第34話 一件落着
僕と阿修羅君は戦いが終わり、デパートの屋上を去ろうとしていた。
すると突然、屋上のドアが開いた。
「 紫電君! こんなところに! 大丈夫ですか!」
「 探したんだよ紫電君! って顔から血が……。絶対殺してやる! クソ野郎!!」
ドアが開いたと思った途端、山君と一途川さんが僕に声を掛けた。
山君と一途川さんの後ろには、愛宮さんと十六夜君の姿もある。
「 私の紫電君に何してんだよ! 殺してやる!!」
一途川さんが包丁を片手に阿修羅君の元へ駆け出した。
まずい!!
僕は一途川さんの前に立ち、両手を広げた。
「 一途川さん待って! もう戦いは終わったんだ!!」
「 えっ!?」
僕が突然目の前に立ち塞がったため、一途川さんは驚きながらも足を止めた。
「 僕と阿修羅君の戦いは決着がついたんだ。それよりみんなはどうしてここが分かったの?」
僕の質問に山君が答えた。
「 紫電君が誰もいない場所に移動すると言っていたので色々探し回って、ここに辿り着いたんです……」
「 なるほど……。わざわざ探してくれたんだ」
「 すみません。紫電君の事が心配でみんなに言ってしまいました。それでどうなったんですか?」
僕が答えるより先に阿修羅君が口を開く。
「 俺の負けだ。俺は紫電に負けた」
「 えっ!?」
山君は目を見開いて驚いた。
驚いている山君に阿修羅君は声を掛ける。
「 オカッパ……。この前はいきなり殴って悪かったな」
阿修羅君の謝罪を聞いて山君はさらに驚いた。
「 えっ!? ちょ!! いきなりどうしたんですか!? 阿修羅君が僕に謝るなんて!!」
「 お前も聞いてたろ。俺が紫電に負けたらお前に謝るって」
「 そ、そうでしたね……。ま、まあ僕はもう気にしてませんし、紫電君が無事ならそれでいいですよ……」
山君はそう言い、続けて僕の方を向いた。
「 それにしても紫電君……あの阿修羅君に勝っちゃうなんて本当に凄いですね……」
「 いや、正確には勝ったわけではないんだ」
僕はみんなに勝敗の事や阿修羅君の中のルールについて説明した。
説明し終えた後、山君が口を開く。
「 なるほど。紫電君が勝ったというのはそういう事だったんですか……。それにしても、相手に本気を出したら負けという阿修羅君の考え方は凄いですね……」
「 だよな。これじゃあ僕、あんまり勝った気しないんだよな。実際の喧嘩では負けてるわけだし」
僕の呟きに阿修羅君が反応した。
「 俺の中ではお前の勝ちだ」
阿修羅君はそう言って、さらに話を続ける。
「 正直ここまで強いとは思ってなかった。それに紫電以外にもそこの包丁女も結構強かったし、この先学校に行き続けたら面白い事もありそうだな」
阿修羅君は僕の目を見てニヤリと笑う。
「 またやろうぜ紫電。これからも俺を楽しませてくれよ?」
阿修羅君はそう言うと屋上を去っていった。
「 よく分かんないけど、とりあえず一件落着って感じか?」
これまで黙っていた十六夜君が呟いた。
「 そうみたいね。話が終わったのなら今日はもう遅いし帰ろうかしら」
愛宮さんの言葉に一途川さんが反応する。
「 そうね。次こそは決着をつけよっかクソブスさん」
「 ええそうね、クソビッチさん」
そう言えば元々この2人がきっかけでデパートにきたんだったな。
なんかもう愛宮さんと一途川さん仲良さそうに見えてきたな。
僕たちはデパートを去った。
その帰り道、僕は阿修羅君との戦いを振り返っていた。
「 阿修羅マジで強かったな〜」
『流れ八式』を使っても勝てないとは思っていなかった。
まあでも、なんだかんだあったけど、阿修羅君の件について一段落したし良かったな。
だけど……。
「 次は僕が勝つから……阿修羅君……」
僕は空を見上げてそう呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます