定年退職爺の異世界転生、スキルが無いのですぐ終了〜覚醒した超ユニークスキルを使って訳あり伯爵令嬢と共に俺を殺した奴らを1人残らず消去します
主水
視えない敵の影
第1話 プロローグ
先日定年退職して長い会社勤めを終えた。若い頃は賭け事にのめりこんでバカをしたがよく勤めあげたもんだ。
暇なので取りだめしたビデオを観ようとしたが10年使っていたブルーレイレコーダーが壊われてしまった。
年金が支給されたので、ついでに8年も経つ古いOSバージョンのパソコンの買い替えと前から欲しかった動画編集ソフトや外付けのハードディスクで認識できないのがあるのでデータ修復ソフトを一緒に買いに電気街来た。
思い通りの物が買えたので早く帰っていろいろ試したい。俺は通い慣れた通勤電車の定位置、1番前の車両に乗った。
先頭車両には俺の他に4人が乗っていた。前の席にはサングラスをかけスーツを隙無く着こなしている渋い中年の男性と、寄り添う様に座っている妙な色気のある女性。
夫婦だろうか?中々のカップルだ。反対の端にはメガネをかけた真面目そうな30歳位の男性、高校時代の先生に雰囲気が似ている。
その対面に清楚な女の娘。学生かな?頭が良さそうだ。などとしょうもない事を考えていたら次が降りる駅だ。
電車は駅につく手前のカーブに差し掛かる。その時、カラスがレールに置いた石ころ群によって脱線した対向電車が俺達の先頭車両に突っ込ん出来た。激しい音と共に俺の意識は無くなった。
目は覚めたが身体は動かない。部屋のようだが、何処だここ?助かったのか?他の人達はどうなった?
「それでは宜しく頼みます」
「かしこまりました」
10代だろうか?若く綺麗な女性が部屋を出て行くと、少し彼女より歳上にみえるメイド服の女性がいきなりオッパイを出して俺を抱え上げる。
な、何だ……。夢か?65歳にもなると、この手の夢も見なくなったのだが。まあいいか、有り難く頂戴する事にする。
オッパイをチューチュー吸いながら考える。妙に生々しい夢だ。女性のメイドが俺を抱え上げるのだから俺は赤ん坊なのだろう。
オッパイを吸って寝るだけの日々が続けば、嫌が上でも理解が出来た。俺はあの時に死んで前世の記憶を持ったまま生まれ変わったのだろう。特に信心深いわけではなかったのに、一緒に乗っていた人達も生まれ変われたのかね?
ここはヨーロッパ中世の世界観とほぼ同じ感じだった。どうやら俺はこの国の王子らしい。
時が経ち、母はそれぞれ違うが2つ年下と4つ年下の弟も生まれ俺は10歳になった。
この世界では魔法が使えるらしい。そしてスキルなる物が存在する。今日は俺のスキル鑑定の儀があるそうだ。魔法属性とどんなスキルが有るかを確かめるという事だ。
若がえり人生をやり直せ、しかも王子で魔法が使える。わくわくするぜ。
「それではカペラ様、水晶にお手を付けてください」
俺は言われた通り水晶に触る。
…………なんの変化も無い。
「何も反応が無いではないか?どうなっておるボカス」
父である国王が大司教のボカスを問い詰める。
「こ、これは……言い難いのですが、魔法属性もスキルも無いとしか……」
「なんじゃと!」
「ま、間違いありません。魔力量はかなり有りますので皆が使える生活魔法は出来ると思われますが、属性とスキルは無いかと」
「…………そうか……カペラ、気にするでないぞ」
「はい、父上」
どうやら俺には才能が無いらしい。出来るのは皆が使える生活魔法か……。
★★★
「王族のくせに属性もスキルも無いとは情けないこと」
「これでは次の国王には成れないでしょう」
「いや、年取ってやっと出来た最初の子供だ、陛下のご寵愛は半端ではない」
「うむ、ゴリ押しもあり得るか?」
「今のうちに始末した方が良いのではないか?」
「ですな」
「では私が手配致しましょう」
ーーーー
鑑定の儀から2週間が経った。国王は気にするなと言ったが、さすがに落ち込む。なんとかならないかね?
