春が逃げる

琥珀糖。

プロローグ

 『続いてのニュースです。今年の自殺率は去年よりも1.5%増加しており__。』

 アナウンサーが差し障りなくニュース原稿を読んでいく。外は晴れ晴れてしていて桜も満開なのに、画面の奥では暗く重い話。せっかくの爽やかな朝が台無しだ。

 「晴人はるとくん、ご飯の時間ですよ。」

 そう言いながら看護師さんが朝食を持ってきてくれる。

 病院という質素な場所は世界で一番嫌いだ。こんな所にいるなら、皆が嫌だという学校に通いたい。隣の人との教科書を見せ合いっこ、昼休みの鬼ごっこ。どれもが僕にとっては太陽にように美しく見える。

 いつか、僕も学校に行けるのだろうか。目を閉じながら、瞼の裏で叶うかも分からない妄想をするとともに眠気が襲ってくる。少し冷めたご飯を残して眠りについた。

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