等価転生~なんでも生贄でクラフト~

AKISIRO

第1話 クラフト

 眠るように死ぬだったらどれだけ幸せだっただろうか。

 上沢は車に盛大に弾き飛ばされて、ピンボールのごとく建物に激突して、さらに転がりながらまた跳ねられるというパニックになりながら死んだ。


 走馬灯の中で色々な事を考える暇すらなかった。

 あれだ。走馬灯は1秒で終わったので何がなんだか分からない。

 とりあえずスーパーで買ったバナナを握りしめて死んでいたのだろう。

 どことも知れない荒野の果てなき場所でバナナを握りしめて転生していました。


「まぁ、取り合えず、転生したらしいが、神様も現れなかったし、スキル付与何やらも無かったぞ、これどうすればいいんだ」


 現在、上沢は荒野の赤茶色の大地に仁王立ちしながらバナナを握りしめている。


「このバナナをどうすればいいんだ?」


 とりあえずバナナを地面に置いてみた。


【等価交換を受理します。一覧から選択してください】


「お、等価交換?」


 だが、謎の声は何もお告げをくれなかったので、ゲームみたいな画面に表示された一覧を眺めていた。無数に等価交換できる一覧が書かれてある訳だが。

 どれもろくなものがない、肉とか野菜とか、これどうすればいいんだ?


 まず、ここがどこなのかも理解できていない。

 もしかしたら転生じゃなくてテレポートしただけかもしれない。

 いや死にまくったし何とも言えない。


 体の造りも変わってしまっている。

 ぽっちゃりだったのに痩せ型になっているし、何より顔の形がなんか違う。

 転移ではなく転生なのだろうけど、問題が一杯あって困ってしまう。


「とりあえずバナナの畑をっと」


 なぜか等価交換にバナナの畑があったのでそれを選択してみた。


【バナナの畑を受理しました。どこに設置しますか】


 とりあえず、目の前の赤茶色の砂地に設置してみた。

 するとバナナの木が1本だけ生えた畑が出来たのが、これって畑なのか?

 後、バナナが実っていないので、今自分はとてつもなくもったいない事をしてしまった気がしていた。


 周りに水がないので、最悪このバナナの木は枯れるかもしれない。

 いやまて、石ころが無数にあるので、触ってみた。そして地面に置いてみた。


【石ころの等価交換を受理しました。一覧から選択してください】


「えーと」


 石ころを等価交換すると、選択肢はバナナの時より狭まった。

 干し肉だけになってしまった。

 なので石ころを10個集めて、干し肉10個にしてみた。

 かじりつくと塩気があって微妙に旨い。

 これで食事の問題は解決だ。

 石ころを等価交換すれば干し肉になるので何とか生きていける。


 次にそこらへんにいた。虫を掴んで置いてみた。


【アリドロスの等価交換を受理しました】


 ちなみに、この蟻見たいな虫をアリドロスと言うらしい。

 ふむ、鑑定がなくても勝手に教えてくれる謎の声には感謝だ。


 一覧を見ると、水しかない。

 アリドロスを等価交換すると水が取れる。しかもコップ付きだ。

 アリドロスを乱獲して、水を大量に補給、自分で飲む分と、バナナの畑に少量与えてあげる事にした。


 少量与えるだけで、瞬く間にバナナの実が実った。

 バナナの木にタックルをかますが、びくともしないので、どうやら力が足りないらしい。


 デカイ岩があったので、まさかなーと思いつつ触って少しずらしてみた。


【巨岩の等価交換を受理しました】


 次に一覧に現れたのは【家】と【サンドバック】と【ベッド】だった。


 とりあえず、家を選択して、出現させると、岩のような家が現れた。

 周りから見たら岩のようにしか見えないのがとてもいいかもしれない。

 中は閑散としていて、何も無かった。

 ちなみに巨岩はいっぱいあちこちに落ちているので、サンドバックとベッドも等価交換で入手した。


 なんかおっさんから転生して、今どんな年齢層の顔をしているか分からないけど、5分くらいで衣食住が何とかなりました。


 サンドバックをぶん殴ってみた。

 なんかイライラしていたので、ストレス解消にいいかもしれないと思って。

 サンドバックは岩の家のおかげで、吊るしても落下する事は無かった。


【レベルが上がりました】

 

 一発殴るとレベルが上がった。

 だが現在何レベルか分からないんですけど。

 もう一発殴れば良いのかと殴ってみたら。


【レベルが上がりました】


 またレベルが上がったのだが何のレベルが上がったのか現在何レベルなのか不明だ。

 どうやら等価交換のリストの画面みたいな奴にはレベルが表示されません。


 それから、5時間ほど、サンドバックを殴り続けていた。

 どこの部位でレベルが上がっているが不明な為、取り合えず殴る蹴るを繰り返す。


【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】


「だから何のレベルが上がって現在何レベルなんだよおおおおおお」


 どうやらこの異世界は甘くないようです。


「さてと、どうやら俺は強くなっているらしいから、バナナの木にでもタックルかましてくるか」


 岩の家から出るとバナナの木に向かってタックルをかます。

 バナナの木はしなるように倒れそうになり、バナナが樹の上から大量に落下してくる。


「やっぱり強くなってるんか、だがどれくらい強くなってるかわからねええええええ」


 とりあえずバナナを30個くらい獲得した。

 バナナがあれば結構良い代物に等価交換できる。

 肉にして焼いて食いたい、さすがに塩気のある干し肉ばかりだと体がもたない。

 だが肉を焼く道具がない。

 なので、肉は保留にしておいて、まぁろくなものはないがと思考をめぐらしていると。


「そ、そうか」

 

 バナナ30個同時に等価交換してみる事にした。

 すると【池】【モンスター牧場】【酒場】なるものが設置できる様だ。

 バナナすげーなと思いつつ。

 とりあえず、アリドロスを探して水を確保するのもあれなので、池を出現させる事に、もちろん岩の家の隣にだ。

 すると近くに池が出現した。

 池にはどうやら魚がいるようだ。

 しかも水が綺麗なので飲めるようだ。

 これでアリドロスを集める必要がなくなる。

 けどアリドロスを一杯集めて等価交換したらどうなるかは興味深い。

 この世界について何も知らないけど楽しめそう。


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