窪内と娘
クライングフリーマン
色
「お金に色はついていない?ついているけどなあ。」窪内真二郎は呟いた。
新聞を折りたたんで、呟いた真二郎に、由紀恵は、こう言った。
「お金に色は付いていないとは、良いことをして得たお金でも悪いことをして得たお金でも、同じ額面なら同じ価値だという意味です。一方、お金に色をつけておいたからというのは、本来払うより多めに払っといたからねということになります。お父さん、どこかから、『色をつけて貰った』の?私に恥をかかすようなことしたの?言ってご覧なさい。」
「お前、教師になってから、嫌な女になったなあ。毎日風呂に入れてやった女の子はどこ行ったかな?」
「アルバム。」「え?」「アルバムの中にいるわ、ちゃんと。今の私もいつかはアルバムの中に入るのね。」「お前、怪談かSFの話、してるのか?俺は、生身のお前がいい。母さんより肉付きが良くて、別嬪で・・・。」
「私ね、テキセンって呼ばれてるの.テキヤの娘だから。でも、誇りに思ってる。エロ親父でも、大切な父親よ。チュっ!!」
棒読みの台詞を言って、由紀恵は出て行った。
今日は日曜日。由紀恵は高校の教師だ。小さい頃から体育が得意だったから、オリンピックに出るか、体育の教師か?と思っていたら、英語の教師だ。テレビの影響かな?
学校の許可を得て、ボランティアで英語を教えている。落ちこぼれは落ちこぼれ、だと思うのだが、それを言うと、後が恐い。
考えていると、専務がやって来た。
「社長。明日からの予定表です。明日は月曜日で清掃業の方はお休みです。」
専務はすぐに帰って行った。家は隣だが、ケジメはつけられる奴だ。
会社組織にし、管理官から紹介して貰った、区役所のゴミ収集は、テキヤだけでは経営が苦しいから「渡りに船」だった。
昔は「シノギを競った」他の組も、同じような形の会社だ。時々、レクレーションで野球大会をする。
あっと、この言葉は以前、由紀恵に叱られたんだった。「お父さん。それ、意味おかしいわよ。しのぎ【鎬】 を 削(けず)ると混同していない?互いの刀の鎬を削り合うようなはげしい斬り合いをする。転じて、はげしく争うことを『しのぎを削る』って言うのよ。」
確かになあ。『あのお方』の為に『助っ人』に行くことはあっても、刀は使わず、バットだからなあ。
そう思って、真二郎は、傍らの写真立てをスライドさせた。表面は亡き妻の写真だが、スライドすると、『あのお方』の写真が出てくる仕掛けだ。
『あのお方』は『平和への案内人』として、この『妙ちきりん』な衣装を着て闘う。
俺も遠山も、小堺も心酔しているお方だ。女房よ、許せ。ただの憧れだ。
ただ、『あのお方』の色に染まっただけだ。
―完―
窪内と娘 クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
130越えたら死ぬんか?/クライングフリーマン
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
だからオワコンって呼ばれる/クライングフリーマン
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます