第57話:調査依頼の報告を終えていく
それから数時間後。
時刻はもう夕方を過ぎた頃合いだ。
俺はこの領地にある冒険者ギルドにやって来てギルドの支部長に先ほどの報告を行っている所だった。
「……というような状況でした。そしてこちらがモンスター被害の証拠となる蛇竜の鱗です」
「ふむ、ありがとう。蛇竜に魔族の襲来か……これは早急に対応していかなければならなそうだな」
「はい、そうですね。私が目撃した魔族は転移魔術で移動したのを確認したので、魔族の脅威自体は無くなったとは思いますが……それでも念には念を入れて防衛を固めていった方が良いかもしれません。そして流石に蛇竜や魔族なんて恐ろしい敵には私のような“新人冒険者”では歯が立ちませんし、早急に軍を呼んだ方が良いかと思われます」
「そうだね。わかった。早速その方針で進めていく事にするよ。それじゃあこれで調査依頼は完了とさせて貰う。調査ご苦労だったね」
「いえ、全然大丈夫です。それじゃあ夜も近くなってきたので、この村に一泊してから元の村に帰る事にしますね」
「あぁ、そうか。わかった。それじゃあ私の方で君の宿を用意しておくよ」
「ありがとうございます」
という事でそれからすぐにギルドマスターにこの村の宿を紹介して貰い、俺はそのまま用意して貰った宿屋のベッドに寝転んでいった。
「ふぅ。これで良しと。あとは軍の人達が来てさえくれれば後は向こうの人達が勝手に何とかしてくれるだろ」
このまま冒険者の俺にこの周辺地域の見回り依頼とかされたらメンドクサイと思ったので、新人冒険者の俺は役に立たないからさっさと軍を呼んでくれとそれとなく提言していってみた。
そしたらギルドの支部長がすぐに軍を派遣してくれるという事になったので、これで俺はもうこの件とは完全に無関係となる事が出来た。
という事で思いの他すぐにウルスラ領へと帰れる事になったので、また明日からは我が家の大浴場で温かいお風呂を楽しめる事になりそうだ。はは、本当に幸せだなぁ。
「うーん、それにしてもアンネリーゼと出くわしかけた時はビックリしたよなぁ……」
俺はベッドに寝転びながらそんな事を呟いていった。
まぁでもそりゃあこの世界はソードファンタジアの世界だしな。アーシャやフランツとかの大好きな仲間キャラだけじゃなくて、アンネリーゼのようなクソヤベェ敵キャラだって存在してるに決まってるよな。
しかもここからしばらく経ったら魔族との戦争が始まっていく事になるんだ。という事はアンネリーゼ以外のボスキャラも今続々とアガスティアに集結していってる最中なんだろうな。
「それじゃあもう少しでいよいよ混沌の時代が始まっていく事になるんだろうけど……ま、でも全部勇者が解決してくれるからきっと大丈夫だろ。ふぁあ……」
俺はかなり間の抜けたあくびをしながらそう言っていった。
だってあと数年もしたらこの世界には主人公の勇者が現われるという事を知っている。そしてその勇者が魔王を倒して世界を平和にするという事も知っている。
だから俺はアンネリーゼを見つけた時には確かに物凄くビックリとしたけど、今はもう正直アンネリーゼと出くわした事に関しては特に何も感じてはいなかった。だってあの化物はこのままだと数年後には勇者に倒されるわけだしな。
ってかそもそもなんだけど、この世界には戦争屋こと“狂人セラス”は存在しないんだぜ? その時点で魔王軍の戦力はかなりそぎ落とされてるだろ??
だって自分でセラスの事を評価するのも変な感じだけど……ゲーム本編の魔王軍に一番貢献してたのって確実にセラスなんだからな。
セラスは大量の破壊兵器を作って世界中にばら撒いて戦争の火種を大量に作ったり、王族や貴族達をバッタバッタと処刑していったり、魔王に致命的なダメージを与える事の出来る“聖女”のアーシャを拉致監禁して毎日のようにブチ犯しまくって精神破壊させた後で首を落としていったりとか……魔王のために色々と悪逆非道な行為をしまくってたからな。
でもそんな戦争大好きクソヤバ男の“狂人セラス”はこの世には絶対に存在しないからな。という事はつまり狂人セラスが魔王軍に加わらないという事実が確定しているので、この世界の魔王軍の戦力は大幅に削られるって事だ。
「ってかそう考えるとさ、さっき俺はアンネリーゼの事を相当悪く言ってたけど……どう考えても一番ヤベェ奴って俺だったよな……」
俺はゲーム本編でのセラスの悪行を思い出してため息をついていった。そういえばアーシャは今頃元気に学園生活を謳歌しているかな?
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