千年の螺旋 - 夢幻のシンギュラリティ

中村卍天水

第1話 日常の裂け目

6:00 AM - 目覚め

ゼロは目覚まし時計の音で目を覚ました。いつもと同じ朝。いつもと同じ部屋。いつもと同じ自分。彼は深いため息をつきながらベッドから起き上がった。

「おはよう、ミルク」

愛犬のミルクが尻尾を振りながら近づいてきた。ゼロは機械的に動作を繰り返す。服を着る。顔を洗う。歯を磨く。

彼の脳裏に、奇妙な夢の残像がちらつく。螺旋状の渦。無限に広がる宇宙。そして、どこかで聞いたような低い声。

「気のせいだ」

ゼロは首を振り、その思いを振り払った。


7:30 AM - 通勤

いつもと同じバスに乗り、いつもと同じ景色を眺める。しかし今日は何かが違った。窓の外の風景が、わずかに歪んで見える。建物が螺旋を描くように曲がり、道路が波打っているように感じた。

「おかしいな...」

ゼロは目をこすった。しかし、その歪みは消えない。


8:00 AM - コンビニ到着

「おはようございます」

先輩の山田さんが声をかけてくる。ゼロは答えようとしたが、声が出ない。代わりに、低く歪んだ音が喉から漏れた。

「どうしたの?体調悪いの?」

山田さんの声が遠くに感じる。ゼロの視界が揺れ始めた。棚に並ぶ商品が、まるで生き物のように蠢いているように見えた。


9:00 AM - 開店

開店のベルが鳴る。しかし、その音は通常とは全く違っていた。低く、長く引き伸ばされたような音。まるで、時間そのものが歪んでいるかのようだ。

最初の客が入ってきた。ゼロは「いらっしゃいませ」と言おうとしたが、口から出たのは意味不明な言葉だった。

「なむみょうほうれんげきょう」

客は奇妙な表情でゼロを見た。その瞬間、客の顔が歪み始めた。目が大きくなり、口が広がり、全体が螺旋状に回転し始める。

ゼロは悲鳴を上げようとしたが、声は出ない。彼の意識が遠のいていく。

そして、全てが暗転した。

次に目を覚ました時、ゼロは見知らぬ場所にいた。灰色の空。荒廃した大地。遠くには巨大な螺旋状の建造物が見える。

そこに、一人の人影が近づいてきた。

「よく来たな、ゼロ。私はセン。お前を1000年待っていた」

ゼロは混乱し、震える声で尋ねた。

「ここは...どこですか?」

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