第3話

人生で初めて殺気というものを感じたのかもしれない

甘えていた、今になってそう感じる。魔物?どうせ大丈夫だろ。そんな考えがあったのだろう。


周りを見るとみんなも同じように固まっていた。

しかしもう目の前にはゴブリンが迫ってきている。これはどうすれば……。


<マスター、スキルを使う許可をください。このままだと…。>


おお、そうえばこいつがいるんだった。しかし、


(どうやって設定するんだ?)

<念じてください、いい言葉があるのでそれを心の中で言うのもいいです。>


え、これを?……やるしかないのか。


(ヘカテに命じる、読書家の制御を。)


恥ずかしい、どこの中二病だよ、って突っ込めるぞこれは…。心の中でよかった。口に出して言えとか言われたら正直なところ無理だったぞ。


しかしその効果は十分だったらしい。


<【読書家】発動 土穴!続けて、火球5連発。>


ヘカテが急いで叫ぶと、ゴブリン2匹の足元にいきなり穴が開く。


そのままゴブリンが落ちたと思ったら、周りにこぶし大の大きさの火の玉が浮き放たれた。

その球は見事にゴブリンたちに着火、ゴブリンたちは炎にのまれながら息を絶った。


気配が薄れたことを感じホッとする。周りのみんなもそんな感じだ。


「すごいじゃねえか!あんなことで来たんだな」 

「すごいわね、どうやったの」 

「気になるな」

「うん」


たちまち俺の周りに集まって来た。


「火事場の馬鹿力ってやつかな、意識したらできるようになった。」


ヘカテのことは黙っておく。

敵を騙すには味方からとも言う。今敵はないけどこんな世界だ、将来的にあるかもしれない。


「意識ねー? で、スキル名は?」

「【読書家】だな。小規模な魔法を扱えるんだとよ。」

「ほんとか?」

「嘘をつく必要がないだろ。」

「それもそうか。」


そう話し合いながら俺は大事なことを思い出す。


「あ、死体ってどうなった?」

「見たくないから自分で行ってくれ、後自分のスキルの効果は黙秘でいいんじゃないか、人に知られたくない人もいるだろうし」

「そうだねー裕也のくせに珍しく良いこというじゃん。」

「珍しくってお前…、ほんとのことだけどさぁ。」


裕也が珍しく落ち込んでるようだ。ま、すぐに直るだろう。そんなことを考えながら先ほどあけた穴まで来た。


(ヘカテ、これってどういう魔法なんだ?)

<スキルのところの小と書かれてことでわかると思いますが、比較的簡単な魔法で柔らかい土に穴をあけることができます>

(へーそんなもんなのか。)


穴まで行くと、そこには直視することが出来ないような姿があった。

仮にも人に似ているものだ。そんな死体なんて見ていていいものじゃない。目に入ってきているのは焼かれ、爛れていた。


魔石となるとラノベどおりならここから取り出さないといけないんだが。先ほど落ちていた二本目の包丁を持ちさばいていく。一本目、捌いている途中で見事折れてしまった。


予想どおりに中から黒い石が出てきた。少し光沢も帯びているな。これが魔石か。


魔石を全方向から観察していると


<【魔石取扱人】の中で魔石交換が解禁されたようです。>


ヘカテからうれしいお知らせが届いた、急いで確認しよう。

そう思い、プレートを開いている途中だった。



《確認しました、機体名【スマートフォン】の機能が一部回復、魔素を媒体にして。文字が打てるようになりました。》


あの声がまた響き渡ると、驚きの情報が流れる。


なんだと、スキルよりもこっちだな。そう判断した俺は急いで確認するためにスマホの電源がついた。


おお、やったな。掲示板に情報とか出てるんだろうか。


お、あった。


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