山あるとついワクワクしちゃうんだよ。


 という事でノンビリとしたスローライフ生活を送るという最終目標のためにも今年は頑張って色々と準備をしていく事にしよう!

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