ゲームの悪役に転生したけど処刑されたくないからゲーム知識を駆使して真面目に楽してノンビリと生きていく。
tama
第一章:最推しキャラとの出会い(10~11歳)
第1話:目が覚めたらフルボッコにされてた件
「……あれ?」
目を覚ますと、俺は大きな洋風の屋敷の中庭みたいな場所に倒れ込んでいた。
しかも俺の身体は何故かボロボロになっていた。切り傷や火傷などが全身の至る所に出来ていた。めっちゃ痛いんだけど。
「この程度の炎魔術を受けただけで気を失うなんて無能過ぎる! 立て! この無能が!!」
状況が全くわからずに倒れ込んだままボーっとしていると三十代くらいのオッサンが俺の事を睨みつけながら怒鳴り込んできた。煩すぎて耳がいてぇよ、タコ。
「……」
という事で俺はオッサンの怒鳴り声を無視して地面に座り込みながら自分の身体をペタペタと触ってみた。
(あれ……?)
でも何だか身体を触ってみた感じ、めっちゃ身体が小さくなってる気がするんだけど。もしかして今の俺って子供になってるのか? 多分十歳くらいの身体になってるんだけど?
(いや、でも俺はもう二十歳なんて余裕で超えてる大人のはずなんだけどな……?)
俺は腕を組みながら自分自身の事を考えていった。
俺は都内に住むごく普通の二十代後半の社畜サラリーマンだ。昨日も徹夜でオフィスに籠ってプログラムのソースコードを打ちまくっていたはずだ。
だからこんな中世のヨーロッパみたいな雰囲気の中庭にやってきた記憶なんてないんだけどな?
(うーん……なんだこれ? ひょっとして夢か?)
俺はこの状況が全く理解出来ず腕を組みながら首を傾げていった。マジでどういう状況に陥ってるのか今の俺にはさっぱりだった。
「オイ!! 目を覚ましたのならさっさと立ち上がれこの無能が! いつまで私の事を待たすんだ!」
「……」
そんな俺のキョトンとした態度を見てたオッサンが俺に向かっていきなりそう叫んできた。そもそも何でこんなにブチギレてんだよこのオッサン。
(というか子供相手にブチギレるとかだいぶヤベェだろ)
普通に生きてたらこんなボロボロ状態の子供相手にここまでブチギレるなんてする事ねぇだろ。どういう教育受けてきたんだこのオッサンはよ??
という事で俺はそんなブチギレてるオッサンを改めて観察していってみた。見た目は三十代の普通体型の男だ。高そうな服や装飾品を身に付けているから多分金持ちなのかもしれないな。
あとは言葉の節々にトゲがあって滅茶苦茶にムカつくんだけど。俺……というか、このボロボロになってる子供に対して恨みでも持ってるのか?
いやもし恨みがあったとしても、こんなボロボロになってる子供を罵倒しまくるなんてダサすぎるだろ。大人なんだから怪我してる子供の事をちゃんと助けてやれよ。
「おい、早くしろこの愚図が! 私の事を待たせるんじゃない! 早く立ち上がれ!! この無能が!!」
しかしオッサンはボロボロになってる俺の事を助ける素振りは一切なく、むしろ全然立ち上がろうとしない俺に対してさらに激昂しながらそう怒鳴り込んできた。本当にやかましすぎる。
でもこれ以上怒鳴られると耳が痛くて辛いので、俺は仕方なくオッサンの命令に従って立ち上がる事にしていった。しかし……。
「っ!? ぐっ……ぐ……」
しかし俺は立ち上がろうとしたその瞬間、全身に物凄い激痛が走った。そりゃあそうだ。だって今の俺の身体は全身ボロボロになってるんだから。
それでも俺はボロボロの身体を引きずって何とか無理矢理に立ち上がっていった。
するとそんな俺の辛そうな様子を見てオッサンはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ始めていた。どうやら俺の苦悶の表情を見て喜んでるようだ。
(という事はもしかしてこの俺の傷って……全部このオッサンがやったのか?)
