夢の記録
幸崎 亮
記録1-記録10
記録1:浮いてしまう夢
<概要>
身体が勝手にフワフワと空中に浮遊してしまう夢
<登場人物>
自分自身、見知らぬ他人(いわゆるモブ)
<場所>
主に都市部
<区分>
悪夢/ミステリ、ファンタジー
<タグ>
浮遊、落下、背中、汚れ、怪我、不快な臭い
<要注意事項>
特になし
*
<内容>
主役となるのは主に自分自身。夢の中の主人公と完全に同化している状態。商店街やトンネルや体育館の中など、天井の高い場所に居る夢を見た際に、高確率で発生する。また、稀にビルやマンションの真上など、屋外を浮遊する夢を見る場合もある。いずれの場合も自身の意に反した飛行であり、空を飛んでいるといった爽快感は皆無。視線は常に真下を向いており、自身が容易には着地することの出来ない高所に居ることを意識させられる。屋内を浮遊している際には背中が天井に押し付けられ、強く圧迫される感覚や、いつ落下してしまうのかといった不快感が強い。
<事例1>
主人公(幸崎)の近所に存在すると思わしき商店街を歩行中に――何者かに追われるなど――なんらかの要因によって〝ジャンプ〟をすることになる。すると通常よりも長い滞空時間と高度でジャンプを実行することが出来、当初は軽い爽快感を得ることが出来る。しかし数度のジャンプを繰り返した後、次第に落下速度が低下してゆき、最終的には地面に足が着く前に、再び身体が浮き上がることとなる。この状態になると超人的な身体能力を発揮出来る爽快感は皆無となり、ただひたすらに〝着地すること〟のみを思考することとなる。何度かは天井のアーケードに背中を押し付けられることとなり、埃や泥で汚れたり、照明や金具などで火傷や裂傷を負ってしまうこともある。この際の痛みは感じないものの、汚れの臭いや不快感だけは強く感じる。
多くの場合は途中で「これは夢だ」ということに気づき、夢の中で覚醒することによって睡眠状態が終了する。このため夢の記憶が失われる機会に乏しく、強く印象に残っている。なお、夢の中で〝夢であること〟に気づき、自由に行動するなどの明晰夢状態に入ることには成功していない。
<事例2>
主人公(幸崎)が屋外を散歩中、トンネルの内部に入ることによって発生する。トンネルは一般的な〝廃トンネル〟に近い状態で、激しい汚れがあり照明等は付いていない。また、このトンネルに侵入する直前、植物に覆われた坂道や、螺旋階段のある高速道路などへ立ち寄る場合が多い。これらの場所は夢を見ている状態にて、〝祖母の家の近く〟だと認識されている場合が多数を占めるが、幸崎の祖母が住んでいた場所に、こうした場所は一切存在していない。
このトンネルの内部を歩行中、不意に身体が浮き上がり、汚れた天井に背中を擦りつけられてしまう。多くの場合、トンネルの天井は継ぎ目のある石かコンクリート製であり、それらとの摩擦による不快感を覚えることがある。また、ウサギやネコやイヌといった、動物が登場する場合も多い。不意に身体が浮き上がる事態の他、これらの動物を保護するために自ら跳び上がったと思しき場面もある。こうした場合は天井付近に棚のような隙間があり、そこを目指して跳び上がっている。
しかしながらいずれの場合も着地する手段がなく、天井に背中を打ち付けたまま途方に暮れることになる。多くの場合、気づけば抱えていた動物が居なくなっており、「これは夢だ」と気づくことによって覚醒する。しかしながら商店街の事例とは違い、最後まで夢だということに気づかず、不快感を伴ったまま目が覚めてしまう事例が圧倒的に多い。したがって基本的に「悪夢を見た」という感想を抱く。
<事例3>
主人公(幸崎)が広々とした体育館の天井に、背中を打ちつけられている。この夢を見た場合は前後の脈絡がなく、どういった経緯でこうなってしまったのかなどは不明。体育館は必ず夜であり、照明は付いていない。しかしながら薄暗いながらに光源はあるようで、床までの距離などを視認することが出来る。
体育館には出入り口などが存在しているが、何者かが立ち入ったことはない。また、体育館の床にはバスケットボールらしき球体が落ちていることがあり、これとの距離感によって〝落下してしまうこと〟への恐怖が煽られる。天井には自分自身以外の物はなく、ボールが挟まっているといったこともない。
どうやって着地したのかは不明であるが、多くの場合は体育館外へと脱出することが出来る。その際には身体は浮いておらず、しっかりと地面を歩いている。体育館外は寂れた繁華街といった街並みで、多くの場合は料理店と雑貨店、本屋などが建ち並んでいる。その後は雑貨店に立ち入ることが多く、店舗内では緑色を基調とした、ビニール製の品物が多く販売されている。いずれの店舗もレトロで薄汚れており、立ち入った際にはある種の不気味さを感じ取ってしまう。雑貨店で品物を選んでいる際、迷っている間に思考が次第に活性化され、自然と覚醒してしまう。このため未だ実際に、なんらかの商品を購入したことは無い。
<事例4>
主人公(幸崎)が、現代日本と思われる街の上空を浮遊する。どのようにして現状に陥ったのかの脈絡がなく、前後の繋がりは不明。視線は常に地上を向いており、飛行しているという爽快感は皆無。高所に居るという息苦しさと、恐怖心のみが存在する。時おり企業の看板などが目に入るものの、記憶には残っていない。
とにかく着地することだけを考えてはいるものの、その意に反して身体はどんどん上昇する。この夢の中において、座布団やクッションといった、小さく柔らかい物体を抱きしめていることが多い。なお、実際の睡眠時には、枕以外にそういった品物は近くに置いていない。また、多くの場合、主人公はパジャマ姿であるが、幸崎自身は幼稚園の時以来、パジャマを着たことがない。また、この夢の中において、主人公は実年齢と同等だと思われる。
眼下にはビルやマンションの屋上が並び、地上は無理だとしてもそれらの屋上に着地できないかと模索する。しかしいずれの場合においても、着地に成功した試しはない。この夢の場合は自分自身ではなく、抱きしめている座布団やクッションが浮力を有していると認識していることが多く、それらがすり抜けてしまうことを極度に恐怖しているきらいがある。温度を感じることはないが、風圧を感じることはあり、浮遊している高度も相まって〝浮く夢〟の中では最も不快感が強い。
稀に「これは夢だ」ということに気づき、自由に飛行することが可能となる場合がある。しかし、この際においても最優先事項は〝無事に着地すること〟であり、飛行を楽しむといった状態にはならない。この状態となった場合、自宅マンションのベランダがゴール地点となっていることが多い。しかしながら〝それ〟を認識した時点で思考が活性化状態に入ってしまい、夢から覚めることとなる。
*
<総評>
どの事例においても〝落下の恐怖〟や〝背中の痛み〟、あるいは〝埃っぽい黒ずんだ汚れが付着すること〟が中心となっていると感じられる。しかしながらこの夢を見てしまった直後であっても、背中に痛みを感じることはない。因果関係は謎。
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