第25話 決着!?
阿修羅君のパンチを腹部に喰らった僕は膝をついていた。
「 大丈夫!? 紫電君!!!」
一途川さんが僕の元へ駆け寄ってきた。
「 まあ、なんとか大丈夫だよ……」
正直あんまり大丈夫じゃないけどそう答えた。
「 これで終わりだな」
阿修羅君は呟き、僕の元へゆっくり歩く。
どうする……
僕は幼い頃から独学で鍛錬し続けてきた。
そして自分で編み出した技がいくつかある。
それに戦って分かったが、阿修羅君の強さは次元が違う。正直
……。
いや、弱気になるな!
考えてる時間が勿体無い!
僕は覚悟を決め、ゆっくりと立ち上がり阿修羅君を睨みつける。
「 へー、まだやんのか。頑丈だな」
阿修羅君は余裕の笑みを浮かべている。
……。
「 いくぞ阿修羅君。これからが僕の本気だ」
「 へへっ、面白ぇ。こいよ」
僕は阿修羅君の元へ駆け出す。
いくぞ阿修羅銀三!! !
これが僕の……。
「 もうやめて!!!」
「 え?」
僕が駆け出した瞬間、僕と阿修羅君の間に如月さんが割って入った。
如月さんは両手を広げ、僕と阿修羅君の戦いを止めに入ったのだ。
広げた両手は震えており、如月さんから恐怖の感情が伝わってくる。
「 もう喧嘩なんてやめてよ!! ここは学校の教室だよ!! 喧嘩をするところじゃない!!」
僕と阿修羅君は動きを止め、如月さんの言葉を聞く。
「 2人とも一旦冷静になって! 暴力なんかじゃ何も解決しないよ! 」
如月さんの叫び声が教室に響いた。
黙って話を聞いていた阿修羅君はゆっくりと口を開いた。
「 あー。いるよなこういう女。だるいわ〜、完全に冷めた」
阿修羅君はそう言うと僕らに背を向けた。
「 紫電だったな。覚えたぜクソ陰キャ。暇つぶし程度で学校に来たんだが、お前と会えたのはいい収穫だった。お前がいりゃあクソみたいな学校生活も少しは楽しめそうだな」
そして、阿修羅君は最後に僕の方を振り向いた。
「 今度は周りに誰もいない場所で俺とやり合おうぜ」
阿修羅君はそう言うと教室を去っていった。
……。
阿修羅君……。すごい奴だったな……。
でも、次戦う時は絶対に負けない!!
僕は心の中でそう誓った。
「 あいつは敵前逃亡……。つまり、この戦いは紫電君の勝ちだね!!」
全然空気を読んでくれない一途川さんが満面の笑みで声を上げた。
僕は一途川さんを無視し、如月さんに声を掛ける。
「 ごめん如月さん。山君が殴られて頭に血が上っちゃったよ。君が止めてくれなかったら収拾がつかなかったと思う。止めてくれてありがとう」
如月さんは僕の言葉に首を横に振った。
「 ううん。私ももっと早く止めに入っていれば良かった。最初は何が何だか分からなくて何も出来なかった……。それに紫電君の気持ちも分かるよ……。友達が殴られたらそりゃ怒るよね。元々、阿修羅君が山君に暴力なんて振るわなければこんな事にはならなかったのに……」
如月さんと僕の会話に山君が割り込んでくる。
「 その通りです!! 阿修羅君が僕を殴り飛ばさなければこんな事にはならなかったんですよ! つまり阿修羅君が全部悪いんです!!」
山君は大声でそう言った後、メガネをクイッと上げて僕の方を見た。
「 それにしても紫電君。あなたちょっと強すぎじゃないですか? あの "災厄の阿修羅" と互角に戦えるなんて」
「 じ、実は僕、昔ちょっと格闘技やってたんだよ」
僕は頭に手を当てて、とりあえずそう答えておいた。そしてこの話について深掘りされないよう、すぐに話題を切り替える。
「 それはそうとみんな本当にごめん。プリントの貼り付け作業をするどころか、机をグチャグチャにしちゃったよ。片付けもプリントの貼り付けも全部僕がやっておくからみんなは先に帰っていいよ。迷惑かけたしこれくらいはしないとね……」
僕はそう言ったが……。
「 何言ってんだよ。一緒にやった方が早いだろ。それに紫電、お前さっき阿修羅のパンチモロに喰らってたろ。大人しくしとけって」
「 暁君……」
「 ま、まあ、同じ班だし一緒にやるのは当然よね。べべべ別に、あんたの怪我を心配したりとかしてないんだからね! 勘違いしないでよね!」
「 紫電がこんなに強いとは思わなかったよ。あんたがいなかったら阿修羅に何されてたか分かんないしね。だから迷惑だったとか思ってないよ」
「 金谷さん……夕暮さん……」
「 そうですよ紫電君! 君の強さには驚きましたが、君のお陰で阿修羅君からの被害は最小限に収まりました。それに、僕のために戦ってくれてめっちゃ嬉しいです!」
「 紫電君めっちゃかっこよかったよ! さすが私の王子様!」
「 山君……一途川さん……」
「 そういう事だから、みんなで一緒にやろっか!」
「 如月さん……。みんなありがとう。僕、このクラスで良かったよ」
阿修羅君と戦った後、みんなはどう僕に接するのか不安だった。
正直、怖がられたり距離を置かれたりすると思っていた。
でも全然違った。
転校してきて色々あったけど、この学校に転校してきて良かったと本気で思った。
「 じゃあみんな続きやろっか!」
如月さんの声掛けとともに、それぞれ作業を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます