B熱帯

雀100

シュークリーム

コンビニスイーツに、特に用事はなかった。というか、つい最近までスイーツコーナーがあることすら知らなかった。アイスコーナーの横にある白い棚は冷蔵の何かしらの商品だろうなと予想はしていたが、それがスイーツだなんて思いもしなかった。だが、スイーツが置いてあることを知ったとき、確かにスイーツくらいしかあのスペースには置けないなと勝手に納得した。


一昨日の帰り道、コンビニに入ったときにそのことを知り、シュークリームを買った。あまり甘いものは食べない方だが、たまには食べてみるかと選んだ。家の方面の電車は本数が少なく10分くらいは待たされるのがお決まりになっているので、ホームで何か食べて時間を潰そうとシュークリームを買った。悠長にエスカレーターに乗ってホームに出たら、なぜかもう電車が来ていた。普通にリュックにしまえばよかったのに、パニックのあまり口に放り込んで電車に飛び乗った。すぐにドアが閉まり、電車は動き出した。吊り革に捕まり、いっぱいになった口を動かしながら、ゆっくりと絶望していった。もっと時間をかけて味わいたかったのに。せっかくカスタード入りの2種類が楽しめる方にしたのに。


今日の午前中、泣いて体力を浪費した。外に出ると余計また疲れるのはわかっているがそれでも家に留まる気にもなれず、とりあえず自転車を走らせた。そういえば何も食べてなかったので、近くにあるけどタイミングがなくて入ったことがなかったカフェに入ってみることにした。自転車を止めて扉を開けると、奥に静かな空間が広がっていた。周辺の建物からは想像できないような内装で、街中に溶け込んでいる隠れ家のようだった。壁際の席に通してもらい、水を飲んだ。冷たい感触が喉を通過し、店内に氷の音だけが響いた。とても心地よい雰囲気が漂っていた。メニューを手に取って開いた。ページをめくる。どれも美味しそうだ。さらにめくる。冊子の終わりの方にデザートの欄があった。パフェ、フルーツポンチ、タルト…名前を眺めているだけで心が躍る。そのまま右に目線をやると、そこにシュークリームと書かれていた。これだ。


定食を平らげて、店を後にした。シュークリームは店内で食べても良かったのだが、取っておきたいような気持ちになって持ち帰りにしてもらった。それを冷やすためだけに一度家に戻り、再び自転車を走らせた。

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