メイドごっこ ~自称クールでお茶目な後輩メイドが転がり込んでくる~
大宮コウ
1.後輩メイド、玄関前にて待つ
本作は『第3回「G'sこえけん音声化短編コンテスト』ASMR部門投稿作品です。
コンテストの形式上、台本形式となっています。
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//SE 街中、遠くで電車が走る音が響く
//SE:視点人物が歩く音
//SE:歩く音、終了
//後輩、座り混む形で見上げているため、斜め下から聞こえる形で
「あ、先輩」
//SE:立ち上がる音
//正面から
//フラットな声色で
「はー、やっと帰ってきましたね」
//少し恨めしげに
「……遅すぎます」
//フラットな声色に切り替えて
「それにしても、こんな遅くに帰って来るだなんて、働きすぎじゃないですか? 会社に入ったばかりで忙しいかも知れませんけど。でも、働き過ぎは毒ですよ」
//間を置かずに
//最初だけ力強く、以降は自明であるようにきっぱりと
「そ・れ・に。後輩を待たせるのは、もっとよくないことです」
//不思議そうに
「……なんですか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
//間を置かずに
「私、橘みずき。先輩の不承の後輩ですよ。このクールでインテリジェンス溢れる美少女は、他の人と間違えようがないはずです」
「学校を卒業してまだ間もないというのに、もう私のことをお忘れですか? 薄情な先輩ですね」
(先輩、そこじゃないと答える)
「……え、違う? 聞きたいのはそうじゃない?」
//後輩、答えが元から分かっているように、わざとらしく
「じゃあ、なんでしょう。あと先輩が気になりそうなことと言えば……私が身につけている、この、メイド服のことでしょうか」
(先輩、肯定する)
//相手の様子を見て、少し溜めてから
「ふふ、今度は当たりですか。まあ、当然の疑問でしょう」
//自信ありげに
「これはですね、見ての通り、メイド服です」
//間を置かずに
「それもですね、そのへんで買ったようなぺらっぺらでミニスカなチープなものではなく、生地はしっかり、スカートの丈の長さもしっかり、お値段もしっかりなクラシカルなメイド服ですよ。かわいい中に、機能性も感じられて素敵ですよね」
「そして頭につけたこのフリルのカチューシャ。まごうこと無きメイド衣装です」
//顔を近づけて悪戯っぽい声で囁くように
「先輩、お好きでしょう? こういうの」
//距離感を普通に戻して
「以前、お話されていましたよね。メイド服が好きだって。私、ちゃんと覚えてますから」
//少し間を置いて
「……いえ、言われずとも分かっていますよ。先輩の疑問は。ただ、分かっている上ではぐらかしているだけです」
「久しぶりに先輩とお話しできたので、つい、饒舌になってしまいまして」
//あざとく、しかし抑揚の少ない声で
「なのでどうかかわいい後輩のお茶目だと思って、広い心で受け入れてくださいな」
(先輩、絶句)
//少し間を置いて
//調子のいい声で
「それではアイスブレイクもこなして場を温めたことですので、アツアツの話題をお一つ」
//間を置かずに
「私、住んでいた家が燃えまして」
(先輩、怪我はないかと聞く)
//少し間を置いて
「……あ、はい。怪我はありません。同じアパートに住んでいる方の火の不始末だったのですが、ちょうど家にいたので最低限必要なものは鞄につっこんで、それから一目散に逃げましたとも」
「なので、早急の問題は家がないことがくらい、でしょうか」
(先輩、なぜメイド服かの理由にはなっていないのでは……と渋い顔)
//相手の様子を見て、少し溜めてから
「……それがメイド服で先輩の家に来ることに、一体どう繋がるか、ですか」
「先輩が疑問に思われるのも当然です。その疑問に対しての答えはもちろんありますとも」
「先輩、昔、家にメイドがいたらなぁ、と。そうお話をされていましたよね、ね?」
//先輩の反応待ちの溜め
「……」
(先輩、それだけ? と問う)
//あっけらかんと
「……あ、はい。それだけですよ」
「なので、しばらく家に置いて頂けないかな、と。先輩の家に泊めて頂いている間、私、メイドになりますので」
「メイド業に従事したことはありませんが、私、こう見えて家事炊事など諸般のことは得意な自信があります」
「それに先輩も知っての通り、私、友達が少ないですから。こういうこと、頼れる相手はほとんどいないも同然でして……というか、先輩ぐらいです」
//わざとらしく悲しそうに
「実家は学校から遠いですし、お母さんには自分でなんとかしろと放り出される始末」
//わざとらしく
「ホテル住まいも一考ですが、先行き分からぬ現状、今後を考えてお金は節約したいですし」
//わざとらしく
「もし先輩に断られてしまえば、か弱い後輩が野に放たれることになってしまうでしょう……しくしく、しくしく……」
//間を置いて
「……ちらっ」
「……ちらちらっ」
//棒読みで
「あー、どこか止めてくれるような優しい先輩はいないかなー」
//間を置かずに
「……ちらちらちらちらっ」
//きょとんとした声で
「……どうしたんですか、先輩。そんな風に頭を抱えて」
「頭痛ですか? お薬、おわけしましょうか?」
(先輩、大丈夫だと答える)
「……いらない? 大丈夫? ならいいんですけど」
(先輩、とりあえず部屋に入って話そうと答える)
//きょとんとした声で
「あ、とりあえず中に入れと。はい」
//神妙な声で
「確かにメイド服の女が自分の部屋の前にいるのは、近隣住民からは何事かと思われてしまいますよね」
//キリリとした声で
「でも先輩、その点についてはご安心ください」
「通りがかった方々には、この橘みずき、一人一人にしっかりとご挨拶をしております」
「私、礼儀作法についてはちゃんとしている方であると自負していますので」
(先輩、頭を抱える)
//不思議そうな声で
「……どうしましたか、先輩。また頭を抱えて」
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