もしそうだったらマジで終わってる。子供をいたぶって喜んでるなんて犯罪じゃねぇか。訴えたろうかな。
「ふふっ、その程度の傷でそんな情けない声を出すなんて本当に貴様は無能だな! このゴミクズめが!! 貴様のような無能なゴミクズは――」
「父上、それ以上は許してあげてください。いくらゴミで無能なのは本当だとしても、私の兄上なのですから」
「……?」
すると突然、ブチギレてるオッサンの隣に立っていた子供がそう言ってオッサンを制止してきた。
(助けてくれた……わけじゃないな)
その子供は俺の顔を見て思いっきり嘲笑してきていた。どうやらこの子供も俺の事を見下してるようだ。
「おぉ、シュバルツ! こんな無能なゴミクズに対してもそのような優しい言葉を口にするなんて……ふふ、シュバルツは本当に心優しいな。私にとってシュバルツは自慢の息子だよ」
「いえいえ、清廉潔白で高潔なるアルフィード家の血を引く者として当然の事です。それに幾らゴミクズの無能であっても役に立つ事はあるでしょうしね。ふふ」
オッサンと生意気そうな子供は共に笑い合いながら俺を馬鹿にするような会話をずっと続けていっていた。
だけど俺にはこの状況が全然理解出来なかったので、とりあえず無理矢理立った後はボーっとその二人のやり取りを眺めていた。
まぁでも目の前のオッサンが俺の父親でクソガキが弟ってのは何となくわかった。あとはこの屋敷はどうやら有名な貴族の家っぽいな。よくわからんけど。
「ふん、それでは優秀な弟のシュバルツに免じて今日の魔術訓練はこれで終わりにしてやる。シュバルツにしっかりと感謝をする事だな! この無能なゴミが!」
楽しそうに笑っていたオッサンはまたブチギレた様子に戻って俺にそんな事を言ってきた。どうやらこのオッサンは俺の事を本気で嫌っているようだな。
「くすくす……良かったですね、セラス兄上。魔術の名門であるアルフィード家で唯一魔術が全く使えないという無能なゴミクズだというのに、それでもまだアルフィード家に籍を置かせてくれているお父様に感謝した方が良いですよ? 本当だったらもう今頃アルフィード家から追放されていてもおかしくないんですからね?」
そして目の前のクソガキもニヤニヤとムカつく笑みを浮かべながら俺に向けてそんな事を言ってきた。何で身内にこんな馬鹿にされなきゃなんねぇんだよ。
あと俺の名前は“セラス”と言うらしい。流石に自分の名前だけは忘れないようにしないとだな。
「ふん、シュバルツが言う通りだ! 本来ならば魔術が使えない貴様など今すぐにでもアルフィード家から追放されてもおかしくないんだからな! もしもアルフィード家から追放されたくなければ自分の存在価値をちゃんと私に示してみせろ! まぁ貴様のようなゴミクズに存在価値などあるわけないだろうがな! ふはは!」
「くすくす、お父様。そんな本当の事を言ってしまったら兄上が可哀そうですよ」
「おぉ、シュバルツは本当に優しい子だな! こんな無能なゴミクズの事をちゃんと兄だと思ってやるだなんて……ふふ、こんなにも優しい息子を持って父である私は本当に誇らしく思うぞ! ふはは!」
オッサンとクソガキは俺の事を見下しながらそんな風に笑ってきた。意味がわからな過ぎて頭が痛くなってきた。
「よし、それでは本日の魔術訓練はここまでとする! さぁ、シュバルツ、屋敷に戻るぞ。戻ったらすぐに夕食にしよう。最高級のワイバーン肉を取り寄せているから、今日はそれで最高のステーキを楽しもうじゃないか」
「はい、お父様! それはとても楽しみです! 早く夕食を食べましょう!」
「……」
何だかよくわからないけど、どうやら今日の魔術訓練とやらはこれで終了したらしい。
そしてオッサン達はそのまま近くにある大きな洋風の屋敷に向かって歩き始めていった。どうやらやっぱりあの屋敷が俺達の自宅のようだ。
なので俺も身体を引きずりながらオッサン達の後ろに付いて行こうとした。しかしその瞬間……。
「っ!? 何をしているんだこのゴミクズが! 私達と同じ屋敷に足を踏み入れようとするんじゃない! 貴様は馬鹿なのか!?」
「そうですよ兄上。兄上は存在価値のない無能なコミクズなんですから、このアルフィード家の本屋敷に入る事は一切許されていませんよ? だからさっさと離れの別邸に一人で帰ってください」
「……離れ?」
「うん? もしかして頭でも打って記憶をなくしましたか? ふふ、ただでさえ頭が弱いのに哀れですね、兄上。それじゃあそんな哀れな兄上に離れの場所を教えてあげますよ。ほら、あっちに小屋が見えるでしょう?」
「……あっち?」
そう言うとクソガキはニヤニヤと嘲笑しながら斜め後ろの方に指を差してきた。どうやらその指差してきた方向に別邸とやらがあるらしい。
なので俺はその指差してきた方向に顔を向けていった。しかし……。
「……まじかよ……」
俺は絶句した。
指差してきた先にはボロボロで滅茶苦茶に小さい掘っ立て小屋のようなものがポツンと立っていた。多分その中は俺が今まで住んでたワンルームのアパートよりも狭そうな雰囲気だ……。
(さ、流石にこんなボロボロな小屋に住まわせるなんて酷すぎるだろ……)
いやそもそも今の俺ってまだ十歳くらいの子供なんだよな? そんな幼い子供をこんな酷い環境に住まわせてるって……このオッサン毒親が過ぎるだろ!!
「ほら、わかったならさっさと自分の住む別邸に帰ってください。あぁ、それとアルフィード家の屋敷には金輪際二度と近づかないでくださいね? 無能な兄上が屋敷に近づくと優秀な我々にも無能が乗り移ってしまうかもしれませんしね。くすくす」
「あぁ、シュバルツの言う通りだ! それに貴様のような無能なゴミクズに屋敷周りをウロチョロされると我々は不快で迷惑なんだ! だからさっさと自分の住む別邸に帰れ! この無能なゴミクズめが!!」
「……」
そんな言われ方をして俺はあまりにもムカっとはきたけど、でもここで荒立てても仕方ない。
という事で俺はその場ではオッサンの指示に素直に従い、俺はそのボロボロの掘っ立て小屋に一人で向かっていく事にした。
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