先生はなんだかろくでなし

@toyosou0930

第1話 日常の転換点

この地球ではあり得ないこと、思いもしないこと、理解できないことがたくさん起こっている。

大昔の人たちは人類が月に行けるだなんて思ってもいなかっただろうし、ジョンレノンが射殺されるだなんて想像もつかなかっただろう。そんな色々な非日常的なことが次々に起こっている。だが、それが自分の周りで起こることなんてなかった。ビームが打てることなんてないし、ある場所からある場所までテレポートすることだってできない。そんなものは子供の時に見た幻想だ。


ところでだが、俺、橘昭栄には妻がいる。もっとも、もう離婚寸前だ。今日の朝だって喧嘩したばっかりだ。それに頑張って働いた後に帰るのも大変だ。全く、早くエレベーター直ってほしいものだ。マンションの7階まで階段で歩くのも大変なんだぞ。

そんなことを考えていたうちに家の前にいた俺は、鍵のかかっていないドアを開けた。


「ただいま。あと鍵空いてたぞ」

返事はなかった。仲が悪いとはいえ、雑な言い方で「おかえり」ぐらいは返してくれるのだが……


「おい、返事ぐらいしてくれよ!」

それでも返事はない。俺は廊下を歩き、いつも妻がいるリビングのドアを開けた。


「おい、だから返事ぐらい…………は?」

ここで話を戻そう。前々で俺はビームなんてうてないと思っていたし、テレポートなんてできないと思っていた。

その考えは今も変わらない。そしてこれからも一生その考えは変わらないであろう。

だが、一つ考えが変わった。


「なんで…………何で………」

それは…


「女子高生が寝てんだ……?」


非日常的なことも起こるということだ。


俺はカップに入れたコーヒーを飲みながら窓から外を見つめた。やはりこの状況が信じられない。いつも教師として女子高生は見ているが、これはまたナイスボディだ。それに、顔も可愛い。しかし、着ている制服も俺が先生をしてる高校の制服と同じだ。流石に先生が生徒に手を出すなど、そんなNTR漫画みたいなことはできない。少し話をしてみたいが、こんなにもぐっすりと眠っていると起こすのも悪い気がする。


「……にしても、すげー可愛いな。流石に手は出さないが、連絡先ぐらい交換してもいいなじゃないか?」

昔の俺も妻と出会った時は衝撃を受けたな。にしても、なんか妻に似てるような…


「んー……ん?」


「お、やっと起きたか。なぁ、なんで君はこんなとこにいるんだ?まぁなんにせよ外寒いだろ?送ってくよ」


「ん?…あ、あんた、何格好つけてんの?」


「あ?おい、それが送ってもらおうとしてる人の態度か?お前が女だから優しく言ってるがなぁ、お前が男だったら………!」


「私、あんたの妻でしょ?」

またあり得ないことが起こった。


「……何?お前今度は女子高生コスプレにハマり出したの?お前みたいなババァが無理すんなよ」


「ババァじゃないわよまだ35よ。それに、あんた私のこと家に送るんじゃなくてホテルに連れて行こうとしてたでしょ?」


「あぁそうだよ!おかげでぺ◯たんと同類にならなくて済んだわ!」


「え?マジで連れて行こうとしてたの?流石の私でもそれは引くわよ。あんたはゴミだしクズだけど浮気はしなかったのに」


「は?何お前の話に乗っかってやっただけなのにマジで受け止めてたの?あ!もしかして俺にホテルに連れてってほしーのか!でもね、君みたいな子じゃ僕勃たないんだ!おつかれぇ!」


「いやw、何ずっと勘違いしてんの?ていうか、明日からどうするんですかって話よ」


「どうするも何も、俺はいつも通り学校に行く。で、お前はどうすんだ?いつもどうり会社に行くのか?」


「んー……どうしよっかな」

しばらく考えた後、彼女はこっちの方を見ながら少し恥ずかしそうに言った。


「あんたの学校に……行っていい?」


「あーぁ、別いいんじゃね?それなら多分来週からとかになるけど。流石に色々と用意しないといけないものもあるし」


「え?あんた私が学校に来るのにドギマギとかし…」

「めんどくせぇ女だなお前は!今ドギマギしねぇなら学校じゃ尚更しねぇわ」


「あっそ………ていうかあなた私がこの姿になっててなんでそんな驚かなかったの?」


「いや、女子高生の正体がお前だって知った時のショックがエグくて、お前が女子高生になってるとかどうでもよかったわ」


「あんたほんとにデリカシーのかけらもないわね。まぁいいわ。じゃぁ来週から学校行くってことで。おやすみ!」


「……おやすみ」

久しぶりにおやすみって言ったな。ていうか、さっきまで寝てたのに寝れるのか?


「まぁ……久しぶりに夫婦っぽいことできたからよかったか」


1週間後…


「橘立華です!通ってた学校が田舎の学校で慣れないところもありますが、よろしくお願いします!」

びっくりするぐらいの笑顔で、妻が可愛らしい声で挨拶をした。

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