空島世界でハーレムを作る

volans

一章

一話

第1話

前書き

 誤字脱字や、文の質が酷いです。一作品通してあります。

 ご了承下さい。



 ルビー、サファイア、エメラルド……

 金銀財宝に彩られたパーティー会場は、世界のバグとも呼ばれる浮島で行われている。

 六角形の浮島は六つの三角形ごとに地区が分かれ、ここはその一番東にある三角形の地区、浮島三区の湖の上。

 三区の一部の堤防は壊されており、地区全体の半分を占める湖の端の水が、滝のように落ちている状態。

 湖で行われる公演やショーを目当てに殺到する観光客の中でも、特に富裕層が、この船内のパーティーに出ることが出来る。

 和風は別の地区に全部任せてひたすらにアラビアンな豪華を求めた船内は、外国人に特に人気なようだ。

 世に二つしか無い浮島では、年中ずっと、金と観光客が行き交うからか、こうして時々生まれるのが……

 浮島の、人ならざるもの。

 濁点の付いた声と斑点の付いた見た目が特徴的で、猫背、爪が大きく長く、背丈は猫背を伸ばすと二メートルを優に超える。

 裂けたような口に、黒い包帯が巻かれたかのような体。

 目なんて可愛らしいものは無い。眼窩だけだったり、その部分だけくり抜いたかのように割れていたり。

 知能は高く、特殊な性質がある。暗い場所を好み、電気、火を消し、そして……一定のダメージで消失する。

 過ぎ去った嵐は黒い靄となって剥がれ落ちる。まるでフィルターでぼかしたように薄く、消えていく。

 逆に、発生条件は……

 一つ、人が多く集まる事。二つ、負の感情が募ること。

 そして三つ。

 誰かが、式典を起こすこと。

「――」




 忌めば

 狂えど

 呪い

 叫ぶ


 対の詠唱


 蛇の道は蛇

 悪の対は悪


 式典を執る




 ――

 優雅なペアダンス、八十組近くのペアが、曲に合わせて踊る。

 クラシックが流れる中、大広間の片側によったテーブル、椅子の付近で、黒の虹が架かる。

 金色の船内は工事の労力以上の装飾品で過剰に飾られ、あんなにきらびやかな見た目だったのに、たった一瞬で、それらの全てが陰る。

 照明が落ちる、段々と深淵に沈むように、全てが黒く、暗く。

 それでもダンスを続けようとした人もいる。

 だが、一人が動かなくなれば、また一人、また一人と動かなくなっていく。

 全員の動きが止まった。

 最初に、電気。次に、火、そして最後に、人間や動物。

 人間を害するものは、人間の基準で悪である。

 そして向こうは三十人間を悪としている。

 悪に対抗するには、勿論――

 悪。

 このときばかりは、罪で罪を洗い流す聖戦になる。

「――よぉ」

 テーブルの上で、ケーキを皿を踏み潰し、そこに立っていた異形の前で、啖呵を切る。

「ここに産まれ堕ちた、それが罪だ」

 罪人を裁くのは、改造により完全防音を施した銃、マキシマム。

 オリジナルモデルと言っても差し支えない。とにかく消音性を限界まで高めた銃。

 黒影を撃ち抜くと、黒い飛沫が上がる。

 墨汁が跳ねた様に、流れず、そのまま床や壁に撒き散らして、テーブルから黒は転げ落ちた。

 放っておくと、人間を削いで、削いで、眼窩を集めたり、死骸の骨を組み合わせた何かを作っていたり、とにかく気味の悪い生き物。

 その四肢を撃てど潰せど、這って這って、傷を治して、またやってくる。

 だから今ここで。

「――」

 撃てば、撃てば。

 ダメージの回復が間に合わず、壊してしまえば、そいつは再生が止まり、動きが止まり、散る。

 薄っぺらい正義を前に、目前の怪異は撃ち抜かれ、気化のように、靄となって、その場に小さく広がった。

 四散した四肢は、徐々に靄になって、音も上げずに、闇に漆黒を上塗りしている。

 黒より黒いブラックホールの様な存在は、電気が復旧すると、すぐに目立った。

 その場凌ぎで隠れたテーブルの下から覗き見ると、警備員と思われる、場に似合わないラフな靴を履いた人が、一斉に駆け込んでいた。

 全くだ……

 トランシーバーに向かって一言。

「ちょっと、何やってんすか」

 不満を漏らした。

「いやぁ、暗視ゴーグルを忘れたんだよ。で、出来る限り急いで復旧したんだけど」

「危うく、一般人に俺の姿が見られるところでしたよ」

 特別対策部……レティーの制服は公になると面倒なものだ。

 仮にも二流以上の極秘部隊、たった数百人の繋がりだが、トップ層は特にバレちゃいけない。

 まず、組織の管轄は政府と別の軸。フレイリン政府は日本政府と連盟を組んでいるものの、ウチはどこにも属さないから、最悪の場合、協力体制が断ち切られる。

 レティーはそれぞれの政府と交流し、独立したものとして、異形の黒の対応にあたっているが、勿論バレれば逆に政府が敵になる。

 今回の船内の人は貴族ばかりで、接触をするべきではない。

「警備員に伝えといて下さいね、テーブルの下は探すなって」

「わかったよ、了解」

 融通が利くのは、政府、公的機関のみ。空島に来た観光客や住んでる住民は外側の人間なので通用しない。

 だから、公的機関の警備員、警察や軍とは連絡が取れるのだ。

 その連絡に通話相手が回って……

 結局パーティーはお開きになり、小一時間近くが経過した。

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