第42話「帰還の儀式、最後の試練」
カヨたちはシャドウドラゴンを倒し、ついに帰還のための儀式を始める準備が整った。しかし、その前に立ちはだかるのは、彼らがこれまでに出会った中で最も厳しい試練だった。クリスタルが放つ光は、神殿の中心を照らし、周囲に神秘的な力場を作り出していた。
カヨと広瀬は、クリスタルの前に立ち、儀式を開始するために力を集中させた。儀式が始まると、クリスタルが輝きを増し、その光がカヨと広瀬を包み込んだ。だが、光の中から現れたのは、二人の心の中に潜む「影」だった。
「これは…私たち自身…?」
カヨが驚愕の表情で言うと、広瀬も同様に衝撃を受けていた。彼女たちの前に立つ影は、彼女たち自身の心の弱さや不安を具現化した存在だった。
「これが最後の試練なんですね…自分自身と向き合うことが…」
広瀬が敬意を込めて言葉を紡ぐと、カヨは頷きながらも決意を固めた。
「そうよ、広瀬。この影を乗り越えなければ、私たちは元の世界に戻ることができないの」
影たちは、カヨと広瀬に向かって静かに歩み寄り、その目には冷たく光る意志が宿っていた。彼女たちは、自分自身と向き合い、心の中にある弱さや恐怖を克服する必要があった。
広瀬の影が静かに語りかけた。
「広瀬、あなたはカヨに依存しすぎているわ。あなた自身の強さを見つけなければ、彼女と共に帰ることはできない」
広瀬はその言葉に動揺しつつも、自分の心に問いかけた。
「私は…確かにカヨさんに頼りすぎているのかもしれません。でも、それは彼女を信頼しているからであり、私も彼女のために強くなりたいんです」
広瀬は自身の剣を握りしめ、影に向かって叫んだ。
「私はもう迷いません!カヨさんと共に、元の世界に戻るために、私も戦います!」
その瞬間、広瀬の影は微笑みながら消えていき、広瀬は自分自身の強さを取り戻した。
一方、カヨの影も彼女に囁いた。
「カヨ、あなたは本当にこの冒険を終わらせたいの?ここでの力と仲間たちを捨てて、元の世界に戻る覚悟があるの?」
カヨは影の言葉に少し戸惑いながらも、自分の心に問いかけた。ここで得た力や仲間との絆は、彼女にとってかけがえのないものであり、手放すことへの不安があった。
しかし、カヨはその不安を振り払い、強い意志で影に立ち向かった。
「私は、この世界で得たものを大切に思っています。でも、私の本当の居場所は元の世界にある。だから、私は帰るわ。そして、私たちの絆は、どんな世界でも消えないと信じている!」
カヨの言葉に、彼女の影もまた微笑みながら消え去った。二人は試練を乗り越え、儀式が成功することを確信した。
クリスタルが再び光を放ち、神殿全体が輝きに包まれた。カヨと広瀬は、元の世界への扉が開かれたことを感じ取った。
「これで私たちは帰れる…!」
広瀬が喜びの声を上げると、カヨも微笑んで彼女に頷いた。
「そうね、広瀬。でも、ここでの経験を忘れずに、元の世界でも私たちは強く生きていくわ」
カヨたちは仲間たちに感謝を伝えながら、元の世界に戻る準備を始めた。彼女たちの冒険は終わりに近づいていたが、その道のりは決して平坦ではなく、最後の一歩まで彼女たちを試すものだった。
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