FULLMETAL;School

@Saku_Rui

第1話桜舞い散るユートピア

 桜の舞い散り、別れた出会いが交差する季節。15、6才にとってはそれが待ちくたびれたものであろう。その想いは全国、いや万国共通のものであり、その思いを持った者達はここ、「特別都市 桜莉」にも溢れんばかりに集まっていた。


 まず、桜莉とは何か、簡単に言うならば、学園都市だ。20年前、政府が「学問、戦術的研究もとい生徒自治の先進性の象徴」を作り上げるべく、主体となって東京湾に浮かぶ人工の孤島に高等学校とそれらを通う生徒が十分収容可能な住居施設、またその空白を埋めるような飲食店やエンタメ施設が立ち並んでいる。そして、ガンショップ。つまりは、「銃と学生の学生による学生達のためのユートピア」と言うわけだ。


 そしてその桜莉のB学区に鎮座する高校、「桜蓮学園」にも、ある男子高校生がひとり、輝かせた黒と赤い目で自己紹介をしていた。


 「不破いつきです。古文で破れずって書いて、あと一つと輝くって漢字でいつきって言います。福岡出身です。趣味は格ゲー、レースゲームとサバゲーです。あとは…うん、よろしくお願いします。」


彼は元気な声でそう言い、足早に机に戻った。割と緊張していたらしく、黒と赤の目両方は泳ぎ、白い肌には若干赤みがかかっており、早くなった鼓動を落ち着かせようと長い襟足を結い直しつつ、一息ついていた刹那、彼は隣にいる人に声をかけられた。


「お疲れ、しかしまぁ、ここでも隣とは。」


目が隠れそうなマッシュヘアの彼がそういうと、いつきは答えた。


「まぁね、まさか部屋だけじゃなくて、席も一緒だと、仲良く慣れそうだよ。そういえば、三谷君の下の名前を聞いてなかったね」


彼は思い出したかのように彼に言った。


「エイト…三谷瑛人。今日は大失敗しちゃった。」


彼は落胆した表情で、少し俯いていた。いつきはまぁまぁと宥めていると、教師が黒板の前で口を開いた。


「はい、じゃあ、次は先生から、ここ一体、つまりはこの都市の説明をしていきます。まず特徴として、ここはAからEの学区で分けられています。……そして学区ごとに最低三つの高校があり、またそれらの中心に、広場とあなた達の住宅施設が。そして、その家賃は…なんと無料です。また皆様には月々の支援金が割り振られます。まぁお小遣いのようなものと思っていいでしょう。」


そう教師が言い終わった瞬間、生徒達は一瞬の盛況を見せた。学生の仕事は勉強なんて言われたりするが、それを地を行くようなものであるから、無理もないだろう。その後も様々な説明の後、すぐに学校は終わった。号令の後、一輝と瑛人はすぐさま談笑に移ったが、そこに銀髪の、少し華奢な男子が2人に話しかけた。


「ねぇ、所持武装もう決まった?実は、決まってなくてさぁ、よかったら相談させもらおっかなって…」


彼がそう言うと、2人は思い出したかのような表情を浮かべた。そして一輝が答えた。


「あぁ、たしか月曜だっけ、申請の期限。たしか主軸にするメインウェポンと、予備用のサブウェポンで決めるやつだったね。それだったら、俺はもう決まってるよ。」


一輝がそういうと瑛人も続ける。


「…僕も、一応」


彼らの反応に対して、その銀髪の男子は少し落ち込んでいた。

一輝はそんな彼をみて、2人をファミレスへ誘った。


 …………一輝はファミレスに着いて、ピザを頬張りながら雑談をしていた。


「そういえば、えぇっと……咲夜くんだっけ。どんな戦い方がしたいとかってのは…ある?迷ってるって言ってたけど。」


咲夜は少し考え、少し恥ずかしがりながら呟いた。


「僕、あまり目立つのが苦手で…それでずっと陰ながら動くのが身に染みちゃっていて…。」


彼の言葉を聞いて、一輝は少々唸り声を上げ、そして答えた。


「それでいいじゃないか。陰ながら戦闘を応援する人なんて、分隊に1人でもいたら助かることこの上ないと思うよ。うーん、スナイパーなんて向いてるんじゃないかな。」


彼の励ましと提案を聞いて、咲夜は輝きを取り戻した。一輝の提案を、瑛人もそれに同意する。その後、一輝は何か思いついたように「あっ!」と言い、そして続ける。


「せっかくだから、明日休日だし体験できるガンショップに行かない?」


一輝のその提案に対して彼らは賛同の意を見せる。


「じゃ、決まりだね。明日2時からE地区ある…場所は連絡先交換して、それで伝えよっか。」


彼らはスマホを取り出して、その後、一頻り食事、雑談を楽しんだ後、ファミレスを後にした。

 ──バスに揺られてしばらくして、彼らは階段に登った後、思い出したかのように咲夜が2人へ言う。


「俺、こっち方面だから、ここでお別れだね。」


咲夜と2人の間の住居はどうやら隣だったようだ。


「というと、20000のところの団地だね。僕はその隣の19000の204号室で、瑛人は──」


一輝の言葉を半ば遮るかのように、瑛人が続けた。


「僕はその隣の205号室。いつでもきても大丈夫。」


そんな彼に対し、言葉を盗られた一輝は少々驚きの表情をみせる。そんな2人を見て、瑛人の最後の言葉に、咲夜は嬉しそうにはにかむ。


「ありがとう…それじゃ。」


彼がそう言って歩いた後、こう漏らした。


「入学して、初めての友達…今度遊びに行こうかな。」


それとは別に、一輝と瑛人は各自部屋に戻るかと思いきや、一輝の家にいた。どうやら、一輝の初めての桜莉の夜は、暫く更け、また賑やかなものになるらしい。

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