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第1話
目が覚めるとそこは自宅の自分の部屋だった。少年は上体を起こしてベッドの縁に腰かけた。
夢を見ていたような気がする。それも鮮明で、事細かく記憶していた。一昨日来、毎日見続けていた夢だ。それも、時間の流れがある奇妙な夢だった。
時間を確認すると六時三分だった。
少年は右手を顎に当てた。たしか、今見ていた夢でも同じ時間に目が覚めたはずだ。
少年の目がゆっくりと天井に向けられた。これも、夢で見た少年自身の行動だった。目に映っているのは、白い天井だった。病院の天井も、多少色味に違いはあったが白色だった。
この奇妙な記憶の一致には、なにか意味があるのだろうかと考えてみたが、正直お手上げ状態だった。ただ、深く
少年はもう一度時計を確認した。支度をして部屋を出るまでまだ時間があった。どうしても調べたいことがあったので少年は、ノート・パソコンの電源を入れた。起動するまで少し時間があったので、一階へ下りて行った。
あら、今朝は早いのね、既に起きていた母が声をかけてきたので少年は、目が覚めてしまったんだと疲れたように返事をした。
ミネラル・ウォーターをコップに注いで部屋に戻ろうとすると、大丈夫、と母が心配そうに尋ねてきた。うん、大丈夫、少年はつとめて明るく返事をした。心配事があったらなんでも相談してねと母が話したが、自分がなにをしようとしているかを考えると、とても直視できなかった。横目で見ると、母は顔を曇らせていた。少年はいたたまれなくなり、気づかないふりをして部屋に戻った。
部屋のドアを閉めると、少年は深く溜息をついた。母にあのような悲しそうな表情をさせてしまっていることが申し訳なく、自己嫌悪に陥っていた。それでも、自分にはやらなければならないことがある。義務でも責任でもなく、それは、大切な人たちに対する執着かもしれない。家族を守ることが今の自分にしかできないのであれば、悪魔に魂を売ることだとしても、決して躊躇はしない。なにがあろうと成し遂げてみせる、そう自分に言い聞かせて、気持ちを無理やり切り替えた。
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