第44話 最後の休息
決まった。ルピルの覚醒した能力を頼り、
まずは、
「正確には、逆位相の加工を施して磁力反応と星鉄反応、そして引力反応を『
「うん。多分できるよ」
「その前に、砂ウサギを集められるだけ集めろ。月面から
全ては
「…………いくよ」
ルピルは、
「それで良い。月面へ上がるぞ。アナ月下」
「妾の操作能力では不充分じゃ。お主も手伝え、ミミ・ネザーランド」
その後、一同はルピルを連れて月面へ。アルピナが造った星鉄の屋根の下に、ネザーランドの用意した高速虚空船、王族専用機と発射台がある。
「アナ姫様。月下からの指示で……」
「リーダー! 俺達は何をしたら良い!?」
アナとミミは、それぞれワタオと部下達に呼ばれて行ってしまった。
「ルピル!!」
「わっ」
ロゴマークの無い見慣れた星間車に入って力強く迎え入れたのは、アルテだった。彼女はルピルの自身の胸に擦り付け、泣きながら抱き締めた。
「……良かった。怪我もなくて」
「うん。ありがとう。アルテさん」
感動の再会もそこそこに、ユリウスの元へ向かう。
「ユリウスさん」
「来たか。もう少し待っててくれ。きちんと寝ているか? 食事は? 今の内に休息を取っておいてくれ」
「……うん」
「エリーチェ。計算手伝ってくれ。キルトも、
「はい!」
「分かった」
ここはまだ無事だが。
屋根の外を見ると、既に星間車くらいの大きさの星鉄が降っていた。大きな音も響いている。あの大きさの塊が、屋根に当たっているのだ。
***
「あなたがルピルね」
「うん」
屋根は、巨大な二枚貝のようにして作られていた。その一番奥の方に、屋根の硬度と形を維持するアルピナが居た。
すぐ側に、目を覚ましたリリンも。
ふたりは
「リリン」
「ルピル……」
ルピルを見て、リリンは立ち上がった。よろよろと駆け寄り、両手を繋いで。
ふたり、しゃがみ込んだ。
「あたしも、鉄ウサギなんだって」
「聞いたよ。吃驚した。僕と一緒だ」
「うん……」
ルピルは、そこから月面の様子を観察した。リリンと並んで座り、手を繋ぎながら。
皆慌てている。急いでいる。命がかかっているのだ。そして、人類という種族の存亡も。
「リリン。僕ね。……親、居ないんだって」
「ルピル」
再び、泣きそうになった。自分は天涯孤独。どころか、人間かどうかも怪しい。誰かの目的の為に、人為的に造られた命。怒りの矛先は、始めから存在していなかった。
リリンはそれを見て。
「髪」
「えっ?」
リリンは、ルピルの白髪を見た。何も手を加えていない。撫でた。真っすぐ伸ばした長い髪。
「いつ解けたの」
「えっと……。地下で、悔しくて爆発しちゃって。多分その時」
「そう。じゃあまた結ばないと」
「……要るかなあ」
「要るのっ」
ここには寝袋と食糧も積まれていた。あの味気ない最低限の栄養食ではない。動物の肉を干したものや、植物のサラダなど。
リリンと分け合って食事を摂った後、仮眠を取った。
***
「ルピル」
「!」
時間にして、1時間も寝ていないだろう。だが、不思議と寝覚めは良かった。
大人の優しい声で起きたのは、初めてのことだった。
「アルピナさん」
「ママ」
ふたり、アルピナの膝の上だった。ルピルは恥ずかしくなり、すぐに立ち上がる。
「ふふっ。鉄ウサギなんて、これだけ減ったらもう、残った皆家族みたいなものよ」
「………………」
リリンを産んだ実験と、ルピルを造った計画は。自然物派と人工物派が、それぞれ現状を打破しようと『鍵』、そして『
だがアルピナは、満足したような表情だった。多数の『夫』と『娘』を喪って。それでも最後に残ったたったひとりのリリンと再会して。
「良かったね。リリン」
「うん。ありがとう。ルピルもだからね。あたしの……妹ね」
「えー。僕がお姉ちゃんじゃないの」
「それは無い」
「ふふふ」
ズドン。
「!」
その時、一際大きな轟音が鳴った。見ると屋根の一部に穴が空いており、巨大な星鉄の塊が顔を覗かせている。
「時間、ギリギリよ。行ってらっしゃい」
「……うん」
リリンと、手を繋いで。
「行ってきます。ママ」
『母』に見送られて、その場を後にした。
***
「発射する
「2隻?」
マスクをしたユリウスが、月面で迎えた。既に乗り込むべき
ユリウス、アルテ、アナ、ワタオ。
ミミ、クーロン、エリーチェ、キルトがそこに揃っていた。
さらに、革命軍の兵士と
「ああ。お前と同じことを、
「……そっか。
「わたしを含めた、残りの鉄ウサギ数人だ。こちらは心配要らない。
「……分かった」
ミミ達の組はもう出発らしく、
そのひとりに。クーロンが居た。
「クーロン」
「…………」
リリンが呼び止める。
「俺、一応革命軍だからさ。こっちに行くよ」
「バカ」
「ごめん」
リリンはもう知っている。
クーロンのお陰で、本当に、命が助かったことを。
「ルピルもごめんな。俺……」
「良いよ。クーロンはリリンを守ったんだから。それが正しい。だから全部終わったら、またちゃんと会って、話さないとね」
「…………ああ」
クーロンは最後まで申し訳なさそうにしていたが、リリンは少しだけ満足そうだった。
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