26話 闇の鼓動

 核心が破壊され、影の力が一時的に消え去ったかに見えた学校。しかし、勇人と亮太は学校内に残る微かな違和感に気付いていた。日常生活が戻ったかのように見えても、影の残滓が完全に消え去ったわけではない。闇はまだ静かに鼓動を続けているのだ。




 その日、勇人は授業中にふとした寒気を感じ、背後を振り返った。そこには、誰もいないはずの場所に一瞬だけ黒い影が浮かび上がり、すぐに消え去った。




「またか……」




 勇人は心の中で呟いた。影の存在がまだ身近に感じられることに、不安を抱きつつも警戒を強めた。




 昼休み、勇人は亮太にそのことを話した。亮太も同じように、日常の中に潜む影の気配を感じ取っていた。




「影が完全に消えたわけじゃない。まだ何かがこの学校で蠢いている気がする」




 亮太の言葉に、勇人は頷いた。二人は再び旧校舎へ足を運び、影の痕跡を探すことを決めた。






 旧校舎の中は、依然として薄暗く、冷たい空気が漂っていた。核心が破壊されたことで影の力は弱まったが、何か別の存在が眠っているような気配があった。




「ここに何かが残っている……」




 勇人は旧校舎の奥へと進みながら、目を凝らして周囲を見渡した。亮太もまた、その場の異様な雰囲気に警戒心を強めていた。




「影がまだ完全に消えていないなら、何か別のものが目覚めようとしているのかもしれない。俺たちが核心を破壊したことで、影の本当の姿が現れ始めている可能性もある」




 亮太の言葉に、勇人は不安を感じた。しかし、今はそれを確かめるしかないという決意を固めた。




「俺たちはここで何が起こっているのか、全てを知る必要がある」






 二人が旧校舎の奥へと進む中、再び冷たい風が吹き抜け、薄暗い廊下に低い囁き声が響き渡った。




「お前たち……ここに来るべきではない……」




 その声はどこからともなく聞こえてきた。勇人と亮太は立ち止まり、互いに顔を見合わせた。




「誰だ? 出てこい!」




 勇人は声を上げたが、返答はない。代わりに、再び囁き声が聞こえた。




「影はまだ……生きている……お前たちは……何も理解していない……」




 その声には冷たさと同時に、どこか悲しげな響きがあった。勇人はその言葉に耳を傾けながら、影が彼らに何を伝えようとしているのかを考えた。




「理解していない……?」




 勇人は声の意図を理解しようとしたが、次第にその囁き声は遠ざかり、消え去ってしまった。




「影が何を伝えたかったのか……」




 亮太もその言葉に疑問を抱いていた。彼らはまだ影の真の目的やその存在の本質を理解していないことを痛感した。






 その夜、勇人は自宅に帰る途中、道端で見覚えのない少女と出会った。彼女は薄暗い街灯の下に佇んでおり、どこか不安げな表情を浮かべていた。




「君、大丈夫か?」




 勇人が声をかけると、少女は驚いたように顔を上げた。彼女は小さく頷きながらも、何かを言おうと躊躇している様子だった。




「私は……影のことを知っているの」




 その言葉に、勇人は驚愕した。彼女が影の存在について知っているということは、単なる偶然ではない。




「どうして影のことを知っているんだ?」




 勇人が問いかけると、少女は静かに答えた。




「私も……影に囚われていたの。でも、あなたたちが核心を破壊したことで、少しだけ自由になれた。でも、影はまだ……完全には消えていない」




 彼女の言葉には切実さがあり、その目には深い悲しみが宿っていた。




「私を助けて……影から完全に逃れるために」




 勇人は少女の言葉を聞いて、彼女もまた影に深く関わっていることを理解した。そして彼女を助けるために、さらなる決意を固めた。






 勇人は亮太と共に、再び影の存在を追い求める決意をした。新たに出会った少女の言葉から、影がまだ完全に消滅していないことを確信した。




「俺たちが影と完全に決着をつけなければ、まだ多くの人が影に囚われ続けるかもしれない」




 勇人の言葉に、亮太は静かに頷いた。




「そのためには、もっと影の本質に迫る必要がある。俺たちが核心を破壊したことで、何かが変わり始めているはずだ」




 二人は影との最終決戦に向け、再び行動を開始する準備を整えた。影の囁きと、新たな少女との出会いが彼らに新たな道筋を示していた。

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