公園に落ちていた少女をお持ち帰りしたら、私の義妹になって迫って来る。良いの?私、女子だよ。

霜花 桔梗

第1話 落ちているモノを拾ってみた。

 私は小学生の頃、不登校であった。部屋に引きこもり、クマのぬいぐるみのクマたんだけが友達だった。クマたんは親友であり、私の唯一の理解者だ。


 そんなある日、私が自殺未遂を起こすと。大勢の大人達がやって来て『このぬいぐるみが悪い』と言い出して、クマたんを持って行ってしまった。


 その後、私は見た目だけ立ち直り、高校生をしていた。


 しかし、心の傷は深く世界を斜めから見ていた。クマたん元気にしているかな……きっと、焼却処分されたか。


 私は下校中、空を眺めなからクマたんの事を思い出していた。


 そして、家の近所の公園まで歩いてくると。独りでいる少女を発見。同世代、少し下かと観察しているが何か感じる。


 不意に目が合と、その瞬間に声をかける事にした。


「ハロー、少女よ、元気か?」

「はい、私は『虹菜』貴女は?」

「『可愛田 幹』、ミキティーと呼んで」

「ミキティー姉様ね」


 何やら馴れ馴れしい会話だが深く考えないでおこう。すると、世界征服をたくらむ悪の組織の幹部であると話し始める。危険人物かと思うが違うらしい。


 要は、お金が無く公園に泊まっているとの事である。仕方なく、家にお持ち帰りして我が家に泊めてあげる事にした。


「ミキティー姉様、私は恋に落ちました」

「はい?」

「ミキティー姉様のとりこです」


 あああ、女子に惚れられた。私のついてない人生にまた波乱が起きようとしていた。


 虹菜と一緒に家に着くと鍵が開いていた。偶然、リモート勤務の父親と日曜日の代休の母親が居たのである。


 私が虹菜を紹介すると……。


「これは、お父様、お母様、義妹の虹菜です」


 いきなり、虹菜による義妹発言であった。私が途方に暮れて頭をかいていると。


 その後、突然、虹菜はヒモで結ばれた五円玉を取り出して。謎の儀式を始める。


……。


「この女子は痛いのか?」


 しばしの沈黙の後、父親が私に問うてくる。


「はい」


 私は返事を返して静かに頷く。


「ミキティーの妹になる、妹になる……」


 虹菜による謎の儀式が続くと、私は虹菜がかなり痛い女子だと思う。可哀そうなので、私は泊めてあげてと両親に頼む。


「義妹なら大歓迎よ」


 母親が謎の儀式中の虹菜に声をかける。


「よし、洗脳成功」


 虹菜は母親の言葉にガッツポーズをする。


 イヤ、違うし……。


 ま、細かい事は置いといて、今日から虹菜は私の義妹だ。


 突然、義妹が転がり込んで数日が経った。一番驚いたのは、専用の部屋が用意されていた事だ。やはり両親は子供が二人欲しかったらしい。私は幼い頃のエピソードを思い出す。


 とある、十二月の事である、私は母親にクリスマスプレゼントは何がいいかと聞かれ。


『妹』と答えると。


 母親は寂しそうにその願いは叶えられないのと呟く。幼い私はダダをこねると母親は泣いてしまった。


 今、思えば婦人科の病気だったのであろう。


妹か……。


 虹菜は世界征服をたくらむ悪の結社の幹部とかデタラメな設定だが悪いヤツではない。


 私は登校前の時間、花壇に水を与えていると。


「ミキティー姉様、一緒に学校に行こう」


 はい?!


「高校のサーバーにアクセスして転校しちゃった」


 不正アクセスで転校かよ。流石、悪の結社の幹部である。


 月曜日、虹菜との初登校の日の事である。虹菜に校内を色々教えてあげようと早めに学校に着く。二人で普通に歩いていると。何故か物理実験室に連れ込まれる。


 虹菜は目がトロンとして興奮した様子である。


 私が油断していると。いきなり、壁ドンをされて、虹菜の香りの中に包まれる。


「ミキティー姉様、可愛い……」


 キスなのか?キスなのかと思う。ここは理性を働かせて。


「ストップ、ストップ」


 私の静止に虹菜はつまらなそうな表情になる。


 あー、ドキドキした、虹菜の顔が直ぐ近くにいたのであった。甘い石鹸の匂いが忘れならない思いをした。


 きっと、この記憶は脳の大切なゾーンにしっかりと刻まれるであろう。しかし、何故、物理実験室が開いていたのであろう?


 すると、虹菜はカードキーを使い物理実験室に鍵をかける。


 はぃ?!


「そのカードキーは?」

「拾った、凄いでしょう」


 絶対ウソだ、非合法に手に入れたに違いない。私がジト目で見ていると。


「てへ、そんな顔しちゃ嫌だ」


 天使の様な笑顔で返してくる。


 あああ、この笑顔に毒された日常が始まるのか……。


 私は生きる意味を探し続ける人生の転機を感じていた。


 昼休み、私と虹菜は中庭にあるベンチに座っていた。風が流れベンチの上の木々が揺れる。義妹の為に二人分のお弁当を作ったのである。ミートボールにレタス、茹でにんじんと手作り感のあるお弁当であった。


 しかし、虹菜とお弁当を一緒に食べるなんて少し緊張するな。私は義妹が現れた事に素直に喜んでいた。


「ミキティー姉様、顔が赤い」


 その言葉と共に虹菜の手のひらが私の頬を触る。女性らしい小さな手のひらは綺麗で心が揺れる。


 落ち着け、落ち着け、百合的恋愛など望まぬはずと自分に言い聞かせる。


「フムフム、熱は無いようだ」


 虹菜の手が離れると。寂しい気持ちになるのであった。

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