わたしは

山背大兄王子。

厩戸皇子、聖徳太子の息子です。


只。

平穏を望んでいた。


一族が。

笑いながら過ごせる日々を。


それだけを。

望んでいたのに。


蘇我入鹿。

お前のために私は滅びる。


愛する家族もろとも。


右足の傷がうずく。

草いきれの中を裸足で走ったから。


道なき道を。

乾く喉でゼイゼイと。


息を切らしながら逃げていた。


やっと、抜けた。

開けた草原に見つけた。


多くの兵士達。


あぁ・・・。

私の口元が綻んだ。


そう。

ようやく。


休むことができる。


もう。

逃げなくても。


いい。

の、だから・・・。

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