第44話「漆黒の鎧、現れる」

カヨと広瀬が元の世界に戻るための扉をくぐろうとした瞬間、突然、暗闇の中から強烈な力が二人を引き戻すように襲いかかってきた。そこに現れたのは、異世界の境界を守るかのように立ちはだかる、漆黒の鎧を纏ったモンスターだった。その巨大な姿は、これまでの敵とは比べ物にならないほどの威圧感を放っていた。


「こんな時に…!?」


カヨが驚きの声を上げ、広瀬も警戒を強めた。漆黒の鎧は、二人が元の世界に戻ることを阻止するために現れた最後の試練とも言える存在だった。


「私たちを帰さないつもりなのね…でも、ここで諦めるわけにはいかない!」


カヨが聖なる剣を構え、広瀬もすぐに戦闘態勢に入った。しかし、漆黒の鎧は彼女たちの攻撃を容易く跳ね返し、その巨大な手で反撃を仕掛けてきた。二人は瞬時に後退し、敵の力に圧倒されそうになる。


「この力…簡単にはいかないわね。でも、私たちは負けない!」


カヨは広瀬と共に再び立ち向かおうとしたが、その時、漆黒の鎧が低い声で囁いた。


「この先には、お前たちの望むものは何もない。ここで諦めるのが賢明だ」


その言葉に、カヨたちは一瞬動揺するが、すぐに気を取り直した。


「私たちの望みは、元の世界に帰ること。それを阻む者は倒すだけよ!」


カヨが力強く言い放ち、広瀬もそれに続いた。


「カヨさん、私たちならこの敵も必ず倒せます。一緒に戦いましょう!」


しかし、漆黒の鎧の力は絶大で、二人の攻撃はほとんど効果がなかった。彼女たちは何度も攻撃を仕掛けたが、敵の防御は鉄壁で、その動きも予測できないほど速かった。


「このままじゃ…!」


広瀬が焦りを感じ始めたその時、カヨは冷静に考え始めた。この敵を倒すためには、ただ力で押し通すだけでは勝てないことを悟ったのだ。


「広瀬、この敵には何か弱点があるはず。それを見つけ出して、そこを集中攻撃するのよ!」


カヨの言葉に、広瀬は頷き、二人で敵の動きを観察し始めた。漆黒の鎧は確かに強力だったが、動きには一定のパターンがあることに気づいた。


「もしかして…この鎧の継ぎ目が弱点かもしれない!」


広瀬が見つけたそのヒントに基づき、カヨたちは攻撃の戦術を変えた。継ぎ目を狙った攻撃を繰り出し、少しずつ敵の防御を崩していく。


しかし、漆黒の鎧もまた次第にその攻撃を予測し、反撃を強めてきた。戦いは熾烈を極め、どちらが優位に立つかはまだわからない状況だった。


「私たちはここで負けるわけにはいかない…!」


カヨが再び力強く叫び、広瀬もその言葉に勇気を奮い立たせた。二人は最後の力を振り絞り、漆黒の鎧に立ち向かい続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る