「誰だ?うぐっ……」
「静かにしてくださいね。直ぐに楽になりますから」
「……」
「貴方がいては困る人達がいるんですよ。それでね、服毒自殺してくださいね」
「……」
「貴方の筆跡を真似た遺書も書いておきますのでご安心を」
塞がれた口の隙間から液体が入って来る。飲まないようにするが鼻をつままれ息が出来ず飲んでしまった。意識が遠のいて行く……。
『やれやれ、宝の持ち腐れとはこの事だな』
『あらあら』
『まあ、これは仕方が無いですね』
『おじいちゃんだったから、覚醒するのに時間がかかるのかも?』
ーー
何処だここ?……また身体が動かない。
状況は直ぐに理解出来た。俺はまた生まれ変わったのだ。
今度は商人の息子だった。と言っても店は小さく、生活するのに困らない程度の商いをしている。そして今回も魔法属性もスキルも無かった。
そんなある日、病気になった父の代わりに隣り街に荷物を届ける事になった。
「ロッコ、気をつけてね」
「この仕事はどうしてもやらねば、無事に届けられれば店を大きく出来る。護衛の冒険者も雇っているからな」
「うん。父さん、母さん行って来るよ」
移動は順調……ではなかった。盗賊に襲われたのである。でも護衛がついているから大丈夫。
2人の冒険者は最初は勇敢に戦い始めたが、盗賊の人数が10人以上と判ると逃げ出した。
「そんな」
「安い依頼料で命は失いたくねえんだ。悪いな」
「ヘヘ、腰抜けな冒険者だぜ。わざわざ助っ人を頼まなくたってよかったな」
「上からの命令らしいぜ」
「そんな事より可愛い僕ちゃんだぜ。売っぱらう前に俺が味見してやる」
「お前の趣味にはついて行けねえ」
くそっ、冗談じゃない。奴隷もオカマを掘られるのも嫌だ。死んだ方がまし、と思って形だけのつもりで持った剣を振るが当たるわけもなく盗賊の剣が俺の喉に刺さった。
「あ~あ、殺っちまった。金になんねぇ」
『もどかしいぜ、全く』
『あらあら』
『こればかりは本人が感じないと』
『自分は才能が無いと思い込んでるからダメなのよ』
『いずれにしても次が"最期"だ』
『あらあら』
……どうやらまた生まれ変わったようだ。今度の俺は孤児院の前に捨てられていたらしい。
孤児院に金はなくスキル鑑定などはしてもらえない。14歳までは最低限の面倒は見るから、孤児院を出て自分でなんとかしろと言う事だ。
一月後に俺も14歳になるという事なので身の振り方を考えねばならない。
大抵は冒険者になるそうで、ここの出身の冒険者が剣術や必要な知識を教えに来てくれる。俺も孤児院の仲間と教わったが魔法が使えないのはやはり厳しい。
同時期に孤児院を出るのは俺だけだった。仲間がいないのは心もとない。冒険者になる為の金と鉄の剣、それと安い宿であれば2週間程度泊まれる金は孤児院が用意してくれた。
いよいよ自分一人で食っていかなければならない。
最低ランクFの初心者に出来る最初の仕事は薬草の採取だ。これだと1日の宿代を稼ぐのも難しい。
手持ちの金は銀貨15枚。減らしたくはないので宿代の銀貨1枚分には近づけたい。
焦っていたのだろう、近づくなと教わっていた森の西端の岩場まで来ていたのに気が付かなかった。いきなり足が地にめり込みズボッと落ちた。
「しまった!」
この辺に生息している蟻の魔物の出入口近くの通り穴に落ちたらしい、ケガは無かったが上までは5mくらいある。
「くそっ、もっと頑丈に造ってくれよ」
悪態をつきながら出る方法を考えるが、暫くして「ギィギィ」という鳴き声が穴を伝って聞こえてきた。
「……ああ、また何も出来ずに死ぬのか」
3度もチャンスをもらいながら何も出来ないなんて。3度か……これで最期かもしれない。
悔しくて涙が出る。俺も皆みたいに「ステータスオープン」と言ってみたかった。
ダメ元だ、最後にカッコぐらいは付けてみるか。
「ステータスオープン!……へっ?なにこれ」
スパイ映画で見るような、赤外線サイトスコープで使われる様な緑色の文字が浮ぶ。
名称 転生者 月形平四郎 Lv 1
種族 人族
体力 777
魔力 7777
攻撃力 77
知力 777
素早さ 777
幸運 7777
属性 ∞
称号 改竄するもの
加護 アメノフトダマノミコト
スキル
・VRZー3400 W4TB
・SUPPER BOOK T7ー1250
・PRCコンバート 完全版
・リカバリー5050VR
・クリアーSection Ⅳ
・E456系(ワラベE145)
・憑依召喚
これって電気街で俺が買ったブルーレイレコーダー、パソコン、動画編集、リカバリーソフトに持っていたスマホ、乗っていた電車の型式じゃないか……憑依召喚てなに?
『やれやれ、やっとだぜ』
『あらあら』
『何とか間に合いましたね』
『もう、頑張ってよ』
ギィギィという鳴き声が段々と近づいて来る。戦闘はもうすぐだ。
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