第56話:アンネリーゼ・ブラームズ
ソードファンタジアは以前にも言ったように、主人公である勇者が魔王を倒しに行くという王道の物語だ。まぁジャンルはエロゲだから王道ではないかもだけど。
そしてその魔王が率いる魔王軍には四人の幹部が存在している。その内の一人は当然俺ことセラス・アルフィードだ。
そして残り三人の幹部の内の一人が、あそこで佇んでいるアンネリーゼ・ブラームズという魔族の女だった。
アンネリーゼはペットにしている魔物達を大量に呼び出す事の出来る凄腕の召喚術士だ。
ゲーム本編でのアンネリーゼ戦は毎ターン強力な魔物を呼び出して突撃させてくるというウザい戦法を使ってくるので、長期戦になるほどかなり厄介なボスだった。
さらにアンネリーゼは性格も非常に残忍で鬼畜なキャラだった。ゲーム本編では沢山の人間を斬殺したり、ペットの魔物達の餌として人間を生きたまま食べさせていくなどの残虐行為を楽しみながら行っていた。
そしてそんな残虐行為は主人公達にも行われてしまうんだ。アンネリーゼとの戦闘で敗北すると即座にバッドエンドに突入してしまうんだけど……そのシーンがかなりの胸糞展開だった。
実際にどのようなイベントが発生するのかというと、主人公の仲間である女性陣が全員アンネリーゼに捕らわれてしまい、そのまま女性陣はアンネリーゼのペットの巣窟に連れ去られてしまうんだ。
そして仲間の女性達は死ぬまでアンネリーゼのペットの魔物の子供を産み続けさせられる道具として扱われてしまうというバッドエンドだった。
だからこそ俺はいつもアンネリーゼ戦に関してだけは超全力でフルボッコにしてたっけ。そういやアンネリーゼ戦だけはいつも全力でRTAプレイをしてた気がするわ。だってそんな酷いクソエンディングなんて絶対に見たくもないしな。
まぁという事でゲーム本編でもかなりの胸糞展開に関与してくる敵キャラがあそこにいるアンネリーゼという魔族の女だった。
(という事はあの鱗って……もしかしてニーズヘッグの鱗だったのか?)
ニーズヘッグとはアンネリーゼが一番大事にしているペットの蛇竜だ。地を這って移動する凶暴な大型のドラゴンの事だ。
ゲーム本編のアンネリーゼ戦でもニーズヘッグを呼び出されたらすぐに倒さないと高確率で大変な目に遭わされたからな。
でもそんなニーズヘッグなんて化物級のドラゴンを呼び出されていたとしたら……まぁあんな小さい村だったら一瞬で壊滅するに決まっているな。
(……って、あれ?)
そんな事を思いながらアンネリーゼの様子を双眼鏡で観察していってると、急にアンネリーゼは荒ぶった態度を取り始めていった。
どうやらアンネリーゼは誰かと通信魔術で連絡を取り合っているようだ。
「はぁ? 今すぐ魔界に戻れって? アンタ……頭湧いてるんじゃないの? って、ちょっと待ってよ。わかったわよ、戻るわよ。戻れば良いんでしょ!」
そんなやりとりが俺の耳にも届いてきた。そしてそれからすぐに相手との通信魔術は切れていったようだ。でもそれからすぐに……。
「くそ……何でアタシがあんなゲロカス共の命令を聞かなきゃいけないのよ……!!」
―― ドガッ、ドガッ、ドガッ!
アンネリーゼは怒りに任せて近くの木に向かって全力で何度も蹴り続けていっていた。どうやら相当にキレちらかしているようだ。
でも魔王軍幹部のアンネリーゼに上から命令が出来る人物という事は……もしかしたら今の通信相手は魔王だったのかもしれないな。
「はぁ、全く……
―― ビュンッ!
そしてそれからすぐにアンネリーゼはそう唱えて瞬時に消えていった。アガスティアとはゲーム本編では魔族達が根城にしている地域の事だ。
という事は以前にレインが教えてくれたように、もう魔族達は既にアガスティアに集結し始めていってるという事なのか? いや、まだそこまではわからないか。
(でもまさかアンネリーゼと遭遇しそうになるなんて……何だかまるでソードファンタジアの前日譚をプレイしてる感じにもなってくるな)
俺は呑気にそんな事を思いつつも、とりあえず周りに魔物や魔族の気配が無い事をしっかりと確認していった。
そしてそれらの気配が無い事を確認し終えた俺は、そのまま真っすぐとこの領地の冒険者ギルドへと向かって行く事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます