私はなぜ創作するのか

砂上楼閣

第1話

なぜ創作するのか。


改めて考えてみると、ぱっと答えは出ない。


なぜ?ホワイ?


そういえば私はなぜ、創作をしているのだろう。


今となっては隙をみつけては小説とは名ばかりの妄想を書き連ね、形だけ整えて毎週のように投稿してはいるけれど。


暇さえあれば何かしら小物とかを作ったりはしているけれど。


そもそも私の創作の起源はなんだっただろう。


初めての創作は、なんだったのだろう。


子供の頃のモノづくりや、学校の授業での工作を除けば、やはり小説だろうか。


作品などと素人の私が言うのは気恥ずかしいが、初めて小説を不特定多数の目に触れる場に送り出したのは、社会人になってからだった。


学生時代に書き溜めていた、それこそ日記のように毎日文字にしていた妄想話を自分なりに編集して、緊張しながら小説投稿サイトに投稿した。


長編、短編、ポエムじみたもの。


これまでに書き溜めてきた黒歴史を闇に葬り去るのが惜しくて、拙いながらも次々と投稿した。


一度吹っ切れてからは、工具などを買ってきて小物を作って人にプレゼントしたりするようになった。


書いては投稿し、作っては誰かに贈る。


私にとって創作は自分の中では完結しないもの、なのだろう。


自分以外の誰かの目に、手に触れられてようやく創作物になる、のだと思う。




昔から本を読むのが好きだった。


きっかけは、そう、母が読書家だったからだ。


読書家と言っても母が読む本のジャンルは偏っていたけれど。


私はとにかくジャンルを問わずになんでも読んだ。


コミュ障、というか人に合わせるのが苦手だった私は自分の殻に籠ることが多く、そんな私が夢中になれたのは本の世界だった。


昔から何かを作るのが好きだった。


きっかけは、親が大工だったからだろう。


身の回りには工具やら木片やら、子供心をくすぐる物が溢れていた。


子供の頃は何かを作るというより、同じ作業を延々と続ける方が好きだった。


共同作業より、一人で黙々と作業している方が楽だった。


その時に閃いたものを好きに作りたかった。


一冊の本の形をした世界を感じていたかった。




誰しも持っているものなのかは分からないが、内にある世界を、自分の中にだけある世界を形にしたいと思っていた。


空想、妄想、想像。


もしかしたら、もしも、ありえたかもしれない、あるかもしれない、あったらいいな、こうかもしれない。


ぐるぐると頭の中で沸き出しては、時が経つにつれて忘れていってしまう私の世界。


ある日、いつもの日常の中で、命の危険が迫った時、ふと浮かんだ。


私だけの世界が、無くなってしまう。


誰に知られることもなく、まるでふっと沸いて形を変えながら浮上していく泡のように、水面に達すると同時に弾けてしまう世界。


形にしなければ、それは存在する事すらなく、生まれることなく、生じることもなく、無かったことになってしまう。


残しておきたい。


私だけでなく、他の誰かにも知ってもらいたい。


その時の私の世界を。


そう思った。




つまるところ、私にとって創作とは生きた証を残したいというエゴである。


例えそれが黒歴史と呼ばれるものであろうとも、無かったことにはしたくないのだ。


だから私は黒歴史を量産し続けるのだろう。


後から羞恥に悶えようと、私は私の創作を続けるのだろう。

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